その36 予感

その36 予感

「予感」ちひろは、ヒカルの事をずっと自分の中で反芻している。ヒカルの事は、誰にも言えない。兄にも言えないし、親友のミキちゃんにも言えない。亡くなったヒカルとの関係は、自分ひとりで受け止めるしかない。誰かに話すとヒカルは消えてしまう。ヒカルはそう言うし、ちひろもそうだろうと感じている。この世には、些細な事がきっかけで失われてしまう存在があるのだろうと思う。今の二人の繋がりは、「誰にも言わない。共有しない。」そういう縛りの中でしか存在し得ないものなのだと感じている。「死んでいるのに存在している。」ヒカルと、「亡くなった弟と話ができる。」自分。この不思議な状況はいつまで続くのか分からない。いつ終わってもおかしくない。ちひろとしては少しでも長くこの繋がりを続けたい。親鳥が卵からヒナへ命を守り育てるように、ちひろは...その36予感