白い骨
白い骨小高い雑木林に囲まれたみどりの墓地に深碧(しんぺき)の大空からきらめく陽光が降りそそぎ遥か彼方の山並みのなだらかな稜線がくっきり輝いている疲れたバスから降りてきた喪服の群れは厳粛な面持ちで鋼鉄に光る焼却炉の前に佇み火焔につつまれ灰塵となった棺桶の残骸を待ち受けているやがて焼却炉が開かれその瞬間ゆらゆらと喪服がふるえ変わり果てた生命の残滓に青白い吐息がこぼれたさみしい灰のなかに見え隠れする白い骨におずおずと鉄の箸を動かしまだ熱を持った骨を壺の中に収めてゆくもはや涙も流れずその単調な作業は亡き人と会話をしているかのように静かにながれてゆくときの流れの中に生まれた命はときの流れの中に消えてゆくそれでも死んだ人は白い骨のなかに生きている苦痛の消滅しもう辛い思いのしなくなる死後の世界に幸あれと祈らずにはいられ...白い骨
2024/06/02 07:36