失敗

失敗

訪問リハビリは当初、週一回の日程で始まった訳だが、週二回へと増やされ、 訪問看護と合わせ、週三回の訪問を受けることとなる。そして、その効果は 着実に表れ始め、手添えでの歩行訓練も叶うようになっていった。 それまでの母は、ベッド外の生活行為全てに介助が必要だった。病院へは ベッドで着替えを済まし、そこから抱き上げて車まで運ぶし、入浴もまた、 ベッドで脱衣させ、そのまま抱き上げで浴槽まで運び、湯に浸していた。 排泄に関しては介護用オムツの常用し、ベッド脇にポータブルトイレの設置となる。 やはり、事後の始末のこともあり、排便だけは必ずポータブルトイレを使うのだが、 足の痛みのため、その移動すら私は介助を求められていた。 リハビリデイ体験利用から約二年、その時点では杖での自力移動が叶っていたのだ。 それに対し、手添えで支えられ、慎重に一歩一歩、歩みの感覚を取り戻そうとする 母の姿は何とも弱々しく、この二年の時間の重さを思わずにはいられなかった。 母自身、自分が足手まといな存在になっているという切実な意識がある。そんな中、 ようやく再開に漕ぎ着けたリハビリ歩行訓練、入浴などは変わらず、介助が要るが、 トイレくらいは何とか自分一人で済ませようと、試みが始まるのだが…。 パーキンソンは安静にしていたからといって、進行が止まるような病ではない。 なまじ安静が続いたため、その進行状況について、いかに疎くなっていたかを 動作を再開させたことで、母も私も思い知ることになる。 つまり、ベッドから出て、便座の蓋を開け、着衣を下ろし、座る。その当たり前の 簡単な動作も、以前のようにスムーズにできなくなっていたという話である。