天音しおんを俺は好きである
俺の知人が女優をやっていて、時々その舞台を観に行くことがある。今夜も仕事をジェンガのように積み上げて定時でさっさと帰り、舞台へ足を運んだ。 この知人というのは、売れてるか売れていないかといったら、売れていないのだろうと思う。いや、売れてるってどれくらいからよ?と聞かれても困る。上原亜衣は間違いなく売れてるだろうけれど、天音しおんはどうだ、と聞かれても答えに窮する。それと一緒だ。天音しおんはニッチなジャンルの巨頭である。俺の知人もまた、同じようなものだ。 会場は町の外れの場末のバー。 カウンターの席に腰を下ろして、周りの客を見遣る。色んな顔がある。まだ若い学生から、俺のようにくたびれたオッサン、…
2018/09/19 21:47