10.相合傘

10.相合傘

学校がやっと終わり、帰ろうと思って、玄関に立って大粒の雨を見ていた。目の前には、紫陽花が咲いていて、綺麗だなと見とれていると隣にクラス一の美女が佇んでいた。私は、密かに片思いをしていた。水色の制服は、他の女子が着ているとダサく見えるが、彼女が着ていると、まさに校庭に咲く一輪の紫陽花の様だった。彼女が大きな目を丸くして、空から降っている大粒の雨を見て、「傘がないと帰れないなー。」と呟いていた。ちょっとしかめたような顔をしたが、映画のワンシーンのようなカメラが遠くから撮っているような感じがした。私も隣で、「これじゃ帰れないよなー。」と呟いてみた。そういうと「君もなんだ。」と話しかけてきた。君っていう言い方にドギマギした。「伊藤さんもなの?」「そうなんだ。雨やむといいね。」会話が途切れた。もっと話したいと思うが言葉が...10.相合傘