彼女の絵が完成する頃には
「彼女の絵が完成する頃には」心地よい風に連れられて人混みに身を預けてみる少しずつ肌寒くなってきた家族連れで賑わう街の風景どの瞬間を切り出しても笑顔まるで時が止まったようだ薄紅色の樹々が緑に混じって一面を塗り変えようと虎視眈々小鳥達はチュンチュンチュン何か嬉しいことでもあったのか?伸びをすれば抜けるような青、青、青静寂など無縁な日曜日の午後彼女はおもむろにカンヴァスを取り出す木の葉が風に吹かれて転げてるカラカラカラと流転の人生僕達を置いてきぼりにしたちょっとした罪悪感も小休止まとわりつく蝿を叩き落としてあまりにも無慈悲な自分を笑う見知らぬ人が早足で彼女を通り越すきっと彼も彼女のことを知らないそして彼女は誰も知らないんだそれでも彼女は人間を愛する会話もない、視線も合わせないコミュニケーションは暗黙の了解街のエコシス...彼女の絵が完成する頃には
2018/10/28 15:37