ムーン・パレス/ポール・オースター
ポール・オースター作「ムーンパレス」を一日で読了した。読後感は爽快かと問われれば、否と答えざるを得ない。沈鬱で虚無で自ら暗渠に落ち込んだ心境。主人公のマーコ・フォッグは、見栄っ張りで滑稽で自虐的で、泥縄的で、必ず否定から入るひねくれた性格だ。日本の文学でいえば葛西善蔵の家賃を滞納して借家を追われ、子どもを連れて夜道を行く主人公を書いた「子をつれて」。また太宰治の「グッド・バイ」のキヌ子。豚カツ、鶏のコロッケ、マグロの刺身、イカの刺身、支那そば、鰻、寄せ鍋、牛めし、握り寿司、海老サラダ、イチゴミルクなど、すべて平らげる大食漢。場当たり的で破滅型。ひとときの幸福にとどまることも許されず、進んで破滅へと向かう。車イスの老人エフィングは大層な変わり者。その老人もまた破滅型で、死ぬ間際にサンタクロースの真似事をするが、贖...ムーン・パレス/ポール・オースター
2019/08/29 22:05