家族における加害性と被害性の交錯について~宇佐見りん著『くるまの娘』を読んで~
前々回の記事〈歪な家庭環境が子どもに及ぼす影響について~柚月裕子著『教誨』を読んで~〉において、私は歪な家庭環境によって悪影響を否応なく受けてしまう子どもの被害性について触れた。その際、子どもが他の家族に対して加害者になることを、ほとんど念頭に置いていなかった。子どもは身体的・社会的弱者なので、家庭や社会において強者たる大人から一方的に被害を受ける存在だと無意識にとらえていたのである。 ところが、そのような家族間における暴力や権力の構造についての私の認識を根源的な視座から覆すような、家族関係のアンビバレントなリアルを描いた本と出合った。それは、当ブログの2024年2月20日付けの記事〈私たちに…
2025/06/30 20:46