有閑マダムと本の日々

カード師

著者 中村 文則出版社 朝日新聞出版  悪い噂が疑心暗鬼を引き起こし、実際に噂通りになってしまうことを「予言の自己実現」というらしい。反対に、予言によって引き起こされた人々の行動が予言に反する事態をもたらすことを「予言の自己破壊」という(毎日新聞・

2022/01/29 11:10

ムーンライト・イン

著者 中島 京子出版社 角川書店  自転車で現実逃避の旅に出た拓海が迷い込んだ家は、一種のシェアハウスだった。いや、シェアハウスという気楽な呼び方より、駆け込み寺という方がふさわしいかもしれない。家の持ち主で高齢男性の虹さんと、虹さんよりさらに高

2022/01/22 11:28

鴨川ランナー

著者 グレゴリー・ケズナジャット出版社 講談社  京都といえば金閣寺や清水寺のイメージが強いが、京都人にとって京都といえば鴨川ではないだろうか。その鴨川のほとりを早朝にジョギングするのは、京都人の特権である。したがって、「鴨川ランナー」という、京

2022/01/15 11:35

あのこは貴族

著者 山内 マリコ出版社 集英社 東京の上流階級の娘の婚活と結婚を、彼女が属する世界の内と外から描き、閉鎖的な社会の功罪を面白おかしく風刺した痛快小説である。松濤で代々続く整形外科医院の娘、華子は、27歳になっても結婚相手が見つからないことに焦り

2022/01/08 11:33

デッドエンドの思い出

著者 よしもとばなな出版社 文藝春秋  心身が弱っているとき、気落ちしているとき、普段気にも留めなかった他人のやさしさに救われることがある。そんな静かなやさしさを集めた短編集である。社食で毒入りカレーを食べるという想定外の事故のトラウマに長く苦

2022/01/01 21:10