はじめに ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過したが、情勢の基本的構図は変わらず、戦争は長期化の様相を呈してきた。 ただこの戦争で、「冷戦後」というひとつの時代が終わりつつあるようだ。1990年のソ連の崩壊と、アメリカが主導したグローバリゼーションの時代である。この30年は、特に(日本を含めた)「西側」世界にとってはおおむねよき時代であり、テロや地域紛争はあったが、それをのり越えて、自由市場経済と民主主義が行きわたり、世界がより豊かに、そして平和になっていく(はずの)時代だった。 だが、自由と民主化の拡大は思うように進まず、その先導をつとめた米英が世界から撤退する動き(EU離脱、自国ファー…