その37 扉

その37 扉

「扉」それは、博士が十五歳の時に起きた事件である。当時、丁稚として住み込みで働いていた博士は、就寝前の時間、雑魚寝部屋で自分なりに今日の振り返りをしながら、静かな時間を過ごしていた。一日の終わりに、その日の仕事をひととおり思い返し、自分の行動を整理する。それが、ここでの博士の日課だった。日課を終え、そろそろ寝ようかとしていると、博士の耳に突然、これまで聞いたことがないような大きな爆発音が聞こえてきた。その衝撃は凄まじかった。音だけで身体が吹き飛ばされそうになるくらい強烈であった。やがて、その衝撃音は何かがグネグネとうごめくような重くて鈍い音となり、あたり一面を覆いつくした。災害が発生したのか。博士はそう思った。地震か?爆発事故か?それともまた戦争が始まったのか?重くて奇妙な音は、いつまでも止まる事はなかっ...その37扉