夏海 漁の書斎です。 短編、長篇小説など載せてます。
ヤバイ世の中になった、と杉田はいつも思う。世間の憤懣は、そろそろ沸点に達しているのではないか
2008年3月
奥田とは、長年一緒に仕事をしてきたということもあって、気分の浮き沈みが激しいことは、以前から承知していた。 いつだったか、奥田と関わりのある人に彼の印象について聞かされたことがあった。その殆どの人たちは、仕事ができて人格者だと、口を揃え
十五年前、杉田は奥田に誘われて、広島に移る決心をした。 大学を卒業してすぐに、大阪のプロダクションに入社し、二十年。それまでの人生の半分以上を大阪で過ごし、血の一滴までが大阪に染まり尽くしている杉田が、ニ年近く悩んだ末の決断であった。 あ
志村は他人事のように言った。「昔のことは忘れた」と言っても、どうやら心の中にはまだ、消えようもない恨みと後悔が沈んでいるのだろう。それが証拠に、その表情は明らかに苦渋に満ちていると受け取れた。 それはそうであろう。弾みとは言え、入社以来の
2008年3月
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