野村望東尼(1806-1867)《『西方の風~九州ひと図鑑》』(34)
一級の女性文人、勤王歌人に非ずー面白キ事モ無キ世ヲ。郷土の歴史上の人物について問われて、野村望東尼(のむらもとに)は福岡市民があげる名前の、おそらくは十指にはいる。しかし、大方の人が想像できる人物像は、「平尾山荘の勤労歌人」という輪郭にとどまる。高杉晋作や平野國臣らとの親交、さらには福岡藩による勤王攘夷派の粛清のあおりで姫島(福岡県糸島市)に流罪になった事情を説明できれば相当の知性であろう。望東尼の遺稿、残された文書をよみとく地道な手法でより維新史観で強調された「勤王歌人」を矯正し、「時世の記録者」「一級の文人」としての実像を彫出する作業が進行中であることを小河扶希子氏の著書『野村望東尼』で知った。福岡藩士・浦野重右衛門の二女に生まれて幼名は本(もと)、あるいは元(もと)といった。後年、得度して「望東(もと)」...野村望東尼(1806-1867)《『西方の風~九州ひと図鑑》』(34)
2020/05/27 08:20