時間飛行士へのささやかな贈物~フィリップ・K・ディック⑧
「アディスン・ダグは、プラスチックのまがいアカスギの小枝を滑りどめにはめこんだ長い小道を、大儀そうにとぼとぼと登っていた。やや首をうなだれ、肉体の激しい苦痛に耐えているかのような足どりだった。ひとりの若い娘がそれを見まもっていた。彼女はとんでいって彼を支えてやりたかった。あまりにも疲れきったみじめなようすに胸が痛んだが、それと同時に、彼が生きてそこにいるという事実で心がはずみもした。一歩一歩と彼は近づいてくる。顔を上げようともせず、勘だけで歩いているように・・・まるでいままでにも何度かここにきたことがあるみたい、とだしぬけに彼女は思った。ばかに道順にくわしいなあ。なぜかしら?」時間飛行から帰還する際の事故にあってしまった、ダグたち3人の「時間飛行士」たち。既に死んでいるはずにもかかかわらず、いったんは未来...時間飛行士へのささやかな贈物~フィリップ・K・ディック⑧
2022/06/30 23:04