さいなら三角またきて四角
家の傍に小高い丘があった。丘よりも急峻なところがあったから山である。雑木が茂り、曲がりくねった山道がいくつもあった。ここが僕らの遊び場だ。腰に刀を差して連れ立って歩いた。もちろん、おもちゃを買ってもらえるものでもなく、自分で木を削って刀の形にしあげたものだ。時折、「曲者!」と叫んで、手裏剣ならぬ木片を投げて見る。 「なあ、今黒い影が走っただろ」 必ず調子をあわせる奴がでてくる。「そこにも!」と叫んで手裏剣を投げる。 「うむ、仕損じたか」「素早い奴だ」 「あれは伊賀者だ」 「僕たち甲賀だもんね」 やがて道はちょっとした広場に出る。そこは一面ススキ野原になっていた。遊びは鬼ごっこに切り替わる。身の丈ほどものススキが生い茂っているから、身を隠すことが出来る。かがんで素早く動けば、鬼が来たころには、もうそこにはいない。神出鬼没の忍者を演ずることができるのだ。 遊んでいると時間が経..
2019/01/31 13:35