その27 逃亡者

その27 逃亡者

「逃亡者」猫橋は、逃げた。超スピードで、逃げた。不意打ちだった。油断していた。今なら、まだ逃げ切れる。山田広高に時間稼ぎをしてもらおう。自分が何から逃げているのか分かっていない。しかし、逃げなければならない。絶対に。瞬刻を永遠に変える速さで飛び回りながら、同時に相手をかく乱させるための魔法を無数に仕掛けた。「これだけやれば、なんとかなるはずだ。」そう思った。猫橋は、突然、強烈なめまいに襲われた。稲妻に打たれたような衝撃だった。目前の視界は大きく歪み、上下左右が判別不能になった。足がもつれ、身体の自由を失った。「やられた。」と思った。悪寒がして、頭痛がして、吐き気がした。震えが止まらなくなった。気分がひどく悪い。フラフラだ。身動きができなくなった。身体が潰れそうだ。自分の現状を把握できない。どうなっているの...その27逃亡者