故郷は遠くにありて・・・忘れかけてた【遠い背景の記憶】[201]【あゝりんどうの花咲けど】
あゝりんどうの花咲けど(昭和40年9月号P127~135)※はじめて玲子を見たとき、佐千夫は吸いかけた息をとめた。濃いまつげにかこまれた玲子のひとみに、窓外の景色が流れていた・・・・・。今回は、【あゝりんどうの花咲けど】編集版第1章(P6~P9)【1】P128~P130の紹介です。その月曜日の朝、中井玲子は、若津町から香原市へと走る急行バスの中にいた。バスは満員であった。通勤通学や商品仕入れの人たちで、足を踏みかえることもできないほど、混んでいた。玲子はようやくつり皮につかまって立っていた。バスの揺れるたびに左右から圧迫され、うしろから押されて、息苦しい。昨夜の豪雨で、道路から見える水田には泥水があふれていた。みどりの苗が水中にかくれてしまっているところも、多い。山肌がくずれて赤い土があざやかな色を見せている崖...故郷は遠くにありて・・・忘れかけてた【遠い背景の記憶】[201]【あゝりんどうの花咲けど】
2021/09/28 07:00