付喪神に感謝を込めて
この話は「迷惑な爺さんと黒ずくめの老人」のスピンオフ作品です。 zeronicle.com この現場にいた一人の若者が、何を見て何を感じどう動いたか…。 あなたも是非、感じ取って下さい。 付喪神に感謝を込めて 私は鈴木俊太。大学への通学で毎日同じ時間の電車、同じ車両に乗る。そこには、うんざりするほど見慣れた光景があった。 「チッ、また遅れやがって!」 忌々しげな舌打ち。多くの人で満ちた車内に響く、不快な怒声。そして、電車のドアをガンガンと叩く、暴力的な音。 例のオッサンだ。土方仕事でもしているのだろうか。日に焼けた顔が、常に苦虫を噛み潰したように歪んでいる。誰もが彼を腫れ物のように扱い、私もイ…
2025/07/04 20:00