詩作品 「酔蝶花}
高安ミツ子今日の終わりを吸い込むように夕暮れに酔蝶花が咲きだした風や虫を憩わせて咲くいくつもの酔蝶花をみていると夕暮れは私の輪郭をも揺らしていく老いてなお不揃いの心があって生への答えは見つからないけれど何かに抗うように声にならない私の思いは点いたり消えたり暮れなずむ庭で私の落し物は何だったろうかと思えてくるこの頃は時代の猛暑にやけどをしているような私だが八十歳近くなると人生をひと回りしたような思いがして過ぎてきた時を手繰り寄せることで生きることへの帳尻合わせをしているようだ記憶の中の私は小さな物語のまま時の雨傘をさしてひたすら私を歩いていたどんな思い出にも辛さや切なさはあったけれどそれらは上書きされ今は懐かしさとなって過去の私から今の私へと手渡されているそしてあの曲がり角で出会えた優しかった人々が思い出さ...詩作品「酔蝶花}
2024/08/31 18:08