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2018/12/31

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  • バイステポッドキャストまとめ/お問い合わせフォーム

    " data-en-clipboard="true">これまでのバイオステーションポッドキャストをまとめました!随時更新予定です! " data-en-clipboard="true">Spotify, Google podcast, iTunesなど各種配信プラットフォームでも聞くことができます。 " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true">ゲスト/ホストで出演希望の方がいらっしゃいましたらご連絡ください!(自推も歓迎) " data-en-clipboard="true"> (bio.stations.ronbun[あっと]…

  • バイステではポッドキャストを開始します!

    バイオステーションでは新しい試みとしてポッドキャストを始めます! バイオステーションではブログやツイッターで論文紹介を行っており、おかげさまで多くの人に読んでいただいているようです。ありがとうございます! 一方で、この方法では論文を読むだけでは分からない論文までのプロセスや論文を書いた人の思いをくみ取ることができないという歯がゆさを感じていました。 そんな中で、神経科学の分野でポスドクや若手PIにインタビューを行っているNeuroRadioというポッドキャスト(すごく面白いです!)を拝聴し、バイオステーションでも同じようにポッドキャストをやってみようと思い至りました。 バイオステーションポッド…

  • 正確な翻訳が寿命を延ばす?

    正常なタンパク質を作ることは個体の生存に重要であると考えられているが、タンパク質翻訳のエラーが寿命に与える影響については分かっていないことも多い。 というわけで今回タンパク質翻訳の正確性と寿命の関係に迫った論文を紹介する。 Open Acessなので論文から図をたくさん拝借しております。 --- これまでの論文で、タンパク質翻訳を担うリボソーム構成因子の中で翻訳の反応にはRPS23というのが特に重要なのではないかと報告されてきた。 そこでまず筆者らはRPS23のアミノ酸配列の違いをあらゆる生物種で比較した。 すると一部の(超)好熱古細菌では、他の種ではリジンである60番目の残基がアルギニンであ…

  • 2021年生命科学研究まとめ&2022年展望

    今回は大みそかということで、管理人の独断と偏見による2021年生命科学研究のまとめと2022年の展望を紹介していこうと思います。 学生の漫談みたいな感じなのであしからず。昨年の2020年まとめ&2021年展望はこちら。 全体のまとめ、神経幹細胞研究、今年面白かった論文という感じの流れです。最後にバイオステーションの来年の目標とお願いがあります。 全体 相変わらずコロナの論文は多いが事情が事情なので納得。正直全然フォローできていないが、、、 興味深い感じがしたのは相分離の論文がトップジャーナルでは激減したこと。研究を始めて流行ができてしぼんでいく様子が見れた。 来年熱くなる分野、、どうでしょうね…

  • 2021年 ノーベル医学生理学賞;温度と圧力のセンサー分子の発見

    2021年のノーベル医学生理学賞は「温度や圧力を生物はどのように感知するか?」という謎に取り組んだデビッド・ジュリアス氏とアーデム・パタプティアン氏に授与されます。 David JuliusさんとArdem Patapoutianさん Biostationでは、受賞対象となった研究についてまとめてみようと思います。内容はおおむねノーベル財団の公式発表に基づいております。--- 暑さや寒さ、私たちを取り巻くものの形など、周りの物理的環境を私達がどのように感知しているかという疑問は、長い間人類を魅了してきました。 1900年代前半には温度や圧力が特定の神経を活性化することがすでに明らかになっていま…

  • 植物の水分センサー

    水は生命にとって必須であるが、多くの生物は水が欠乏した状態にも耐えうる方法を獲得している。 その中でも植物の種子は数年から数千年の間、乾燥した条件の中でも生存し続けることができる。 種子は水を吸収すると細胞活動を再開し発芽する。この適切な水の感知による発芽のコントロールが苗の生存には重要である。 しかし、どのような分子がどのようにして水を感知しているのかは明らかではなかった。 そこで今回紹介する論文では、種子が水を感知するタンパク質を同定し、その物理的特性に迫った。 --- 筆者らは始めに、公開されているシロイヌナズナのトランスクリプトミクスデータを再解析し、他の組織に比べて乾燥した種子で高く…

  • DNAメチル化が遺伝子発現を抑えるメカニズム@植物

    DNAメチル化は、遺伝子やトランスポゾンの転写抑制に関連している有名なDNA修飾であるが、DNAメチル化がどうして転写を抑制できるのかは不明な点も多い。 哺乳類はいくつかのメチルCpG結合ドメイン(MBD)タンパク質を持ち、これらのタンパク質はメチル化されたCGジヌクレオチドを認識することでクロマチンに結合する。一般的なモデルでは、メチル化されたDNAにMBDがヒストン脱アセチル化酵素複合体をリクルートすることでクロマチンを凝集させ、遺伝子発現が抑制される。 しかしながら、植物ではメチル化DNAを認識して遺伝子発現を抑制するリーダータンパク質は不明であった。 そこで今回、植物におけるメチル化D…

  • ウィーン滞在記(2)

    管理人が2021年4月から3か月ほどオーストリアのウィーンに短期滞在しておりましたので、前回に続きましてウィーン滞在記(2)となります。 今回は研究のことについてご紹介していこうと思います。 --- まず滞在している研究所なのですが、IMP(Institute for molecular pathology)というところで下の地図の右下の丸のところにあります。(中心の赤枠が町の中心地で、ここから自転車で20分くらいのところにあります) このあたりはVienna Biocenterといって4つの研究機関(IMP, IMBA, GMI, MAX PERUTZ)が建物をつなげて一つのセンターのように…

  • ウィーン滞在記(1)

    今回は論文紹介ではなく管理人の雑記になります。 管理人が2021年4月から3か月ほどオーストリアのウィーンに短期滞在しておりますので、その様子などをお伝えすることで皆様のお役に立てればと思います。 今回は渡航までの経緯などをご紹介しようと思います。 --- なんとなくきっかけからですが、管理人は博士課程も終盤がみえてきて、そろそろ次のキャリアを考えなければならないという気持ちがありました。 海外でポスドクがなんとなくいいのかなぁと思っていたのですが、海外のPIにコンタクトとるにも海外学会もオンラインになってしまったしどうしよう、、となかなか困った状況でした。 そこでラボの皆さんの紹介などもあり…

  • DNAの傷が転写を活性化する?

    細胞の中でDNAはヒストンやその他たくさんの非ヒストン性クロマチン因子によってパッキングされている。 これらの因子によるゲノム構造の制御が、正常な遺伝子発現のコントロールには重要である。 この中でHMGA2という因子が胎生期の細胞やガン細胞などで高く発現し、結構重要らしいことが長年の研究で分かってきている。 しかしながら、HMGA2の働く分子メカニズムは(その重要性の割に)あまり統一的な見解が得られず、グループ毎に各々が言いたいことを主張しているような感じである。 筆者らのグループはこれまでにHMGA2がDNA損傷応答関連因子と相互作用することを報告していたが、具体的に転写制御まで行きつく分子…

  • 脊髄の再生を促進するグリア細胞の性質変化

    今回紹介する論文では、ゼブラフィッシュの系を用いてグリア細胞の上皮間葉転換(Epithelial-to-Mesenchymal Transition, EMT)が脊髄損傷後の再生に重要であることを見出した。 我々哺乳類とは異なりゼブラフィッシュは高い再生能を有し、脊髄が損傷しても6-8週で元通りにすることができる。 この再生を可能にするメカニズムを明らかにすることは、生物学的側面からも再生医療などの医学的側面からも重要である。 これまでに今回の筆者らのグループなどは、ゼブラフィッシュの脊髄再生には特殊なグリア細胞集団が損傷部位を架橋することが重要であることを報告してきた。 (哺乳類では中枢神経…

  • ゲノム中の塩基配列の偏りの意義?

    生物のゲノムはATGCの4つの塩基の組み合わせからなる。 このA, T, G, Cはゲノム中に均等に存在するわけではなく、ある一定の偏りを持って並んでいる。 では、この塩基の配列の分布の偏りは何か役割を持つのだろうか? これまでCG配列に結合する因子とその機能がいくつか報告されてきた。 このためCG配列が多いことには何らかの意味があることが示唆されてきたが、AT配列については比較的その意義は調べられてこなかった。 今回、ゲノム中のATが濃縮する配列を読み取り、細胞運命を制御する因子を同定した論文を紹介する。 筆者らはまず、ATが多いDNAに結合する因子を網羅的に探索した。 このために、マウスE…

  • 2020年生命科学研究まとめ&2021年展望

    今回は大みそかということで、管理人の独断と偏見による2020年生命科学研究のまとめと2021年の展望を紹介していこうと思います。 学生の漫談みたいな感じなのであしからず。昨年の2019年まとめ&2020年展望はこちら。 全体のまとめ、神経幹細胞研究、クロマチン研究という感じの流れです。最後にバイオステーションの来年の目標とお願いがあります。 全体 情勢を反映して新型コロナウイルス関連の論文はめちゃくちゃ多かったですね。本当に文字通り毎週三大誌に載っていた気がします。正直全然内容はフォローできていないのですが、喫緊の事態になると爆発的に研究が進むんだなと思いました。日本からの論文は少なかったよう…

  • 自閉症リスク因子が脳発生に与える影響を一網打尽に!

    私達の遺伝情報をコードするゲノムの変異は疾患に結び付くことが知られている。 特定の遺伝子が疾患に結び付くメカニズムとして、ノックアウトマウスを用いた研究などが盛んに行われてきた。 しかし、ノックアウトマウスの作成および解析は大変な労力が必要であり、多数の細胞種からなるヒトやマウスの体において、遺伝子の欠損がどの細胞に影響を与えるのかを調べるのは未だ簡単ではない。 そこで今回、シングルセルRNAseqとCRISPRを組み合わせた手法により、複数の自閉症リスク因子遺伝子が脳発生に与える影響を細胞種ごとに解析した論文を紹介する。 ----- 今回紹介する論文 自閉症は、対人関係の特異性やコミュニケー…

  • 相分離を駆動する"ヌクレオソームコア"の構造変化

    私たちのゲノム情報をのせたDNAは、細胞核の中でヒストンやその他の非ヒストン性タンパク質群と共にクロマチンを構成する。 クロマチンは一般に緩い構造を取ると遺伝子発現が活性化しやすく、凝集した構造を取ると遺伝子発現が抑制されやすい。 このようにクロマチンの凝集度の制御は、遺伝子発現の制御にとても重要である。 これまで、クロマチンの凝集を制御する代表的な因子としてHP1(Heterochromatin protein 1)という因子が知られてきた。 HP1は、抑制性のヒストン修飾であるH3K9のメチル化に結合するクロモドメインと、ダイマー化に重要なクロモシャドウドメインという二つのドメインを持つ因…

  • 真のオス化遺伝子の発見!?

    今回珍しく日本人の方の論文を紹介させていただきます。関係者の方(に限らず)間違いなどございましたらご指摘いただけると幸いです。 ---- 性別をきちんと決定することは種の生存及び進化に非常に重要である。 これまで哺乳類のオス化を決定する遺伝子としてY染色体上のSryという遺伝子が同定されてきた。 Sryはその発見以来、単一のエクソンからなる遺伝子だと考えられてきた。 今回、Sryにこれまで未知であった第2エクソンが存在し、オス化に重要であることを示した論文を紹介する。 ----- まず、筆者らはRNAシーケンスを行うことで、Sry遺伝子座近傍で発現しているRNAを解析した。 このとき、通常であ…

  • タンパク質ノックダウンで見えてきた新しい転写制御機構

    遺伝子の発現がいかに制御されるか、という疑問は生物学において最も根源的な問題の一つである。 多くの遺伝子はRNAポリメラーゼII(以下PolII)によって転写されるため、PolIIの制御機構を知ることが遺伝子発現制御メカニズムを知るうえで大きなカギとなる。 この重要性から、これまでにPolIIの活性を制御する因子が数多く報告されてきた。 この中でもNELF(negative elongation factor)という因子は1999年、東工大の山口先生、半田先生らによって、in vitroにおいてPolIIの転写を抑制する因子として細胞抽出液から同定された。 NELFは構造解析などからin vi…

  • 2020年ノーベル医学生理学賞;C型肝炎ウイルスの発見

    2020年のノーベル医学生理学賞は「C型肝炎ウイルスの発見」でHarvey J. Alter, Michael Houghton, Charles M. Riceの3氏に授与されます。 今回受賞する3氏 Biostationでは、受賞対象となった研究についてまとめてみようと思います。内容は概ねノーベル財団の公式発表に基づいております。科学未来館のページも参考にしました。管理人はウイルスの研究者ではないので念のため。 ---- 肝炎は主にウイルス感染によって引き起こされます(アルコール摂取や環境要因、自己免疫疾患によっても引き起こされます)。 1940年代には既に感染性の肝炎には2つのタイプがあ…

  • 再生に伴う遺伝子発現のダイナミックな変動

    再生能が限られている私達ヒトを含む高等脊椎動物と異なり、メキシコサンショウウオ(アホロートル、ウーパールーパー) は成体においても高い再生能を有し、器官レベルの再生を行うことが可能である。 再生の過程では一度分化した細胞が多分化能を獲得し、さらに元通りに再び分化するというダイナミックな分化能の変遷をたどる。 この厳密に制御された再生の分子メカニズムを明らかにすることは、分化能がいかにして規定されるかという生物学的側面からも、そして再生医療への応用など医学的側面からも極めて重要である。 しかしながら、再生芽はたくさんの細胞種を含むため、再生過程において特定の細胞系譜での遺伝子発現がどのように変化…

  • 細胞外タンパク質の品質管理

    タンパク質の異常な凝集などは、神経変性疾患をはじめとして種々の疾患の原因となりうることから、タンパク質の品質は生体内で保たれる必要がある。 これまで細胞内でタンパク質の品質管理を担う因子は数多く同定されてきたが、細胞外タンパク質の品質がどのように担保されているかはあまり分かっていなかった。 今回線虫の系を用いて、細胞外タンパク質の品質管理を行うメカニズムに迫った論文を紹介する。 今回紹介する論文 ------ 細胞外タンパク質の品質の異常の一つとして、タンパク質の凝集があげられる。 そこで筆者らはまず、細胞外タンパク質の凝集をモニターするような実験系を立ち上げた。 具体的には、細胞外に放出され…

  • 腸内細菌が宿主の行動を変化させる!?

    私達人間を含む動物は、腸内細菌をはじめとして多くの生き物と共生している。 これまで、腸内細菌が宿主の行動を変えうることを示唆することが報告されてきたものの、そのメカニズムはあまり分かっていなかった。 今回、ある種の腸内細菌が神経伝達物質を合成し神経に働きかけることで、その腸内細菌の利益となるように宿主の行動を変化させることを明らかにした論文を紹介する。 今回紹介する論文 --- はじめに筆者らは、線虫を用いて宿主の行動を変化させうる腸内細菌を探索した。 線虫はオクタノールなどの化学物質に対して忌避反応を示すことが知られている。つまりお皿の上で線虫を飼い、オクタノールをたらすとそこから逃げるよう…

  • 自己と非自己を分ける免疫のメカニズム

    はじめに 昨今、がん・アレルギー患者や新興感染症の感染者数は増加の一途をたどり、社会的にも免疫学への関心が高まっています。そもそも免疫は、「自分を攻撃せず」、外敵を攻撃するというシステムです。免疫が自己に対して攻撃しないことを免疫寛容といい、免疫寛容はわれわれが生まれた後に一人ひとりが自分でつくり上げています。しかしながら、この免疫寛容がどのように成立しているのか、よく分かっていません。 本研究は、「免疫寛容はどのように出来上がるのか」という問いを発端にすすめられました。 今回紹介する論文 免疫寛容の研究について歴史をひもとくと、1960年のノーベル生理学・医学賞の、ピーター・メダワー博士とマ…

  • 幹細胞のグランドキャニオン?

    DNAは折りたたまれて細胞核の中に収納されている。 DNAの折りたたまれ方にはいくつか種類があって、近いDNA同士がループ構造を作ったり、エンハンサー同士がぎゅっと集まったりする様式が知られている。 この折りたたまれ方の違いは遺伝子発現を制御するするのに重要である。 今回は、幹細胞においてDNAの折りたたまれ方を検証していると、不思議な折りたたみ様式を発見したよ、という論文を紹介する。 ----- 筆者らは造血幹細胞及びその分化細胞でのDNAの折りたたまれ方を検証するため、Hi-Cを行った。 Hi-CというのはDNAをクロスリンクしたのちにシーケンスすることでゲノムの近接した場所を知る手法であ…

  • 転写因子のヒストン自体への結合が細胞運命に重要?

    私たちの体は多様な細胞種によって構成され、それぞれの細胞に正しく分化するにはそれぞれの細胞群に必要な遺伝子セットが活性化される必要がある。 細胞分化に伴って特定の遺伝子セットを活性化するには、それまでクロマチンが閉じていた領域をオープンにしていく必要がある。 しかし普通の転写因子はクロマチンをオープンにできず、パイオニアファクターという特別な因子群のみがこの閉じたクロマチンをオープンにしていく活性を持つことが知られている。 --- 研究が進んでいるパイオニアファクターの一つにFOXA1という因子があり、初期発生に重要であることが知られている。 これまでFOXAとヌクレオソームを精製して試験管で…

  • バイオステーションはラインボットをリリースします!

    バイオステーションはこれまで主に本サイトとTwitterをメインに運営してきました。 この度さらに裾野を広げるため、ラインボットによる新着論文紹介をスタートさせます。 お友達になるにはこのリンクからお願いします→ばいおすてーしょんとお友達になる このラインボットでできること 〇管理人による論文紹介が届きます 〇過去のサイト記事の検索ができます。キーワードを打ってみて下さい。 このラインボットでできないこと ×このアカウントでコメントいただいても管理人には届きません。 ×いまのところツイートの検索機能はありません。 問題等ありましたら何らかの方法で管理人にご連絡いただけると幸いです。 再掲ですが…

  • 細胞老化に伴う細胞核状態の変化

    今回は細胞の老化とクロマチン状態の関係について迫った論文を紹介 細胞は無限に増殖し続けられるわけではなく、ある状況下において細胞増殖を停止させることが知られている。 この細胞増殖の停止は細胞老化と呼ばれ、SA-β-galの蓄積、細胞周期抑制因子p16やp21の活性化、SASP(Senescence-associated secretory phenotype)の誘導が共通してみられる。 この共通点を持ちながら、細胞老化には大きく以下の2種類に分類される。 1.原がん遺伝子による細胞老化 (OIS; Oncogene-induced senscence) 2.増殖回数が限界を迎えることによる細胞…

  • タンパク質なしにリポソーム内部に特定の物質が濃縮される現象の発見_筆頭著者による論文紹介

    今回は筆頭著者の論文紹介として、東京大学大学院総合文化研究科、豊田太郎研究室の杉山博紀(すぎやまひろのり)さんに記事をご寄稿いただきました!ぜひ最後までご覧ください! ---- 生命はどのようにして誕生したのか,生命科学に携わる人なら一度は考えたことのある疑問ではないでしょうか.生命の構成単位である細胞の中には様々な生理的な機能が実装されています.無数の生理的な機能一つ一つがあまりに精妙にできていて,いったいどうしたらそれらが一つのシステムとして統合されたものを自発的に組み上げられるのか,これは生物学の最大の謎の一つと言っても過言ではないでしょう. 複数のシステムの統合は差し当たって長い進化の…

  • ヒストン修飾と相互作用する新規タンパク質の網羅的同定

    正確な細胞運命の制御には、正確な遺伝子発現の制御が重要である。 厳密な遺伝子発現の制御のために、DNAを巻き付けるヒストンのメチル化やアセチル化といった化学修飾が大きな役割を果たすことが知られている。 これまでにヒストンの化学修飾(メチル化/アセチル化など)を触媒する酵素や、認識するタンパク質がいくつも同定されてきた。 しかしながら、細胞内で特定のヒストンの化学修飾と相互作用するタンパク質を網羅的に探索する方法は十分には整備されていない。 そこで今回人工的なヒストン修飾認識ペプチドとビオチン化酵素を組み合わせ、ヒストン修飾近接タンパク質を網羅的に解析した論文を紹介する。(短め) 今回紹介する論…

  • ヒトらしい脳ができる分子メカニズム

    今回はヒトらしい脳ができる分子メカニズムに迫った論文を解説。筆頭/責任著者の難波さんからコメントを頂いていますので、ぜひ最後までご覧下さい! 目次 管理人による論文解説 管理人コメント ★筆頭/責任著者の難波隆志さんからのコメント 管理人による論文解説 ヒトは進化の過程で体の大きさに比して大きな脳を獲得してきた。ヒトを特徴づける高次な思考や感情は、この大きな脳によって支えられていると考えられている。 では、ヒトはどのように大きな脳を獲得してきたのだろうか? 近年の研究により、進化の過程で大きな脳を獲得できた大きな原因の一つは、神経細胞を生みだす"神経幹細胞"の振る舞いにあることが分かってきつつ…

  • 脊椎動物の「休眠状態」の分子メカニズム

    いくつかの生物は過酷な環境を生き抜くために特殊な能力を身につけてきた。 例えばリスやクマは冬を越すために冬眠するし、マウスも絶食,寒冷,恒暗などの状況下では低体温,活動量の低下を伴う非活動状態(torpor)になる(1)。 このような特殊能力の一つとして、極限環境に置かれた際に発生を一時的に停止し、周りの環境が良くなるまで耐え忍ぶ「休眠」が挙げられる。 休眠状態のように発生時間を一時停止することができれば老化を防ぐことができる可能性があるため、そのメカニズムの解明は極めて重要である。 これまで休眠のメカニズムは線虫などのモデル生物で研究がなされているものの、脊椎動物では良いモデル生物がないため…

  • エラー;Saw ASCII character 10 but expected 33-based Phred qual.

    今回は管理人が困ったトラブルの解決法 ~seqのマッピングで困ったことが起きた。 fastqをトリミングする前はちゃんとマッピングされる(bowtie)のに、トリミングするとなんだか下のようななエラーが出てしまうというもの。。 Saw ASCII character 10 but expected 33-based Phred qual. ググってみるとちゃんとダウンロードできているか?とか書いてあるが、トリミング前は問題なく走るのでそこではないだろう。で、色々調べていると、 トリミングで0bpのリードが出てきてしまうのが原因らしい。 そういうわけで cutadaptのオプション、-mで1bp…

  • 発生時計の同調メカニズム

    ★今回は筆頭著者の吉岡さんからコメントを頂きました。ぜひ最後までご覧下さい!★ 何兆個もの細胞からなる私たちの体は、受精卵というたった一つの細胞から生まれる。この受精卵から体が出来上がる過程において、多くの現象があらかじめ決められたタイミングで自律的に進行していく。 この発生タイミングを決める発生時計が細胞内で正確に時を刻み、細胞間で厳密に同期することが、複雑で精密な個体の発生を可能にするために極めて重要である。 これまでに発生時計が個々の細胞内で時を刻むメカニズムについては数多くの研究からその一端が明らかになりつつある。しかしながら、発生過程において個々の細胞の発生時計がどのように他の細胞と…

  • 減数分裂のスイッチ因子「MEIOSIN」の発見

    ★今回は筆頭/責任著者の石黒先生からコメントを頂きました!ぜひ最後までご覧ください!★ 細胞の分裂は、同じDNA情報を複製した後に同じコピーを持つ娘細胞を作り出す体細胞分裂と、精子・卵子を作り出す際に染色体数を半減させる減数分裂に大別される。 減数分裂は体細胞と同様の細胞周期の機構を転用しながらも、減数分裂仕様の染色体構造が再構成されるようにプログラムされている。すなわち減数分裂は生殖細胞で行われ、二本の相同染色体において組み換えが行われたのち2回の分裂を経て染色体数が半分になる。(図1参照) 図1 減数分裂ではゲノムの混ぜ合わせが起きるため、減数分裂は生物の多様性を生み出す原動力になっている…

  • インプリント鎖が脳発生に重要!?(筆頭著者による論文紹介)

    インプリント鎖も機能している⁉ 母方鎖からだけ発現されているとされていたp57という遺伝子が、脳においてわずかながら父方鎖からも発現していることを発見。 さらに父方鎖のp57遺伝子座を欠失させると脳発生が異常になる。

  • 脳転移がんはエクソソームによって転移を容易にしている!?

    脳転移がんはエクソソームによって転移を容易にしている⁉という論文を解説。 今回なんと共筆頭著者の星野歩子先生からコメントいただいています!

  • 2019年生命科学研究まとめ&2020年展望

    管理人の独断と偏見による2019年生命科学研究のまとめと2020年の展望、そして今年バイオステーションでアクセス数の多かった記事を紹介!

  • tRNA断片が核の構造を変える!?

    RNAといえば、多くの方は翻訳されてタンパク質を生み出すメッセンジャーRNA(mRNA)を思いつくかもしれない。 しかし、細胞内に含まれるRNAのうちmRNAが占める割合はほんの数パーセントであり、大部分のRNAはタンパク質をコードしないノンコーディングRNAである。 ノンコーディングRNAの中でもトランスファーRNA(tRNA)は、古典的には、mRNAの配列に対応したアミノ酸を転移させてタンパク質を作り出すのに重要なRNAであることが知られる。 近年驚いたことに、tRNAは切断を受け、古典的なアミノ酸転移という機能とは全く別の機能を果たすことが報告されてきている。 以下の図のように、切断の受…

  • レトロウイルスの侵略により引き起こされたウイルス複製阻害遺伝子ファミリーの急速な進化(筆頭著者による論文紹介)

    今回は東大医科研、佐藤研究室の伊東さんから筆頭著者による論文紹介を頂きました。論文の中身はもちろん、研究室の紹介や研究の裏話、バイオステーション管理人とのQ&Aまで盛りだくさんの内容となっていますのでぜひ最後までご覧ください! --- レトロウイルスの侵略により引き起こされたウイルス複製阻害遺伝子ファミリーの急速な進化 伊東潤平、佐藤佳 (東京大学医科学研究所 システムウイルス学分野) 原著 Ito J., Gifford RJ., and Sato K. Retroviruses drive the rapid evolution of mammalian APOBEC3 genes. (2…

  • RNAスプライシングが遺伝子発現を制御する?

    正確な遺伝子発現がどのように実現されているか知ることは、生物学の一つのゴールである。 ご存知のように遺伝子はDNAから転写されてRNAスプライシングなどの制御を受けて成熟したRNAになる。 これまでに、転写がRNAのスプライシングに影響を与えることはしばしば報告されてきた。 (例えば、転写のスピードによってスプライシングの位置が変わってきたりするらしい) 一方逆に、スプライシングが転写にどのような影響を与えるかという点はほとんど分かっていなかった(以下の図)。 今回は、スプライシングにより近くの通常不活性状態の転写開始点からの遺伝子発現が上昇する、という新しい遺伝子発現制御メカニズムを明らかに…

  • タンパク質を保護する天然変性タンパク質群"Hero"の発見とその機能

    全長にわたって天然変性しているタンパク質群「HERO」を発見、その機能に迫った論文を解説!

  • 代謝とエピジェネをつなぐ新しいヒストン修飾「ラクチル化」の発見!

    遺伝子の発現がどのように制御されているか知ることは、現在の生命科学の一つのゴールである。 遺伝子発現には遺伝子自身のDNAは配列も重要だが、DNAをパッキングするヒストンの状態も重要であることが知られている。 古典的にはヒストンのアセチル化が活性化した遺伝子のマークになっていることから始まり、メチル化やユビキチン化など多様なヒストン修飾が見つかってきている。 一方、最近でもヒストンのセロトニン化やグルタリル化など新しい修飾も発見されるなど、すべてのヒストン修飾が同定されているわけではなく、生物学的に重要なヒストン修飾はまだ残っている可能性がある。 今回は、乳酸を基質とする新しいヒストン修飾「ラ…

  • 神経活動が寿命を決める!?

    私たち人を含め生き物は病気にならなくても、老いていき、ある程度の寿命で死んでしまう。 このどうして老いていくのか、何が寿命を決定するのか、というのは人類が長年探し求めてきた疑問の一つである。 ここ数十年で、生命科学の発展により老化や寿命を規定する多様なメカニズムが明らかになってきた。 例えば、代謝状態が寿命と関係あるというのは結構報告が多いし、DNA損傷応答が寿命と関係するというのは以前バイオステーションでも紹介した。(→生きる長さを決めるもの) これらに加え興味深いことに、寿命には"神経"が何らかの役割を持つ可能性が示唆されてきた。 例えば、神経で何らかの遺伝子が欠損すると寿命が変化してしま…

  • 2019年ノーベル医学生理学賞;細胞の酸素濃度検知システム

    2019年のノーベル医学生理学賞は「細胞がどのように酸素濃度を検知するか」という謎に取り組んだ一連の研究で、グレッグ・セメンザ、ピーター・ラトクリフ、ウィリアム・ケーリンの3氏に授与されます。 Biostationでは、受賞対象となった研究についてまとめてみようと思います。内容は概ねノーベル財団が公式発表している資料に基づいております。 ----- いうまでもなく、生き物にとって酸素は極めて重要である。酸素は1777年には命名され、1858年にはパスツールらによって酸素が生物の代謝状態に変化を与えることが報告されている。 ノーベル賞だけを見ても、1931年には酸素と代謝機構の研究でワールブルグ…

  • 核の中の相分離

    細胞の中で、DNAから適切な遺伝子が発現し機能することは、細胞運命を正確に制御するために極めて重要である。 これまでに遺伝子発現の制御には、多数のヒストン修飾をはじめとしたエピジェネティック因子が重要であることが示されてきた。 例えば下のイラストのように、ヒストンH3、27番目のアセチル化は遺伝子発現を多くの場合促進することが知られている。 ----- このようにヒストン修飾などのエピジェネティック因子が重要なことは教科書にものっているほど当たり前のことだと考えられている。 しかしながら、アセチル基のような極めて小さな因子がどうしてクロマチン状態を変え、遺伝子発現を変えることができるか、という…

  • ibiologyまとめ#1 David Sabatini_栄養センサーmTORの発見

    今回は新コーナーということで、iBiology(分野の大御所が自身の研究について紹介してくれるサイト)のまとめ。 初回はDavid Sabatini。写真のような方。作曲家か指揮者みたいですね。 iBiologyについてはこちら。 jugem.hatenadiary.jp ----- David Sabatiniは栄養センサーとして知られるmTORの同定で非常に有名である。 mTORは超有名分子なのでおなじみの方も多いだろう。ではこのmTORはどのように発見されたのだろうか? mTORはTarget of Rapamycin(ラパマイシンターゲット)の略。というわけで、まずはラパマイシンについ…

  • マクロファージの前座を務めますのは??

    生物はわずか一つの受精卵から細胞の分裂と分化を繰り返し、多数の細胞からなる個体を形成する。 この細胞をどんどん増やしていくという発生の過程において、一方でいくつかの細胞は細胞死していくということが知られている。 発生において、細胞が正しく死んでいくことは、個体全体の発生をうまく進めるために極めて重要である。 ----- この「プログラム細胞死」の中でも特に重要なものとして、神経管が閉鎖する時期における細胞死がある。 例えばアポトーシスができないマウス胎児は、不要になったモルフォゲン産生細胞を除去できず脳形成が異常になることが知られている(Nonomura et al., 2013)。 このとき…

  • 病原を「寛容」する分子メカニズム

    「腸チフスのマリー」として知られるメアリー・マローンをご存知だろうか。 メアリー・マローンは1869年~1938年に実在した人物で、アメリカにおいて住み込み料理人として働いていた。 彼女が有名になってしまった発端は、メアリーの勤め先の近辺で腸チフス患者が相次いだことである。 実際、彼女の周りで47名の感染者と3名の死者が出たことが知られている。 これだけだと、彼女が料理人の立場を悪用して、チフス菌を混入させた大悪人のようにも思える。 しかしながら、実際はそうではなかったようだ。 彼女は腸チフスを患いながらその症状が出ていない状態であった。 つまり自分が腸チフスと自覚しないまま料理を作り、チフス…

  • 発生イベント制御に関与するLin28a遺伝子の時期特異的な発現操作による表現型解析(筆頭著者による論文紹介)

    今回、筆頭著者による論文紹介第3弾(第1弾ペルオキシソーム、第2弾場所細胞)ということで、(元)東大薬、遺伝学教室の村松さんにご寄稿いただきました!管理人は研究内容はもちろん、大変だったことに書かれているゼロイチ実験(ネガデータの場合得られる情報が0になってしまう実験)の考え方も勉強になりました。ぜひ最後までご覧ください! ------ こんにちは。今回は、発生イベントのタイミング制御に関わると考えられている、Lin28aという遺伝子の機能解析に関する論文を報告しましたので、その内容をご紹介します。 Lin28はRNA結合タンパク質であり、標的mRNAに結合して翻訳を調節する作用を持っています…

  • ニューロンは特別ではない?_2

    前回の記事で、ショウジョウバエの気嚢原基はサイトニーム(下の図のもしゃもしゃしたやつ)という特殊な突起を持っていて、そこからシグナルを受け取ることを紹介してきた。 このサイトニームはなんだか特別な構造体のように思えるが、まあそうでもない。 ニューロンも同じようにアクソンやデンドライトといった突起を伸ばしてシグナルのやり取りをしている。 (wikipedia) 形からは確かに、ニューロンとサイトニームは似ていそうな感じがする。 今回、そのほか多くの点でサイトニームはシナプスと似ていることを明らかにした論文を紹介する。 これは、シナプスは特別な細胞ではないことを明らかにしたという点で面白く、また細…

  • ニューロンは特別ではない?_1

    ニューロンは長い突起を持ち、その先でシグナル分子をやり取りする。 ニューロンは意識など脳の主要な働きを担うとされることから、ニューロンは特別ですごい細胞だと思っている人もいるかもしれない。 今回は、全然そんなことない、ニューロンは特別ではないよ、という論文を2回にわたって紹介したい。 管理人がラボのジャーナルクラブで紹介した論文です。 ----- まずは現代発生学の基盤となった研究を紹介したい。 教科書でもおなじみのマンゴールドとシュペーマンの実験である。 この実験では、以下に示すように、イモリの胚の原口背唇部を移植すると二次胚を誘導することが示された。 この実験はまさに金字塔である。この実験…

  • 肥満が摂食のブレーキを外す!?

    肥満は全世界で5億人の人が困っているとされる。ただ太っているだけならまあ良いが、肥満は種々の疾患を引き起こすため、その原因の解明は重要である。 では、肥満はどうして起きてしまうのだろうか? 原因の一つは必要なエネルギーに対して過剰に食物を食べてしまう、摂食行動の破綻である。 これまで、摂食行動に重要である脳領域として、外側視床下野が知られてきた。 例えば、外側視床下野が破壊された動物は餌も水もとらなくなり,放置するとやがて死亡することが知られている。 また、この領域を電気的に刺激すると、満腹の動物でも摂食行動が開始されることが知られている。(参考) このことから、肥満になると外側視床下野に何ら…

  • 記憶が遺伝する!?

    生物学では、長い間、後天的に獲得した形質は次の世代には遺伝しないと考えられてきた。 ところが近年、この通説を覆すような事例が報告されつつある。 最も有名な例が、第二次世界大戦中のオランダ飢饉の例である。 第二次世界大戦中にナチスドイツの出入港禁止措置のため、オランダは飢饉に見舞われた。後に、このとき飢餓を経験した妊婦から生まれた子供の疫学調査が行われ、驚くべき結果が報告されている。 この結果では、飢餓の中で生まれた子供は生まれた時には低体重であったにもかかわらず、成人後は肥満となる率が高く、また糖尿病などの発症率も高いことが明らかになった。さらにこのときこの特性は孫の代にまで影響することもわか…

  • 「現在地」と「目的地」の情報は脳内でどのように処理されているか(筆頭著者による論文紹介)

    筆頭著者による論文紹介第2弾、東大薬の青木さんにご寄稿いただきました! メディア出演などでもおなじみの池谷裕二研究室に所属されています。 とても丁寧にご解説頂きましたので是非最後までご覧ください! ----- 初めまして。東大薬の青木と申します。私は現在、海馬に存在する場所細胞と呼ばれる神経細胞について研究を行っています。 このサイトでこれまで紹介されている分野からは少し離れる話題になってしまいますので、簡単に研究の背景を含めつつ、論文紹介をさせていただこうと思います。このような機会は初めてですので至らない点も多いかと思いますが、よろしくお願いいたします。 2014年のノーベル生理学・医学賞は…

  • ペルオキシソームの新しい機能を発見! (筆頭著者による論文紹介)

    今回、筆頭著者による論文紹介、ということで、東大薬の田中秀明さんにご寄稿いただきました! 比較的マイナーなオルガネラ、ペルオキシソームの新しい機能を発見したという報告です。とても丁寧に書いていただきました!ぜひ最後までご覧ください! ----- ペルオキシソームの新しい機能を発見!-ミトコンドリアの動態・細胞死経路の制御- 皆様、ペルオキシソームというオルガネラをご存じでしょうか? ペルオキシソームはほぼすべての細胞がもつ脂質一重膜で覆われたオルガネラであり、主に脂肪酸の酸化や活性酸素の除去といった細胞の代謝機能を担うことが知られています。 細胞内において、ペルオキシン遺伝子群によって形成され…

  • 神経前駆細胞の大移動@がん

    今回紹介する論文は、これまでの紹介してきた中でもトップクラスの衝撃度です。どうぞ最後まで。 がんは日本人の死因の何割かを占める。闘病は大変なので、治せるならば治したほうがいい。 ではそもそも、がんはどうしてできてしまうのだろうか。これまで、たくさんの人たちが、発症に関わる因子をたくさんみつけてきた。その中で、意外なことに神経線維ががんに重要らしいということが分かっている。 これらの研究によると、がんには神経線維が異常に侵入していて、がんの増殖を手助けしているらしい。 実際、いくつかのがんでは神経伝達を阻害すると、がんが小さくなったりすることが知らている。 しかしながら、この神経はどこからやって…

  • 哺乳類の繁栄を支える遺伝子

    哺乳類が地球で繁栄したキーポイントの一つは、寒冷環境でも体温を維持できるようになったことである。 この驚異的な特性を得るために、哺乳類は褐色脂肪細胞という特殊な脂肪細胞を獲得してきた。 褐色脂肪細胞は「脂肪細胞」のイメージとは裏腹に、脂肪を分解して熱を産生させることが知られる。これは、いわゆる皮下脂肪や内臓脂肪などの白色脂肪細胞が脂肪を蓄えるのとは極めて対照的である。(以下の図も参考に) 褐色脂肪細胞は交感神経などからの投射を受け、寒い状態などを感知すると熱を産生して体温の維持に働く。 また、熱を産生するという特徴から、肥満に対する介入のターゲットしても注目されている。 しかし、これほどの重要…

  • 精子のpHセンサー

    精子は卵子の近くに来ると、ハイパーアクティベーションを起こして卵子に突っ込む。 このハイパーアクティベーションには精子へのカルシウムイオンの急速な流入が必要であることが知れている。 これまで、このカルシウムイオンの流入を可能にするカルシウムチャネルとしてCatSperというのが知られていた(Nature, 2011)。 このハイパーアクティベーションは、ホルモンと精子の周りのpH変化、の二つによって活性が制御されるとされている。 これまで、CatSperがホルモンに応答する分子メカニズムは分かっていが、pHをどのように感知しているのかは不明であった。 今回このpHセンサーを同定したという論文を…

  • 細胞核構造のダイナミックな変化が学習に大事!

    神経細胞は、神経活動に合わせて遺伝子発現を変化させる必要がある、という点で少し特殊な細胞である。 この神経活動依存的な遺伝子発現の制御は学習や記憶といった高次機能にとても重要なので、これまで多くの研究者たちの興味を引いてきた。 これまで研究の結果、神経活動依存的な遺伝子発現制御のメカニズムとして、クロマチン状態の変化が大事であることが分かりつつある。 しかしながら、神経活動依存的なクロマチン状態の変化が、そもそも本当に生体で起きているのか?本当に遺伝子発現や脳の高次機能に大事なのか?ということは意外にもこれまで分かっていなかった。 今回、生体において起きるエピジェネティクス状態の変化を記述し、…

  • ATAC-seqの歴史

    遺伝子の発現がどのように制御されているか知ることは、生物学の根幹である。 これまでの古典的な研究で、遺伝子の発現はプロモーターやエンハンサーの活性で制御されることが分かってきた。 さらに最近、このプロモーターやエンハンサーのクロマチン(DNAとヒストンの複合体)状態の開き具合、が重要であることが分かりつつある。 上がモデル図。上のようなヘテロクロマチンといわれる領域ではクロマチンが閉じていて、遺伝子発現はオフになる傾向がある。 一方、下のようなユークロマチンではクロマチンが開いていて、発現はオンになっている傾向がある。 では、このクロマチンの開き方を調べる手法にはどのようなものがあるだろうか?…

  • ヒストンの持つ驚きの機能_2

    ヒストンの持つ驚きの機能_2 ヒストンは細胞核の中でDNAを巻き付けてパッキングするタンパク質として知られる(以下の図)。 また、ヒストンはメチル化などの修飾を受けることで、遺伝子の発現を制御する大事な役割があることが分かっている。 このためヒストン研究の多くは、パッキング因子、遺伝子発現制御因子、としての機能を中心にして進められてきた。 ところが最近になって、ヒストンにはこれらの機能だけではなく、意外に思えるような別の機能を持っていることが示されつつある。 例えば、ヒストンは銅を還元する活性があることを拙ブログでも以前紹介した。 ヒストンのもつ驚きの機能 - Bio-Station 今回さら…

  • 「筆頭著者による論文紹介」の募集

    Bio-stationは、最新の生命科学情報を広くお伝えすることを目指しています。 現在は管理人が選んだ論文を紹介しています。ただし、現状の問題として、管理人の理解できる論文に限られてしまう、管理人が実験したわけではないので論文以上のことは分からない、ことが挙げられます。 この問題を解決する最も良い方法は、筆頭著者の方自身に論文を紹介して頂くことです。例えばこれまで、新着論文レビューというサイトにおいて筆頭著者による論文紹介が行われてきました。しかし現在は、ご担当者様のご栄転に伴い、更新が停止されています。 そこで、この度、Bio-stationにおいて「筆頭著者による論文紹介」記事を募集した…

  • ChIA-PETの歴史

    今回はタイトル通りChIA-PETという手法の解説。 私たちのゲノムには"エンハンサー"という大事な領域がある。 "エンハンサー"はその名の通り、遺伝子発現をエンハンスする領域である。 面白いことに、このエンハンサーは - 転写を活性化する遺伝子の転写開始点付近だけでなく,かなり離れた領域にも存在する - 活性化された場合には,しばしばループを形成してプロモーターと物理的に近接関係になる ことが知られている。(実験医学Onlineより一部改変) 以下の図のような感じ。転写因子を含む複合体がプロモーターとエンハンサーを物理的に近づける。 遺伝子の発現がどのように制御されているか知るには、転写因子…

  • 論文の探し方!

    たまに論文の探し方を聞かれるので、まとめておきます。生命科学系の新しい論文を探す方法です。(*本当は自分用のメモです) 自分は英語が読むのがつらいので、できるだけ日本語で情報が得られるようにしています。一応ラボに配属された学部生~大学院生向けです。 早速紹介していきます。 ------ 日本語 日本語で情報の得られる嬉しいサイト。 - 論文ウォッチ 西川伸一先生(Wikipedia)による論文紹介サイト。1日1報紹介されている。古代人の話から遺伝子発現制御まで幅広いトピックが扱われる。解説もとても分かりやすく、Biostation管理人は毎日チェックしている。 - ネイチャーアジア Natur…

  • "エリート細胞"は存在するか?

    iPS細胞は多くの細胞に分化できる能力を持つすごい細胞である。 ご存知のように、iPS細胞を作成する方法は山中先生らによって報告された(Takahashi & Yamanaka, 2006)。 この方法では、山中4因子といわれる転写因子(Oct3/4, Sox2. Klf4, c-Myc)を細胞に過剰発現することで、分化細胞をiPS細胞にリプログラミングさせることができる。 この方法はもちろん非常に画期的であるが、山中4因子を導入してもすべての細胞がiPS細胞になるわけではない。 この現象を説明するために、大きく二つのモデルが考えられてきた。 つまり、 1. iPS細胞になる細胞は集団の中から…

  • 麻酔薬の作用する細胞は?

    麻酔薬は、生存状態を保ちながら知覚と随意運動能力を抑制する。 まさに魔法のような薬であり、外科手術には必須のものである。 人類史上、初めての全身麻酔による外科手術は1804年、日本人の医家、華岡青洲によって実現された。(以下肖像) 華岡青洲は朝鮮朝顔やトリカブトなどの薬草から全身麻酔薬「通仙散」を完成させる。 この過程においては、華岡青洲実の妻と母が実験台になり、妻は視覚を、そして母は命を失った。 今から見れば狂気ともとれるこの19世紀初めの発見は、それまで極めて小さなものでしかなかった外治医術に一大飛躍を遂げさせた。いわゆる「大手術」と称する外科の新領域を開拓したのである。 200年以上が経…

  • 生きる長さを決めるもの

    哺乳類の寿命は種によって200倍も異なっていることが知られている。 同じ地球に生きるものなのに、どうして寿命がこれほどまでに異なるのだろうか? とても魅力的な疑問であるにもかかわらず、種間で寿命の差を生み出す分子メカニズムはほとんど分かっていない。 そこで、今回の論文では、寿命とDNA修復応答の関係を探索した。 その結果、 - 二重鎖切断修復の能力と寿命に相関があること - 寿命の長い動物ではSirt6という因子に、二本鎖切断修復活性が高くなる変異が入っていること を見出した。 寿命が決まるメカニズムに迫った面白い論文です。 ↓今回の論文 ----- これまで寿命を決める要因として、DNA損傷…

  • エピジェネ因子の"じゃない方"の機能_DNAメチル化編

    エピジェネティクスとは「DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステム(脳科学辞典)」として知られる。 よく知られたエピジェネ修飾は、DNAを巻き付けているヒストンのメチル化やアセチル化などの修飾だろう。このほかにもDNAのメチル化、RNAの修飾もよく研究されている。 今回から2回にわたって(予定)、これらエピジェネ因子が、これまで考えられた以外の方法で機能しているかも、というのを紹介する。 今回は特にDNA修飾酵素について。 ----- DNAは特にシトシンがメチル化されることが知られている。(以下の図参照) このようにDNAにメチル化を入れる因子としてDNMT、DNAからメチ…

  • ニューロンの多様性を作るメカニズム

    私たちは常に外界からの情報を受け取り、処理し、行動に結びつけている。 ご存知のように、これらの情報処理を行うのに重要な器官は"脳"である。 脳の中でも神経細胞、ニューロンがとても重要であることが知られている。 人間には非常に多くのニューロンが存在するとされているが、 とても面白いことに、それぞれのニューロンはそれぞれ異なる特性を持ち、多様性があることが知られている。 多様なニューロンがぞれぞれのあるべき特性を獲得することは正常な脳機能に必須である。 このため、このニューロンの多様性が生み出されるメカニズムを知ること、は脳の機能に迫るうえで重要な問題であり、多くの研究者がこの問題に取り組んできた…

  • ノックアウトとノックダウンの表現型が違うのは?_2

    前回の記事で、ある遺伝子をノックアウトした時にその遺伝子に似た機能を持つ遺伝子の発現が上昇する"コンペンセーション"のメカニズムについてまとめた。 まとめると前回紹介したところまでで、 ノックアウトで似た遺伝子の発現が上がるのは ノックアウトによる変異型RNAが似た遺伝子の発現を制御するから、 という可能性が示唆された。 jugem.hatenadiary.jp ------- では、RNA分解からどのように遺伝子発現制御に結びつくのだろうか。 これまでいくつかのRNA分解酵素は、 エピジェネ因子と相互作用することが報告されてきた。 そこで、 筆者らはエピジェネ因子がコンペンセーションに関わる…

  • ノックアウトとノックダウンの表現型が違うのは?_1

    生物はある遺伝子が欠失した時でも、同じような機能を持つ遺伝子を発現させるメカニズム(Genetic compensation、以下"コンペンセーション")を持っている。 よくあるのは、ある遺伝子をノックアウトした際に、ファミリー遺伝子の発現が増加するもの。 (例えば、β-actionをノックアウトしたら似た機能を持つγ-actinの発現があがりますよ、みたいなやつ。例えばですよ。) これはある遺伝子の機能を調べようと思っても、似た遺伝子がその遺伝子の機能を補完してしまうため、非常に厄介である。 一方で、生体では一個の遺伝子が壊れても生きられるようにする優れたメカニズムとして使われている。 コン…

  • 赤外線が見える薬!?

    私たち人間は、多くの情報を視覚から得ている。 人間が感知することのできる光は 波長がおよそ400nm~700nmの間にある可視光のみである。 一方で、世界には可視光以外の波長の光にもあふれており、 もし「可視光」(波長400nm~700nm)以外の光を「みる」ことができれば、人間の認識能力を拡張することができる。 しかしながら、700nm以上の波長の光(赤外線)は光受容体を活性化できるだけのエネルギーをもたず、 赤外線は当然人間には「みる」ことのできないものとされてきた。 今回紹介する論文では驚くべきことに、 赤外線を感知することを可能にする特殊な微粒子を作成した。 さらにこれをマウスの目に打…

  • iBiologyがすごい

    今回は論文紹介ではなくて、 最近見つけた生命科学サイトを紹介したい。 それがこちら。 https://www.ibiology.org/ "iBiology"というサイト。 結構有名らしいが自分は最近知った。 ----- "無償で最先端の生命科学研究を世界中に広めること"を目標としたサイト。 生命科学系のトピックについて20分程度の動画が多数あがっている。 何がすごいかって、講演者がすさまじく豪華なことだ。 例えば、オプトジェネティクスの生みの親、Karl Deisserothが、 オプトジェネティクスの発見についてトークしたり、 https://www.ibiology.org/neuros…

  • スーパーエンハンサー小話_1

    生物学には"スーパーエンハンサー"という用語がある。 歴史はそれほど長くはない。 初めに"スーパーエンハンサー"と言い出したのはRichard Youngという大物である。 2013年に彼がのグループがCellにBack-to-backで出した2報の論文が "スーパーエンハンサー"のおこりである。 * 2報ともlast authorはRichard Young。これは結構すごい。 普通はBack-to-backで出すといえば、 1報ではインパクトに欠ける場合に異なるグループが協力して出すというのが多い。 1グループでBack-to-backするというのは本当にCell2報分ということ。 まあ、…

  • 柳に雪折れなし? 成体の神経幹細胞における転写後制御

    拙ブログでも何度か紹介しているように、 次世代シーケンサーの登場によって、多くの細胞種でRNAseqが行われ、 それらの細胞の遺伝子発現が網羅的に調べられてきている。 その勢いや猪のごとく(猪年だけに?)、 三大紙でもRNAseqを見ない週はない勢いである。 ところがRNAseqを進めるうちに、 最近、研究者たちは不思議なことに気が付き始めた。 いくつかの細胞種では、 その細胞では発現すべきではない遺伝子のmRNA発現がみられるのだ。 例えば、胎生期の神経幹細胞では、 発現するとニューロンに分化してしまうBrn2(ブレイン2)のmRNAが発現している。 これは、未分化な状態を維持しておきたい幹…

  • 「1細胞1受容体ルール」の分子メカニズム_2

    前回の記事で紹介したように、 嗅覚神経には「1細胞1受容体ルール」という面白い特徴がある。 これまで、「1細胞1受容体ルール」を可能にするメカニズムを探索する中で - OR遺伝子(嗅覚受容体遺伝子)は数多くのエンハンサーによって制御されること - OR遺伝子のプロモーターとエンハンサーは核内で凝集すること が分かっていた。 (前回の記事を参考ください↓) 「1細胞1受容体ルール」の分子メカニズム_1 - Bio-Station しかし、 - このような染色体上の相互作用がゲノムワイドにどこで起きるのか? - またこの相互作用をどのような因子が担うのか?その意義は? という点は不明であった。 今…

  • 「1細胞1受容体ルール」の分子メカニズム_1

    動物はほぼ無限に存在する匂い物質をどのようにかぎ分けているだろうか? 匂いを感知するのは嗅覚系の嗅覚受容体であるが、マウスでも嗅覚受容体の遺伝子数は1000個程度であり、 1受容体が1つの物質を感知する仕組みだとそれほど多くの物質をかぎ分けることができない。 そこで、動物は嗅覚受容体の種類によって異なる場所に投射させ、 どのニューロンの組み合わせが発火するかというパターンで匂い物質をかぎ分けているらしい。 このように多様な物質を個々の細胞が認識するためには、1細胞ごとに発現する嗅覚受容体が異なっている必要がある。 実際古典的な研究によって、嗅覚系においては1細胞に1種類の受容体だけが発現する「…

  • 分化してからの時間が分かるRNAseq

    近年、シングルセルRNAseq解析が生命科学研究で広まっている。 シングルセル解析の大まかな使われ方としては - 新しい細胞集団を見つけ出す - 発生/分化過程における遺伝子発現変動をつかむ の2種類があげられる(と思っている)。 後者では、ある細胞からある細胞になるときの遺伝子発現変化から その変化に重要な遺伝子をとったりすることができるので、結構論文でも見られる。 しかし、現在のシングルセル解析は遺伝子発現の近似性から 疑似的な時間/分化軸を算出しているため、あくまでも机の上での時間軸である。 (遺伝子発現よりより精度の高い方法としてRNA velosityとかがあるわけだけど。) つまり…

  • エンハンサー大事_2

    先日もエンハンサーについて紹介したが、 https://jugem.hatenadiary.jp/entry/2019/01/30/212419 今回も違った角度からエンハンサーについて扱った論文を紹介する。 ----- 今の生命科学研究では、ある細胞のみを標識すること、が結構重要である。 例えば、血管だけを標識したり、ニューロンだけを標識したりすることで、 その細胞集団の形態や位置を知ることができるだけではなく、 その細胞でだけある遺伝子をノックアウトや過剰発現したりすることができる。 これまでの多くの研究では、 目的とする細胞集団に高く発現する遺伝子のプロモーターを利用することで細胞を標識…

  • ウイルス由来配列の発現を抑える

    多くの生き物のゲノムには、 ウイルスを由来とする配列が多く含まれていることが分かっている。 例えばその一つで、レトロウイルス由来の配列であるRetroelementsは ヒトゲノムの40%を占めるとされている。 このようなウイルス由来配列は、胎盤形成に関わる遺伝子になったり(peg10)、 認知機能に重要になったり(Sirh11/Zcchc16)していることなどが知られていて、 進化を駆動する要因の一つであると考えられている。 一方で、このようなウイルス由来配列は ゲノム上を転移して他の遺伝子を壊してしまう可能性があるので、 基本的に抑制されている必要がある。 ------ 例えば、全身性エリ…

  • エンハンサー大事

    私たちの体がきちんとできあがるためには、 皮膚の細胞は皮膚の細胞へ、脳の細胞は脳の細胞へと それぞれの細胞がそれぞれのなるべき細胞に分化する必要がある。 この細胞の運命がきちんと制御されることが、正しい発生に極めて重要である。 細胞の運命は転写因子などを含んだ遺伝子発現によって決定づけられると考えられる。 これまで数多くの論文がそれぞれの細胞種に重要な遺伝子を報告してきた。 ------ では、この遺伝子発現はどのように決定づけられるのだろうか? 近年の研究によって、細胞の中のクロマチン状態が 遺伝子発現を制御することが分かってきた。 すなわち、プロモーターやエンハンサーといった DNA領域の…

  • 温度に合わせて性別が決まるメカニズム

    それなりの種類の爬虫類は、卵の時の温度に合わせて性別を決定するという仕組みを持っている。 例えばアカミミガメでは26℃ではほとんどオスになるが、 32℃ではほとんどがメスになることが知られている。 温度で性別をさせる利点ははっきりとは分かっていないが、 「チャーノフ・ブルモデル」 (発生環境が雌雄の適応度に異なる影響を与える場合には、 遺伝子型性決定よりも温度依存型性選択の方が選択上有利になる???) というので説明されるらしい。(よくわかりません...)(D. A. Warner et al, Nature, 2008) この温度依存的な性選択は非常に面白い性質だけれども、 温度依存的に性を…

  • なぜ毒ガエルは自分の毒で死なないのか?

    多くの生物学研究は、マウスやハエ、線虫やゼブラフィッシュなどの モデル生物を用いて行われている。 モデル生物はこれまで数多くの知見が蓄積しているので、 研究を進めるには非常に便利である。 その一方で、地球上にはモデル生物以外の種も数多く存在していて、 その一部はモデル生物にはない特殊能力を持っていることが知られている。 この非モデル生物を使って研究することで、 初めてわかる知見も数多くあり、非モデル生物の研究は重要である。 例えば、GFPももともとオワンクラゲの発光から取られたものだし、 CRISPRも菌(化膿レンサ球菌とか)の自己防御機構から取られたものである。 そこで今回(ともう1回?)は…

  • アストロサイトがリズムを作る

    昨年は本庶佑先生がノーベル賞を受賞されて盛り上がりましたが、 おととしのノーベル医学生理学賞は何だったか憶えているでしょうか。 おととしのノーベル医学生理学賞は "概日リズムをコントロールする分子メカニズム"の発見に対して、 ジェフリー・ホール、マイケル・ロスバシュ、マイケル・ヤング に授与されましたね。 ----- 多くの生物は地球の自転に合わせて 体内時計を持っていて、睡眠や体温、行動などを変化させる。 この体内時計の破綻はうつ症状や、睡眠不足などの種々の問題を引き起こし、 生活の質を低下させてしまう。 このため、概日リズムを制御するメカニズムを明らかにすることは、 これらの症状を改善する…

  • long non-coding RNAは意外と、、、??

    生き物のゲノムにはlong non-coding RNA(lncRNA) (タンパク質をコードしていない長いRNA) が数多く存在していることが分かっている。 これまで数多くの因子のlncRNAの機能が報告されてきたが、 意外と発生に不可欠であるという報告は少なく、 lncRNAが"死ぬほど"重要なのかどうかは不明であった。 ----- lncRNAが"死ぬほど"重要なのかを調べるために、 筆者らはゼブラフィッシュにおいて、CRISPR-cas9を用いて、 32種類のlncRNAのノックアウトゼブラを作成した。 (32種類は、RNAseqで発現していて、 リボソームはプロファイリングでリードが…

  • ゾフルーザの作用機序 -Snatching the cap-

    今年もインフルエンザが広まる季節になってきましたね。 当ラボでもボスを始めとして発症者が出てしまいました.... ただ、去年までと様相が異なるのは、 "ゾフルーザ"という新しい薬が出ていることだろう この"ゾフルーザ"の作用機序は結構興味深いので、 このブログで紹介しようと思う。 一言でまとめると、ゾフルーザは キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤なのだが、 それではなんのこっちゃ分からないので説明したい。 ----- インフルエンザウイルスはRNAウイルスで、 細胞中でRNAからRNAを転写することで自己増幅する。 1970年代、このインフルには面白い性質があることが分かっていた。 まず、…

  • Act locally !

    最近の神経科学のトレンドの一つとして、 "軸索でのローカルなもろもろの制御"というのが挙げられる。 例えばこれまで、mRNAはaxonでローカルに必要な場所で合成されるだとか、 m6a修飾がaxonで特異的におこるとかが報告されてきた。 さらに、最近オルガネラまでもがAxonやDendriteにローカルに存在することが CellにBack-to-backで報告される*など、 ローカルな制御がグローバルに熱くなっている。 ちなみにそのCellによると、 ミトコンドリアもdendritesでコンパートメントを作っていて、 エネルギーをローカルに供給しているらしい(Rangaraju, Cell, …

  • ニューロンを生むべきか、グリアを生むべきか

    私たちの脳はニューロンやグリア細胞といった細胞から構成される。 このニューロンやグリア細胞は発生期において 共通の起源である神経幹細胞から生み出されることが知られている。 神経幹細胞は興味深い性質を持っていて、 発生の初めの方にはニューロンだけを生み(ニューロン分化期)、 そのあとにグリアだけを生む(グリア分化期)という性質を持っている。 つまり、神経幹細胞は発生時期依存的に性質を変え、生み出す細胞を変化させる。 この性質の転換がうまくいかないと、 ニューロンやグリア細胞の数が異常になってしまう可能性があるので、 ニューロン分化期からグリア分化期への転換は厳密に制御される必要がある。 では、神…

  • 紹介できなかった論文たち_2

    2018年も最後になってきたので、 今年出た論文で紹介しきれなかったものを簡単に紹介する。 Self-organization of a human organizer by combined Wnt and Nodal signalling, Nature, 2018 1924年にシュペーマンとマンゴールドの実験によって、イモリの初期胚には シグナリングセンターのような"オーガナイザー"があることが分かっていた。 オーガナイザーは誘導因子を分泌し、周りの組織の発生運命を決定する重要な領域である。 他にもカエルなどでオーガナイザーは発見され、誘導因子の分子実体など研究されてきた。 しかし、この…

  • 二刀流 in Heart

    今年2018年は大谷翔平がメジャーリーグでも二刀流をこなし話題になりましたね。 年の瀬ですが、Scienceにタンパク質も二刀流していたというやつが出ていたので 紹介します。 この論文では、心筋で筋小胞体とT tubeをつなぐ構造タンパク質として知られていたJunctophilin2が筋損傷時に核に入り転写因子として働く、ことを見出した。 構造タンパク質と転写因子としての二刀流ということですね。 ----- 心筋は収縮と弛緩を繰り返すことで血液を全身に巡らせている。 この収縮と弛緩は細胞内においてはカルシウムの濃度によって制御されている。 心筋に活動電位が入ると 心筋細胞の凹んだ構造体であるT…

  • シングルセルChIP-seq

    今回は日本初のテクニックについて紹介しようと思う。 ChIP(クロマチン免疫沈降法)は、 あるタンパク質がゲノム上のどこに張り付いているか調べる方法で、 転写因子の解析やエピジェネティクスの研究でよく使用されている。 具体的な実験としては、以下の図のように * タンパク質とDNAを結合させる ↓ DNAを切断する ↓ タンパク質を抗体で免疫沈降する という流れで行われる。 実際は、最後にシーケンスすることでゲノムワイドに解析することが多い。 (定量PCRで特定のゲノム領域のみをみることもあるが) このChIP(-seq)、とてもパワフルな技術ではあるが、 少数細胞では解析できない、という問題が…

  • 翻訳されるnon-coding RNA??

    前回紹介したように、(https://jugem.hatenadiary.jp/entry/2018/12/16/145900) 近年non-codingと思われていたRNAから翻訳されていた! という報告がいくつかなされてきた。 今回紹介する論文も感染時に発現する翻訳される"non-coding"RNAを見つけた!、 という話(☆)。 さらにそいつは一般的な開始コドン(AUG)から始まっていなかったという驚きもある内容。 ------ おそらく、初めは感染時に翻訳がどう変化するというモチベーションだったのだろう。 筆者らは始めに、培養しているマクロファージにLPS(感染刺激)を加え、 一定時…

  • 精子と卵子が出会うとき_2

    精子と卵子がお互いを認識しあうタンパク質は受精卵の形成に極めて重要である。 先日紹介したように、https://jugem.hatenadiary.jp/entry/2018/11/27/192536 これまで哺乳類で精子-卵子間相互作用をIzumoとJunoという因子が担うこと報告されてきた。 (Izumo; Inoue et al., Nature, 2005、Juno; Bianchi et al., Nature, 2014) --- では他の種でどのように精子-卵子間相互作用を行うのだろうか? 研究者たちはまず、IzumoやJunoが他の生物種にも保存されているか検討した。 すると驚…

  • 端のメチルが役に立つ?

    今回は日本人研究者の論文を紹介しようと思います*。 タイトルは完全にプレスリリースのタイトルに引っ張られてます... (プレスリリースのタイトルは"メチルは端だが役に立つ") 少し前の投稿でも解説した通り、 最近新しいRNA修飾としてm6Aが再発見され、その生物学的意義が明らかにされつつある。 多くの人はmRNAの内部に存在するm6Aに着目し、その機能を研究しているが、 脊椎動物ではmRNAの5末端にも、m7Gに続く構造としてm6Amが存在している ことが知られている。(端のメチル基ってことですね) ----- このキャップのm6AmはRNAの安定性に関わるかもとか、がんでなんとかといわれてい…

  • CRISPRの歴史_6

    今回はゲノム編集ではなくて、基礎研究のためのCRISPRの応用法を。 先日CellにてでたCRISPR-GOというの(1)を紹介しようと思う。 遺伝子発現は転写因子やクロマチン状態などの要因で制御されることが有名ですね。 しかし近年、遺伝子発現が"遺伝子座が核内のどこに存在するか"で 制御されている可能性が報告されてきている。 一般的には、ある遺伝子座が核膜に移行するとその遺伝子の発現はOFFになる、と考えられている。 これまで、幹細胞の運命制御でいくつか報告がなされている。 代表的なものは心臓の幹細胞(2)と、神経の幹細胞(ハエ、3)だ。 例えば、ハエの神経幹細胞では、ある種の分化細胞を生み…

  • CRISPRの歴史_5

    今回はCRISPRを治療に使おうという潮流の論文を。 この分野では、 Juan Carlos Izpisua Belmonte (以下ベルモンテ) Lab (ソーク研究所) の成果が目覚ましい。 *ベルモンテは日本人研究者好きで知られている。 Publicationをみても日本人が1stのものも多い。 ちなみに、ブログ編集者は最近某学会でベルモンテの講演を聴くまで 存じ上げなかったのだが、かなりすごい成果を上げまくっている。 Ratとmouseのキメラとか、若返りマウスとか。 ベルモンテはCRISPRで疾患モデルを治そうという研究を行っている。 今回紹介するのは以下の2報。 In vivo g…

  • CRISPRの歴史_4

    前回xCas9で紹介したDavid Liuの他の仕事について少し。 David Liuさん、これまで存じ上げなかったが、 2017年のNatureが選ぶ10人にも取り上げられるスーパーな研究者らしい。 経歴もなかなかすさまじく、 学部の時はド有機化学でノーベル賞ホルダーのE.J.Corey Lab、 PhDは化学と生物の融合領域で有名なピーター・シュルツ Labを出ている。 *ピーター・シュルツさんについては"ピーター・シュルツ"で 検索して出てきたものを読むとなんとなくわかる。 かなりのハードワーカーらしい。 ちなみに、昔(低分子で神経幹細胞を作るというやつ)取り上げたSheng Dingも…

  • CRISPRの歴史_3

    今回はCas9の改変体について。 CRISPR-cas9は強力なゲノム編集技術だが、もちろん課題もある。 その一つが、ターゲット配列にかかる制限だ。 Cas9はガイドRNAで標的とした領域すべてを切断できるわけではなく、 標的配列の近傍にPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)が必要である。 現在広く使われているCas9のPAM配列はNGG(Nは任意の塩基)で、 この配列が近くにないとCas9はDNAを切断できない。 GGは一応1/16で出てくるが、ノックインなどをしようと考えると、 PAMは短い方が望ましい。 そこでPAMを短くしようという試みが行われてきた。 その結果、PAMを1塩基まで絞っ…

  • CRISPRの歴史_2

    前回、CRISPRの歴史について紹介したが、 Cellに昔出ていた"The Heroes of CRISPR"(Cell, 2015)という総説がかなり良かった。 どういった人々が、どのような経緯で重要な発見に至ったかが記されている。 *オープンアクセスなので誰でも読める。ぜひ。 ちなみに書いたのはボストンの人なので、フェンチャンびいきになっている。 同然ダウドナはこれには承服できない部分があるらしく、 Pubmedで反論が投稿されている。 これら議論は他の科学雑誌でも取り上げられ、 それはそれで読みごたえがあって面白い。 ----- それはまあいいとして、ゲノム編集技術としてのCRISPRの…

  • CRISPRの歴史

    最近ヒトに対してCRISPRでゲノム編集を行ったというニュースが流れた。 (未だ真偽不明だが) 今でこそ、CRISPRは当たり前の技術になりつつあるが、 ゲノム編集のツールとして報告されたのは2012年と新しい。 CRISPRはどのように発見され、開発されてきたのだろうか。 今回は、CRISPRの歴史をざっと振り返りたい ------ 1980年ごろ、塩基配列解読技術の発展によって、いろいろな生物の全ゲノムが解読されるようになった。 その中で、原核生物には回文配列がみられることが分かった。 このときは、この配列が何をしているのかは不明であったが、転写制御を行うと考えられていたらしい。 ちなみに…

  • 精子と卵子が出会うとき_1

    今回から二回にわけて、精子と卵子が結合するメカニズムについて紹介したい。 私たちの体は37兆個*の細胞からなると考えられていて、 それぞれの細胞が、それぞれの場所で、それぞれの機能を発揮することで恒常性を維持している。 これらのすべての細胞は元をたどれば受精卵という一個の細胞から生み出される。 すなわち、受精卵の形成メカニズムを知ることは、 私たちの体がどう形作られているか知るために極めて重要な問題である。 受精卵の形成に極めて重要なステップとして、精子と卵子が融合があげられる。 この融合に当たっては卵子と精子が、 私は精子ですよー、私は卵子ですよー、じゃ融合しましょー、 といってお互いを認識…

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