それもまたひとつのLOVE
12月の苺農家はのんびりしている。午前中のうちにクリスマスケーキに使うものやギフト用の苺を摘み取る。家族総出でパック詰めと発送業務をしても、午後の早い時間には終わってしまう。年明けから苺狩りが始まれば休む暇もないくらいに忙しくなるのだけれど、このバランスが難しい。僕はひとり直売所の店番をしながら、SNSに出す広告を考えていた。デザイナー会社を退職して家業を引き継ぎ、一国一城の主となって4年。ようやく軌道が見えてきた。大変なことも多かったが、家族、主に妻に支えられててここまで乗り切った。自負はそれなりにある。大丈夫、やっていける。そんな12月のある日だった。温度差で曇るガラス扉の向こうに人影があった。引き戸がゆっくりと動いて、会釈をしながら女性が入ってきた。「いらっしゃいませ」「あの、やってますか?」「どうぞ」あ...それもまたひとつのLOVE
2021/11/01 11:41