有閑マダムと本の日々

透明な夜の香り

著者 千早 茜出版社 集英社 「家事手伝い、兼、事務、接客」という求人に応募した一香を待っていたのは、見事な庭園を備えた古風な洋館だった。館の住人の朔は、どんなかすかな匂いも嗅ぎ分けて再現できる特殊な嗅覚を持つ調香師だった。世界にひとつしかない香

2021/10/30 14:08

流浪の月

著者 凪良 ゆう出版社 東京創元社  あの小学生女児誘拐監禁事件が今もなお人々の記憶に残っているのは、犯人の大学生が逮捕、連行される際に、女児が彼の名を泣き叫んで連呼したからだった。今生の別れの辛さを訴えるかのようなその様子は、専門家たちからはス

2021/10/23 13:20

今も未来も変わらない

著者 長嶋 有出版社 中央公論新社  中堅の作家、星子は、高校生の娘、拠と2人暮らし。今は雑誌の連載小説を書いている。バツイチで子持ちの彼女は、映画館で知り合った年下の男の子、称君といい感じになる。失恋したばかりの親友、志保にそんなときめきを打ち明

2021/10/16 10:56

小島

著者 小山田 浩子出版社 新潮社  いま自分がいる世界は別の世界とつながっている。そんな予感を、科学的に検証できなくても人は意識下に抱いている。小説は、そうした予感を揺るぎないものにしてくれるものだ。本書はまさに、そんな小説の力をまざまざと感じさ

2021/10/09 11:10

琥珀の夏

著者 辻村 深月出版社 文藝春秋 クラスの人気者のユイちゃんに誘われて参加した「夏の<学び舎>ミライの学校」での一週間で、ノリコは様々な体験をする。そこにはノリコたちのような夏だけの短期滞在の子たちとは別に、年中<学び舎>で生活してミライの学校で学ん

2021/10/02 21:30