寝過ごさなかった、それでよし
出張の朝、彼女はスーツ姿で新幹線に乗り込んだ。 窓側の席に座るなり、ノートパソコンを開き、資料作成に取り掛かろうとした。 コーヒーも買った。Wi-Fiもつないだ。準備は万端のはずだった。 ──しかし、気づけば…… 窓の外には目的地の一つ手前の駅。 パソコンの画面はスリープモード。 カバンの中の書類も開かれていない。 小さな寝息と、わずかに乱れた前髪。 「……やっちゃった」 ひとりごちて、ふっと笑う。 働くことも、休むことも、どちらも大切なのだと、少しだけ自分に優しくなれた朝だった。
2025/07/02 06:45