第一部 第7章−8 ブッシュ大統領の開戦演説
一九九一年一月、皮肉にも「弱虫」のあだ名の持つジョージ・ブッシュ大統領の開戦演説によって湾岸戦争の幕が切って落とされた。西洋には「正義の戦争ドクトリン(justwardoctrine)」と呼ばれる宗教上の教義に近い理論があり、大統領の開戦演説などにはこうしたレトリックが用いられてきた。ブッシュの開戦演説も例外ではなかった。軍事評論家ウィリアム・オブライアンによれば、「正義の戦争」は四つの条件を満たすことを求められる。第一に、「大義」が存在すること。開戦理由は権力者の私怨や私欲によるものであってはならず、皆が納得する理由が提示されていなければならない。第二に、「戦争が最後の手段」でなければならない。いきなり武力に訴えるのではなく外交など平和的な手段を尽くした上で、戦争以外の選択枝がなくなって初めて武力行使が正当化...第一部第7章−8ブッシュ大統領の開戦演説
2020/01/31 00:00