4話 いまだ帰らぬ片足

4話 いまだ帰らぬ片足

その夜、ヒキコは口をアワアワと開閉させて固まっていた。 寝ぼけ眼をこすりながら便所から寝床に帰る途中の 視線の先、月明かりに照らされたそこには 〝買ったばかりの靴下〟の片側が独りでに床を這っていた。 「な、なんなんだ!夢か、明晰夢か?!」 この感覚には覚えがあった、 ーそれはヒキコが幼少期、おそらく4歳ごろの記憶ー 父と毋がタバコを吸うために 居間から台所へとドアの向こうに消えていく。 そして僕の興味は、触ろうとすると怒られていた提灯に向いた。 伸ばせばギリギリ届く距離、魔導通信機の上に掛っていた。 ここぞとばかりに手を伸ばした。 「わ!」 触れた勢いで床に落下してしまった… その瞬間、紙製の…