嘘の秋
嘘をつかずに生きられる人間と嘘をつかずには生きられない人間がいるならば僕は後者だ全く予期していなかった人生そのものがブラックに塗り潰されたあの日からパニック障害という秘密を抱えてからずっとこの病を隠し通すからすべて辻褄が合わなくなるのだ話して理解されるものならそれがいちばん楽だけれど世の中はそこまで甘くない自らの半生を正直に話せる人はたいがい恵まれているもし僕が秘密を打ち明けるならば胸を張って生きられなかった人になるだろう「すっかり秋めいたね」何気ない言葉を交わしたそのあとに躊躇いがちに話すのではなかろうか嘘の秋
2024/09/27 11:10