稲妻のようなひらめきなしに書く気がしない

稲妻のようなひらめきなしに書く気がしない

昔付き合いのあった女性に「あんたがなぜ小説を書くのか、わからない」とよく言われた。ちゃんとした定職があって忙しくしているのに何を好き好んでということもあるだろうが、彼女は元々画家やマンガ家が作品づくりに苦吟する様子をテレビで放映していても、「もう遊んで暮らせるだけの収入があるのに、なんで無理して働くのかしら」といったようなことを言っていたから、芸術を始めとするクリエイティブ系の人のことがおよそわからないのだろう。前回挙げた庄司薫やサリンジャーはひょっとするとそうなのかもしれないし、興が乗らないのに書くのは読者に対して不誠実だとも言えるだろう。仕事は食べるためにやむを得ずやるもので、やるにしても与えられたものをこなすものと彼女は考えていて、理解できないのかもしれない。あっさり言ってしまえば頑固なのだが、内的衝動を...稲妻のようなひらめきなしに書く気がしない