誤解されても馬鹿にされても…(伊藤仁斎)
仁斎の弟子のひとりに、いはゆる狂と云はれた百姓がをりました。仁斎とは勿論、江戸時代の儒学者、伊藤仁斎その人のことであります。その百姓は大変、辺鄙なところの出身で、その当時のこととて徒歩(かち)で京都を目指したさうです。仁斎は時の都で私塾を開いてをりました。百姓は豆の袋を背負つて豆ばかり食べて京都に辿り着いたさうです。その百姓は貧しかつたのですが向学心に燃えてゐたのであります。したがつて食べる物は豆で十分だつたのです。仁斎の講義はご馳走を食べ、お酒を飲みながら進められました。しかつめらしい現代の学校のやうではありませんでした。今の学校と異なつてゐたのは、そればかりではありません。彼の講義には大変、魅力があつたのであります。仁斎はその頃の幕府の学問に大反対してをりました。いはゆる出世のための官学に異議を唱へて自分で...誤解されても馬鹿にされても…(伊藤仁斎)
2021/08/29 22:42