夏海 漁の書斎です。 短編、長篇小説など載せてます。
ヤバイ世の中になった、と杉田はいつも思う。世間の憤懣は、そろそろ沸点に達しているのではないか
志村はどうしようもない無力さを感じていた。瀬川部長のことは、警察では一切喋っていないし、会社の不利になるようなことも、喋っていない。 志村は瀬川の本音を、どうしても確かめずにおれなかったので、本人をあちこち探したが、あいにく留守のようであ
鏑木は、腑抜けた志村を半ば強引に自分の家へ連れて帰った。そして、その夜から鏑木の家の間借生活が始まったのだ。 インクの臭いが充満する、工場の二階の資材室に、急拵えの寝室を造り、内戦電話を取り付け、監視つきの生活が始まった。鏑木の妻・千代子
抜け殻のようになった志村が、鏑木印刷の社長・鏑木雅夫に助けられたのは、横領容疑が解けて警察から帰って、二日目の夜であった。 鏑木は、志村が檜田電工の担当になった頃から、大阪相互紙業に出入りし始めた。それまでは夫婦と従業員一名の零細町工場で
志村が警察から帰った時には、既にもぬけの殻だった。そして、警察発表を期にブンヤたちの関心は、志村から大阪相互紙業と檜田電工に移った。ところが依然三人は帰ってこなかった。 志村は精も根も尽き果てた。買い出しに出掛けるどころか、食事の支度する
「ほんで警察に行って、搾られて、同僚に白い目で見られて、自分で罪被って、挙げ句、会社クビになったんや」「そや。ヨメはん怒りよったわ。虚仮にされたまま引き下がるやなんて、やて。・・・ヨメはんの言う通りやで。けど、気ー強いと言うんか、打ち拉がれ
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