愉しい風が怖ろしい風に
短歌を始めたばかりの頃、歌会で或る歌人が「中々詠めないときは風を吹かせればいい」と言ったことがあった。💮詩人なら言葉を捨てよと君云いし後は窓打つ風の音のみ私はすぐに一首を作った。たしかに風は詠みやすい、風そのものが詩なのだ、私は気軽に風を詠んだ。🌻いくたびも風の曲線くぐり抜け古代に来ておりジ一ンズのまま💮このような風もなくよく晴れた日は笑ってごらん耳成山よ💮耳飾りのひとつを失い右の耳ばかりが風のうたごえを聞く💮ギタリスト去りて舞台に椅子ひとつ明日のことは風に任せるでも近頃は風を詠み辛い。風の怖ろしさに迫られている。風を愉しむことなど私はできなくなってしまった。心地よい微風も急に暴風になりかねない。「歌が出来ないときは風を」と教えてくれたあの歌人はすでにあの世に行ってしまった。💮目標に遠く離れた位置にいて何を捨て...愉しい風が怖ろしい風に
2019/10/30 14:52