ハプニングバー界の大谷翔平
当初の開花宣言より早まった東京では、至る所にソメイヨシノが街に彩りを添えていた。歩く人々も足を止めては、その美しさに魅了されている。 日曜日の夕方。少し風が冷たいせいか、いつもより早足で僕はいつものビルに入る。 アルファベット一文字だけ書かれた無造作な看板のついた扉の前に立ち、インターホンを押す。いつもの店員に導かれて中に入る。 換気のあまり良く無いフロアーにカップルが数組とカウンターに男性客が数人。店員に炭酸水を頼んで椅子に腰掛けた。 横にいる客はいつもの常連のパンダだ。本名は知らないし、知る必要もない。禿げた頭に残ったわずかな髪の毛がまるでパンダの耳のようになっているから、勝手に命名した。…
2023/03/22 10:25