深夜の魚釣り

深夜の魚釣り

寝静まった真夜中の湖畔冴えた月あかり小さな桟橋に腰掛けてぼんやりと釣り糸を垂れた岸辺には黄色い銀杏の大木夜風に揺れてはらりと葉が落ちる波は金と銀を織りなして戯れる夜の鳥がどこかで啼く智慧をつぶやているのかそれともたださびしいと愚痴をこぼしているのかひんやりとするから僕は手編みのマフラーを首に巻く学生時代に暗記した現代詩をつぶやいてみたり旅先で思わず見惚れてしまった雄大な雪山の連峰を思い浮かべたりそれからもう二度と会うことのないあの娘この横顔を思い出したり元気にしてくれてるといいけど浮きに当たりずしりとした手応え黒い鯉を釣り上げた釣り針をはずそうとすると鯉の口に銀貨が一枚僕は銀貨をつまみ宙へかかげて眺めるなぜ生まれてきたのだろう?なんのために生まれてきたのだろう?この世界はどうして存在するのだろう?魂のふる...深夜の魚釣り