百物語 十三回目「待合室」
僕は気がつくと、その薄暗い部屋にいた。その部屋に湛えられた闇の濃さ、そして空気の重さはそこが地下であるかのように思わせる。湿った空気、音の無い沈黙、身体を蝕むような冷気。そうしたものは、ひとつの予兆を指し示しているようだ。僕は、少しづつ目がなれてきたため、あたりを見回す。僕以外にも、何人ものひとがいた。思ったよりも長いベンチである。そこにずらりとひとびとが腰掛けて並んでいた。僕の両側と、向かい側にもベンチがありそこにも同じようにひとびとが並んでいる。そのひとたちはまるで、影でつくられたかのように闇に包まれており、気配を感じさせず石のような沈黙に沈んでいた。低い天井に吊るされた、赤いランプが小さ…
2019/01/31 23:31