長谷川櫂・句集『太陽の門』青磁社
かすてらを切るや薔薇の芽みな動く長谷川櫂吉野山咲きみちて花におぼるる桜かな同花びらや今はしづかにものの上同滅びゆく宋を逃れて昼寝かな同PET検査さみだれや人体青く発光す同振り返りみれば巨大な蟻地獄同さまざまの月みてきしがけふの月同口を出でて言葉さすらふ枯野かな同ほころびて唇となる椿かな同ひるがへり水に隠るる金魚かな同月に寝るここちこそすれ月の山同その中の光のもるる胡桃かな同富士山のどこを切つても春の水同マスクして人間の顔忘れけり同龍の骨月の光に埋もれけり同揺れながら魂ねむる古酒(くーす)かな同長谷川櫂・句集『太陽の門』青磁社
2021/09/14 12:21