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心の中から湧き上がる想像を、外に吐き出してみようと思い、書き始めました。 楽しんでいただけたら嬉しいです。

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2025/06/07

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  • 時空の旅に出る㉛

    日曜日の昼下がり、私は由美子の家で尚人と積み木を重ねていた。「ミカ、絶対崩すなよ、デカいタワーを作るんだからな。」いつからか、尚人は私を『ミカ』と呼び捨てで呼ぶようになった。来るたびに自分の傍にいるこの愛想のない女が、おそらく家来か召使いに見えるのだろう。「それにしても美香、よく頑張ったじゃない、恋バナ。」由美子がクスクス笑いながら言った。「えぇ、頑張ったわよ。」「ふふ、夏美さんと美香の会話、一度...

  • 雑草…(後編)

    先月は町内の清掃日で、私は近所の人達と草むしりをしていた。皆、おしゃべりをしながらチャッチャと起用に雑草を抜いていく。私はその時初めて、自分が下手なのだと気付いた。どんなに丁寧に引っ張っても途中でブチッとキレてしまう。カマを使うと何故か、辺り一面に土が飛び散り、悲惨な状態になった。一緒にいた近所のママ友が丁寧に教えてくれた。私は食い入るように見ながら言われた通りにやってみるも、まったく上手くいかな...

  • 雑草…(前編)

    本日はお立ち寄り頂きありがとうございます。少し短い物語を書いてみました。楽しんで頂けたら幸いです。******************************************雑草…(前編)あぁ、また生えてきた… 太陽の日差しを浴び、キラキラと咲き誇る朝顔やひまわり、紫陽花たちの足元で平然と生息している雑草を、私は憎々しげに眺めた。家を建てて今年で2年目に入った。決して広いとは言えない庭だけど、子供が水遊びをしたり、家族でバーベキュー...

  • 時空の旅に出る㉚

    「夏美はさっきの原田さんて人が好きなんでしょ?」夏美の様子に少し戸惑ったが、何か言わないといけないらしいのでとりあえず聞いてみた。「え、ヤダ~、誰もそんな事言ってないでしょ~!」突然、夏美の弾けるような高い声が響き渡った。夏美の表情が明るくなったので、ひとまず安心した。でも彼女はまだ『何か言って』という顔で待っている。「でも彼の方は夏美の事好きなんじゃないの?」すると夏美は、急に気弱な表情で私の手...

  • 時空の旅に出る㉙

    12月になり、会社は本格的な繁忙期に入った。毎年この時期は、クリスマスやお歳暮などのイベント業務に追われる。「美香、久しぶり~、最近来てなかったよね。」社員食堂のテーブルに着くや否や、夏美が駆け寄って来た。「うん、先週はピッキング作業でずっと工場だったの。」一週間、工場の中を歩き回っていたせいか、両足の筋肉痛が未だ完治していない。1週間ぶりに会った夏美は、相変わらず私をいじっては楽しそうに笑っている...

  • 時空の旅に出る㉘

    「美~香~さん!」びっくりして見上げると、目の前には吉川夏美が呆れ顔で立っていた。「どうしたの?箸を持ったままボ~ッとしちゃって。」そう言って、不意に私の耳元に顔を近づけ、囁いた。「昨夜はそんなに良かった…?」「え…?何言ってるのよ、もぉ!」「わーい、美香さんが怒った。」吉川夏美は楽しげにそう言って、私の正面の席に座った。「なんで喜んでるのよ、変な人ね。」「あ、まだ怒ってる、ぼ~っとしてたり怒ったり...

  • 時空の旅に出る㉗

    「ここに来る前にLINEしたんだけど、既読にならないから 心配しちゃった。」「あら、ほんとに? ごめ~ん。」いいから入って入って、と上機嫌な由美子に促されて家に入ったが、家の中は酷く散らかっていた。由美子にしては珍しい事だったので、私は少し驚いた。小さな子供がいれば、部屋が散らかっている事くらいあっても不思議ではない。ただ、その散らかり方に、私は少し違和感を感じたのだ。「散らかってるでしょ?ごめんね~...

  • 時空の旅に出る㉖

    車内の時計が17:12を表示している。やっぱり一旦家に帰って、電車で来た方が早かったかな…。途中で、由美子の大好きなシュークリームを買う為に寄ったケーキ屋が、予想外の混雑だったせいで、だいぶ時間をロスしてしまった。やっと、由美子の家の近くにある公園が見えてきた。もうあたりは薄暗くて、公園で遊んでいる子供は一人もいない。公園の脇に車を止めて由美子の家へ急いだ。彼女には来る途中のケーキ屋で、今から行くとLINE...

  • 時空の旅に出る㉕

    私は社員食堂で一人、昨日の由美子の事を思い出していた。ベトナムの土産に目を輝かせ、無邪気に笑う由美子を見ていったい誰が鬱病だと思うだろうか。嘘であって欲しかったが、実際に薬を見てしまった以上、認めざるを得なかった。由美子の旦那は、自分のせいだと言っていた。もちろん、それもあるだろう。そもそも由美子がそんな状態の時に、どうして他の女性に時間を使っていられるのだと怒りさえ覚えた。ただ、私は由美子達夫婦...

  • 時空の旅に出る㉔

    「ベトナムの雑貨ってどれも可愛いわね~、刺繍も素敵!」「あら、このお菓子美味しそう、尚人もきっと食べられるわね~」ベトナムの土産が並んだテーブルの前で、由美子はまるで少女の様にはしゃいでいた。「先輩、いつも気を使って頂いてほんとに有り難う御座います。」由美子の旦那がそう言って、膝の上の尚人にお菓子を持たせた。「それより滝沢君、悪かったね、日曜日は仕事なのに押しかけちゃって。」「この人ったらいつも仕...

  • 時空の旅に出る㉓

    家の近所にあるコーヒーショップで、由美子の旦那と会うことになった。店に入ると、一番奥の席で気まずそうな顔をした彼が、左手でこちらに合図をした。「今日はありがとう…来てくれないかと思ったよ。」「……。」「この間の夜はびっくりしたよ、ほんとに…。」それは、妻の親友に、愛人といるところを見られてしまったからですか?…と言いたかったけどやめた。沈黙さえも煩わしく感じた。「滝沢さん、私はこの前女性との会話を聞い...

  • 時空の旅に出る㉒

    由美子の家ですっかり長居してしまい、気が付いたら夜になっていた。夕飯をご馳走になる代わりに、由美子が赤ん坊をお風呂に入れたり、寝かしつけをしている間、私が尚人の面倒を全面的に引き受ける事にした。「由美子はやっぱり凄いわ!これを一人でやってるなんて。」「大したことないわよ、それより今日は美香がいてくれて助かったわ、 ほんとに、ありがとうね。」由美子は私の肩に飛び付いて微笑んだ。「尚人も随分、美香にな...

  • 時空の旅に出る㉑

    小春日和の穏やかな日曜日、なんと公園の砂場でうたた寝をしてしまった。気が付くと左足が砂に埋もれていた。「ちょっと、美香~?こんな騒がしい場所でよく寝れるわね~」見上げると由美子が呆れ顔で立っていた。「あ~、寝ちゃった~。ごめんごめん。」急いで起き上がると、大量の砂が左足から崩れ落ちていった。「あーぁ、だめだよー おやま こわしたなー!」見ると、3歳児が怒って、私のジーンズを叩いたり引っ張ったりして...

  • 時空の旅に出る⑳

    私は結婚してから暫く、本当に慌ただしい日々を送っていた。挙式を身内だけで済ませてしまったので、日高家の親戚を招待してお披露目会を開いた。お披露目会は無事に終わり、武史はその翌週、海外出張の為ベトナムに行ってしまった。私は暫く、貯まった有休を使い、好きな料理や縫物をしてゆっくり過ごそうと思っていた。そしてなにより、お稽古にも早く行きたかった。結婚式などで忙しかったので、しばらく休んでいたのだ。2年前...

  • 時空の旅に出る⑲

    シンガポールから戻ってきた武史は、私の顔を見るなり抱き付いた。「ただいま、会いたかった…。」武史はそうして私を抱きしめた後、私の顔をまじまじと見つめた。「髪、切ったんだね。」「えぇ、結婚したら切ろうって決めてたから。」背中まで伸びていた髪をトオル君がミディアムボブにしてくれた。動く度に、首元で揺れる緩めのカールが心地よかった。「すごく可愛いよ。」「ふふ、ありがとう…、すぐコーヒー淹れるわね。」そう言...

  • 時空の旅に出る⑱

    トオル君は、私に彼氏ができる度にどんな男か根掘り葉掘り聞いた。それから、

  • 時空の旅に出る⑰

    私の初恋は予想外の形で幕を閉じたが、トオル君とはその後も『お互いに大切な友達』という関係のまま続いていた。暫くすると彼は口ひげの男と別れ、すぐに別の恋人と暮らし始めた。彼は恋人が変わると決まって、紹介したいから来てと私を誘った。そしてそのたびに、恋人と戯れる姿を私に見せつけた。なぜいつも自分の恋人を私に会わせるのかと聞くと、「なぜって、好きな人の事を友達に話したり、会わせたり、 普通、誰だってする...

  • 時空の旅に出る⑯

    トオル君の家は大学から歩いて10分程の場所にあった。ルームシェアにしては、少し狭いような気もしたが、立地条件で考えると、仕方ないのかもしれないと思った。それでも部屋の中は相変わらず整理されていて、お洒落なインテリア雑貨や、所々に観葉植物やドライフラワーが飾ってあった。「美香ちゃん、適当に座ってて、もうすぐできるから。」小さなキッチンで、腰にエプロンを巻き付けたトオル君が、爽やかな笑顔を向けて言った。...

  • 時空の旅に出る⑮

    私はまた、トオル君とメールのやりとりを始めた。大学の話しをすると、『近くだからお店においで』と言ってくれた。私は早速、大学の帰りに彼の美容室に行った。「東京にすっかり馴染んだみたいね。」「そうかなぁ…、でも楽しいよ。」トオル君は、鏡越しに微笑んだ。「美香ちゃんはこっちに住まないの?」「えぇ、だって東京、家賃高いでしょ?それに私、地元が好きだから。」私は都会で一人暮らしなど、したいとも思わなかった。...

  • 時空の旅に出る⑭

    それでもトオル君は楽しそうだったし、彼と裸でいられる時間が何よりも嬉しかったので、私は満足だった。それからも私達は、デートの度に一緒にお風呂に入って遊んだ。そして私は高校2年生になった。月のお小遣いでは足りなくなってきたので、近所のコンビニでバイトを始めた。学校の成績は絶対に落とさないという誓約書を渡して、両親を説得した。トオル君は美容師の腕をメキメキと上げていき、ついにその店のトップスタイリスト...

  • 時空の旅に出る⑬

    トオル君は暫くの間、布団の中でモゾモゾと、私の身体を触ったり、唇を押し当てたりしていたが、突然、布団から出てきて俯いた。「どうかしたの…?」トオル君は少し青ざめた顔で黙っている。「顔色が悪いけど、具合い、悪いの…?」「大丈夫だよ、心配しないで、ただ…。」重苦しい空気が漂う。「私の身体、いやだった…?」私は絶望的な返事が来ないことを願った。「違う…、美香ちゃんはとっても綺麗だよ。」トオル君は、深いため息...

  • 時空の旅に出る⑫

    久し振りに会った彼は、目がくらむほどの好青年になっていた。「美香ちゃん、綺麗になったね。」トオル君は私の髪を梳かしながらさらりと言った。「学校は髪型とか厳しいの?」「全然、成績以外の事は、なんにも言われないわ。」「OK、じゃあ、うんと可愛くしてあげるね。」私はPCで作ったオリジナルカードをトオル君に渡した。「電話かメール、どっちでもいいから頂戴。」「ふ~ん、どうしようかなぁ…。」彼はそう言って、鏡越し...

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