至福の仕掛け絵本――2冊の『シンデレラ』
子どもの頃、初めて買ってもらった仕掛け絵本は「光文社の動く絵本」の『シンデレラひめ』(絵=岩本康之亮)だった。その時代は、十見開きのうち、ハイライトの一開きだけが仕掛けになっていた。シンデレラの場合は、もちろんカボチャが馬車になり、二十日鼠が馬に、ドブネズミが馭者になる場面。黄金の馬車と馬は赤い紐でつながれ、馬車のなかには、ほとんど幼女の顔をしたシンデレラが乗っている。この本の存在がどれほど嬉しかったことか。大人になって仕掛け絵本を集める原点になったのだと思う。 神田小川町にオフィスがあった頃、図録や洋書や画集を扱っている源喜堂書店の裏のビルに居たために、ランチに出る時には必ずその店を通った。…
2016/04/23 16:31