『春秋左氏伝』 物言えば唇寒し
陳の国の轅頗(えんぱ)という人は、国人に税を割り付け、陳の公女の結婚資金にした。 そこまでは良かったのだろうが、その金が余ったので、自分用に大きな銅器を作ってしまった。 国人は、この横領を憎み、轅頗を追放した。 取るものも取り敢えずに逃げる途中、喉が渇いた。 すると、一族の一人である轅咺(えんけん)が、濁り酒、乾米、乾肉をそろえて進めた。 轅頗は、喜ぶと同時に驚いて、 「何故、こんなに揃っているのか」 と、轅咺に尋ねた。 「あなたが銅器を作った時、こんなことになるのではと思い、準備をしておいたのです」 と、轅咺。 「それが分かっていたなら、あの時、何故、私を諌めてはくれなかったか」 と、轅頗。…
2018/04/12 00:00