『トラスト・ミー』
ザ・シネマメンバーズにて。ハル・ハートリー監督作。インディ感の溢れまくる小品だった。社会にまるで馴染めない不器用すぎる青年と、うっかり妊娠してしまった少女が出会う。青年は父親に虐待されていたし、少女は母親に搾取されるような生活を送っていた。それぞれ子供に依存する親を持ちながらも、そこから抜け出すこともできずにいたふたりはやがて、恋というよりは共感とか共振とでもいうような感じで、互いに惹かれあうようになるのだったが…! 物語は終始鬱々としていて、閉塞感が強く、とにかく暗い。描写はオフビートでユーモラスな感じもあって、ちょっとジャームッシュ作品のような雰囲気もあるのだけれど、でもダークであることには変わりがない。また、映像は全体的に青みがかっていて、主人公ふたりの若さゆえのヒリつくような感覚、自分を持て余しているような痛々しさを強調するようでもある。そんな暗さや痛みに満ちた物語のなかで、ふたりの心が触れ合うような瞬間の美しさが描かれていて、それは本当に数少ない瞬間ではあるのだけれど、それだけに強く印象に残る。
2023/04/30 11:18