長篠合戦では勝頼を騙して誘いこんだ
⑰今回は「作家・津本陽さん」によるシリーズで、織田信長についてお伝えします。――――――――――――――――――――――――一信盛(のぶもり)は長閑(のどか)に申しいれた。「私はかねて主人信長に恨みを抱いている。ついては、このたび勝頼公が信長と決戦されるとき、私は戦いの最中に裏切り、織田本陣をついて信長を討ちとるであろう」佐久間信盛は当時、織田家随一の重臣であった。「甲陽軍艦」では、設楽原(したらがはら)出陣のとき、信盛と家康がそれぞれ六千の兵を率いていたとしているが、同列の軍団長といえる地位にいたようである。信盛麾下(きか)の寄騎(よりき:有力武将に従う下級武士)には、水野信元がいた。家康の外伯父であるが、天正三年十二月二十七日に、武田勝頼への内応の容疑で、信長の命で家康に殺される人物である。水野信元は...長篠合戦では勝頼を騙して誘いこんだ
2024/11/30 07:00