『サムエル記』感想

『サムエル記』感想

書物の名は『サムエル記』だが、内容はサウルとダビデの物語である。おそらく二人の英雄たちの歴史的事象を顕彰するために書かれたもののようで、同時に彼らの人間としての弱さも余さず描いている。加えて宗教臭さも薄いため、物語として単純に面白かった。宗教者として名を挙げていたサムエルに見いだされたサウル。彼は宗教権威を持つサムエルの後押しのもと、民意を統合して外征にも成功、王として確固とした地位を築く。彼の息子には英雄の息子にふさわしい、聡明で勇敢で優しく理に通じたヨナタンもいて、王位は一見盤石であるかに見える。しかし宗教的権威を保証してくれたサムエルがサウルを見放したことで、サウルは少しずつ失墜していく。栄枯盛衰ってところか。そんなサウルの前に、強力な敵兵ゴリアテを倒して名を挙げたダビデが登場する。ダビデはサウルに...『サムエル記』感想