有閑マダムと本の日々

水と礫

著者 藤原 無雨出版社 河出書房新社  東京での生活がうまくいかず故郷に戻ったクザーノが考えるのは、自分を慕ってくれた弟分の甲一のこと。クザーノが東京にいる間に、甲一は砂漠の向こうを目指して行ってしまった。やがてクザーノはらくだのカサンドルととも

2021/05/26 11:30

日没

著者 桐野 夏生出版社 岩波書店  愛猫が忽然と姿を消したことを気に病む女流作家のマッツ夢井のもとに、「総務省文化局・文化文芸倫理向上委員会」なる聞きなれない組織から召喚状が届く。読者がマッツの作品を提訴したので事情聴取したいというのだ。期日は明

2021/05/19 12:01

正欲

著者 朝井 リョウ出版社 新潮社    食欲、睡眠欲、そして性欲は、生物に備わった本能的な欲である。だからといって、その欲に制限がつかないわけではない。特に性欲については、同性愛ですら市民権を得たのは長い歴史のなかでごく最近のことである。LGBTをはじ

2021/05/12 10:49

ポラリスが降り注ぐ夜

著者 李 琴峰出版社 筑摩書房  レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー。それらの頭文字をとったLGBTと呼ばれる性的少数者は、世界的に広がる運動の成果もあって、少しずつではあるが生きるために正当な権利を獲得しつつある。しかし、そうした

2021/05/05 10:39