自棄にならないほうが旅はいい
自棄になった人が大人しく帰路につく時、どんな顔をしているんだろう。 某年、春前のこと。 会社終わりに、どこでもいいのでどこか行こう、となった。旅行というより徘徊だ。どうにでもなれ、と思っていた。しかしだいたい、どうにでもなりたいときほど、ただの近所の散歩より質素なひとり旅に始まって、とくに盛り上がるものもなく終わる。 東京にもあるチェーン喫茶でひと息し、横浜にもあるチェーン牛丼店で大盛りをかっ喰らい、埼玉にもあるコンビニで夜食やら菓子やらを買い込み、千葉にもあるビジネスホテルのベッドですやすや眠る、のを意味もなく大阪でやる感じ。 気力がないわりに衝動は一丁前の時に限って、開拓する勇気はないがハ…
2022/04/19 22:51