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  • オフショア・バランシング ― アメリカの外交戦略

    はじめに ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過したが、情勢の基本的構図は変わらず、戦争は長期化の様相を呈してきた。 ただこの戦争で、「冷戦後」というひとつの時代が終わりつつあるようだ。1990年のソ連の崩壊と、アメリカが主導したグローバリゼーションの時代である。この30年は、特に(日本を含めた)「西側」世界にとってはおおむねよき時代であり、テロや地域紛争はあったが、それをのり越えて、自由市場経済と民主主義が行きわたり、世界がより豊かに、そして平和になっていく(はずの)時代だった。 だが、自由と民主化の拡大は思うように進まず、その先導をつとめた米英が世界から撤退する動き(EU離脱、自国ファー…

  • ミアシュマイアーの「対中国・エンゲージメント」批判

    40年にわたるアメリカと中国の関係は、ここ10年で徐々に悪化していたが、次第に加速し、亀裂から対立の様相を呈してきた。(まるで、同居パートナーの不仲が嵩じ、一方が「あれだけ良くしてやったのに、このざまか」、他方が「養ってもらったわけじゃない、あんたもいい思いしたろ?」とののしりあい、互いの荷物をまとめ始めた感じである。) 国際政治のリアリストであるミアシュマイアーの意見を見てみよう。 2014年来のウクライナ危機について彼は、①危機を挑発したのは欧米のNATO東方拡大政策で、②ウクライナを大国間の中立的バッファー(緩衝国)と位置付けるべきだ、と述べていた。この見解は、2022年のロシアの本格的…

  • ミアシュマイアーの「NATO東方拡大」批判論

    欧米とロシアの対立は、2022年2月のウクライナ侵攻で決定的となったが、その亀裂は2014年のクリミア侵攻で生じていた。このときミアシュマイアーは、「NATOの東方拡大がこれを招いたのだ」と批判した。これはプーチン・ロシア側も強調し、現在に続くウクライナ戦争の中心的論点でもあるので、見ておきたい。 以下は下記の論文の引用・要約とそれへの注釈である。これは 2014年3月のクリミア侵攻後に書かれたもので、今から9年前であるが、今回の侵攻後の見解も基本的には変わっていないようである( ”だから言ったではないか” という声が聞こえてきそうだ)。 『悪いのはロシアではなく欧米だ ― プーチンを挑発した…

  • 鶴岡路人『欧州は目覚めたのか』 ― 要旨と注釈

    鶴岡路人『欧州は目覚めたのか』― ロシア・ウクライナ戦争で変わったものと変わらないもの(東京大学出版会『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』2022年8月所収) ロシアがクライナを侵略してから1年になる。バイデン大統領がキーウを電撃訪問し、プーチンが年次教書演説をした。戦況とこれをめぐる国際情勢は基本的に変化なく、長期戦の様相となってきた。世界は、コロナ禍を脱しつつあり、ウクライナ戦争も関心が日常化しつつあるなか、それをめぐる国際情勢の緊張と危険性はむしろ少しずつエスカレートしている。 鶴岡氏(✻1.) のこの論文は、ウクライナ侵攻から半年の時点で書かれ、現在はそれから半年経っているが、その論点はほ…

  • 止めることができる厄災

    コロナへの規制が解除され、気持ちのいい季節になって、世界でも日本でも、街角や観光地に人出が戻ってきた。 コロナはまだくすぶっていて、冬にむかって次の波が心配だが、このままうまくいけば、通常のインフルエンザのようになりそうな気配もある。3年前までのあの日常が戻り、食事や旅行やコンサートに行けるのだ。それは、それまでは当たり前と思っていた平和な日常で、この世界的なパンデミックの中でそれがいかに貴重なものであるか、私たちは体験し、思い知った。 そういう平和な日常生活があっても、わたしたちは多くの難題や宿命を抱えている。地震や大雨などの自然災害はなくならず、地球温暖化でますますその規模は大きくなってい…

  • 冷戦は終わっていない

    「ひとつの地球」は幻想なのか?/ ”冷戦終結・冷戦後”という歴史区分/ 少し前までは「冷戦終結(冷戦終結後)」という歴史区分が定説のようになってきた。1989年のベルリンの壁崩壊とその後のソ連解体により、20世紀の後半を特徴づけた対立が終わり、世界は次の歴史ステージに入ったのだ、と(「グローバル化の時代」の始まりなど)。 だがそもそも、「冷戦」は終わってはいなかったようなのだ。 ひとつは、ロシアによるウクライナ侵攻である。ソ連は解体したが、その混乱から復活したロシアは、過去の栄光の再現を目指す選択をした。終わったはずの冷戦の火種はまだくすぶっていて、再発火してしまったかのようである。 もうひと…

  • ギターノートの移転・お知らせ

    「エッセイ」>「ギターノート」「旅土地の記憶」は、 ブログ『きつつきの宿』に移転しました。 きつつきの宿

  • ゴルバチョフ逝く

    ゴルバチョフ元大統領が亡くなった。その後の過酷な経歴と年齢を考えると、ずいぶん長生きをされたと思うが、親しくしていた人が示唆したように、今のロシアに絶望して生きる気力を失ったのではないか。 悔しかったろうと思う。ペレストロイカとグラスノスチ。ゴルバチョフはその改革によって、西側世界のような自由で民主的なロシア(ソ連)を夢見た。彼が冷戦を終結させた最大の政治家であることは間違いない。 でもそれは、ロシアにとっては敗北でもあったのだ。国民の多くが冷戦の終結を、ゴルバチョフが構想した、ロシアの新生の歴史としてよりも、偉大だったソ連の敗北と消滅の歴史として、胸に刻んでいった。希望よりも失望と屈辱の方が…

  • 「戦争」 ― 本当に悪いものか? 本当に嫌いか?

    ウクライナの戦争も半年近くになって、世界も人々もだいぶ麻痺してきた。 始まったころは、戦争というものがいかに悲惨で許せないものか、テレビの生の映像を見せつけられ、実感した (それでも、もっと悲惨で残酷な現場や遺体は放映されなかった)。私たちは戦争というものを改めて憎み、21世紀にもなってこんな愚かな所業が国連の常任理事国にような大国によってなされることに、衝撃をうけた。 日本では夏になると、原爆や終戦の記念日の季節がやってきて、あの時の戦争の悲惨さや愚かさを取り上げる番組が組まれる。戦没者への追悼式典は年中行事のひとつである。その時刻に黙とうをし、祭壇に花を捧げ、「過ちは繰り返しません」と誓う…

  • ウクライナ ― 冷戦、再び?

    ウクライナの現状 侵攻から半年になるが、ウクライナとそれをめぐる国際情勢は基本的に変わらない。 戦況は、ロシアがキーウ攻略から目標を下方修正していらい、東部と南部の制圧に集中、ウクライナは欧米から武器支援をうけながら抵抗し、持ちこたえている。 このまま事態が長期化し、ロシアがウクライナ東南部を実効支配、ウクライナがEU側にシフト、といった形で戦線が固定化すると、朝鮮半島のように分断が続く可能性もある。あるいはそうならずに、どちらかが優勢になると、かえって戦域と犠牲が大きくなって歯止めがきかなくなるかもしれない。 これをめぐる国際情勢が今後どうなるかは戦況の行方に左右されるが、これまでの既成事実…

  • 歴史 ― それは「過ぎたこと」ではない

    自分が生きてきた時代とはどのようなものだったか、それを「世界」から、また日本という国からも、見ておきたい。それはもう「過ぎたこと」ではある。でも過ぎたことは、過ぎたからこそ変わることのない真実として、そこにある。それは、終わってから初めて読むことができるストーリーでありシナリオなのだ。「歴史」というものの意義はそこにある(History : 記述されたストーリー)。 だが、その「変わらない真実」がどのようなものであり、どんなストーリーであったのかは、はっきりしているわけではない。起こった出来事も、起こったことは確かでも、それがどのような出来事だったのか、見ようとすると様々な姿をしている(芥川の…

  • ロシア軍の失敗の本質

    ・Newsweek:グレン・カール:「ウクライナで苦戦するロシア軍、その失敗の本質」 (2022.5.21) 以下、その要約。 ・民間人を標的とするのはロシア軍の伝統的ドクトリン。・チチェン、シリアでは、爆撃で民間人もろとも都市を破壊するという手法が成功。・電撃的に制圧し、残虐さや恐怖で威圧して征服。・“戦争犯罪”など意に介さないどころか、「名誉称号」の対象。 ロシアの軍事文化は貴族社会で発展したもので、自国の農民(=農奴)も使い捨ての駒にすぎず、ボルシェビキもスターリンも残忍に扱った。自軍の犠牲も厭わないのだから、敵国の民間人には人権もないのである。 敵対や反抗には何倍もの報復と強迫で屈服さ…

  • 冷戦、再び

    冷戦中、冷戦後と、西側で中立的立場を貫いてきた北欧の2か国がNATOへの加入を申請した。ロシアと国境を接するフィンランドは、ロシアを警戒しつつもそれなりの関係も維持してきたが、完全に背を向けた。スウェーデンは2世紀におよぶ中立を転換した。(二人の女性首脳が、牙をむいて威嚇する熊に決然たる姿勢で対峙するような姿は、カッコいい。) 大戦前から中立的立場を保持してきたスイスも西側に動いた。分解の危機にあり、”脳死状態”(マクロン)と自嘲されていたEUは、アメリカとともにかつてなく結束を強化している。 バルト海をぐるりと囲む北欧2か国のNATO加盟は、ロシアへの強烈なパンチだったのではないか。これがウ…

  • それはこのような戦争になった

    プーチンは「ネオナチに対する特殊軍事作戦」と称してウクライナに侵攻した。 だが、一般市民を無差別に攻撃すればするほど、それはウクライナ国民全体に対する攻撃ということになる。ミサイルであらゆるところを破壊し、市街地も病院も容赦せず、町をかたっぱしに廃墟にするということは、保護するはずのロシア系住民も含め、ウクライナの土地に暮らす人々を無差別に敵とみなして殺す、ということを表明しているのである。学校や避難所を爆撃して供たちを攻撃するということは、これからウクライナを担う子供たち、そしてその子供たちが生み育てるであろう未来の子供たちをも、全て敵とみなすということである。無抵抗の市民を背後から撃つとい…

  • 司馬さんのロシア論

    勢古浩爾さん(『定年後』シリーズでファンだったが)の『バイデン発言はなぜ批判される? 素人にはなにが悪いかわからない』(2022.4.6;JBpress)を読んで、賛成! 痛快!と思ったのだが、『ロシアの暴虐に見る精神と歴史の闇』(2022.5.4;JBpress)も、とても面白かった。そこで取り上げられた司馬遼太郎の『ロシアについて』に興味を持ち、入手して読んでみた。 私も司馬さんが大好きで、この何年かは『街道を行く』シリーズにすっかりはまっていた。街道の地図を見たり、そこに出てくる書を読んだりしながら、まるで司馬さんと同行するように、各地の街道をたどっていくのが楽しい。街道シリーズにはロシ…

  • ゆで卵の作り方

    「少ない水で短時間にゆで、殻をきれいに向く」ーがポイントです。 ①~③はネットで調べて知った方法(どなたか忘れましたが感謝!)で、 ④~⑥は私の工夫です。 ① 底の平たい小鍋に水を1~2cm入れ、卵を置いて(フタをしないで)煮る。 (卵は1個でも2個でも大丈夫。) 😊水がたったこれだけでいい、というのが驚きでした。 ② 沸騰したらフタをして弱火で3分。③ 火を止め、フタをしたまま5分おいたら出来上がり。 😊これ以上フタをしたままおくと黄身が固くなる。 黄身が鮮やかな黄色で、かすかにトロッとした感じが5分なのです。 ④ 水に1分ほどつけて冷やす。⑤ 果物ナイフの背で殻をたたいて全体にヒビを入れ、…

  • 少年の故郷

    その世界は蜃気楼のように消えてしまったけれど、それがあった土地(空間)は、それだけの大きさをもたまま、まだそこにある。 その時代そこにあった世界は、そこを去った後、少しずつ形を変えていった。建物は古び、取り壊され、更地になった。新しい道路ができ、たんぼや畑は宅地になり、新しい建物ができ、元の世界は少しずつ、あるいは一挙に姿を変えていった。半世紀も経てば、かつての世界の輪郭は、まだ残っているだろう山や川から想像するしかないのだろう。 そこに行ってみたい気持ちはある。知っている人々はほとんどいなくなってしまったが、山や川は生きていて、命をつなぎながら、まだそこにあるだろうからだ。 でも行かないほう…

  • 「誰の」戦争か

    プーチン政権の支持率が8割を超えたとのこと。✻1. この数字は国民にも公表されたのだろう。つまりウクライナ侵攻は、単なる”プーチンの戦争”ではなく、国民の圧倒的多数が支持する「ロシアの戦争」になってしまったわけである。その責任は国民も背負う、ということになる。 古代や中世の王なら、戦争は自分たちの戦争であることを自覚し、(国民というものはまだほとんどなかったから)平民は、「あ、またやってるな」という感じもあったろう。関ケ原の戦いも、農民たちは丘のあぜ道に座って飯を食いながら見物していた、なんて話を聞いたことがある(好きな話だ)。王侯や貴族や武士は、特権や富を持つ代わりに、戦争も自分たちの生業と…

  • ”プロパガンダ” vs ”プロパガンダ” ― どちらが正しい?

    対立している両方が、「向こうは(誤った)プロパガンダに染まっている」と言っている。こうなると、どちらが正しいのか(真実に近いのか)、どう判断したらいいのか分からなくなってくる。 でもそれを判断できる条件が一つある。それは「言論の自由」があるかどうかだ。 言論の自由がある側は、多様な見解、批判的な見方、別の観点、複数の検証方法などが認められていて、人々はそれを吟味し、付き合わせ、議論する。政府の公式見解や政策が決まっても、人々は批判したり反対したりすることもできる。公的な場で議論をし、それが妥当かどうかを決めなおすことができる。個人も、どのような見解でも、他者の権利を侵害しなければ、公表すること…

  • 核で恫喝する常任理事国

    ウクライナ戦争の悲劇的な現状は、核をもつ常任理事国の暴走を世界が止めることができない、ということだ。 プーチン政権は核で恫喝している。バイデンのアメリカは早々と非戦を宣言してしまい、欧州も恐る恐る武器援助をするまでだ。 核を持たない非常任理事国なら、国際社会は、クウェートを侵攻したイラクに対するように対応しただろう。国連で承認し、多国籍軍を作り、武力行使をする。 ところがロシアは常任理事国だから、国際的な合法性を担保する唯一の場である国連で審議することさえできない。しかもその政府や軍は、国際社会の最高機関の地位にいながら、武力を行使する際に公が守るべき節度や自制を欠き、自由や民主主義や法の支配…

  • 中南米のギター ― 人種のるつぼ

    〔ギターノート 2〕 日本でクラシック・ギターが流行り始めたのは1970年代だろうか。その頃のレパートリーはスペインを中心とするヨーロッパ大陸のものが主で、中南米はおおむね傍流か、ポピュラー音楽の「ラテン」に近い扱いだった気がする(そのころ全盛だったボサノバがそうだ)。 でもいろいろ探してみると、中南米にはとても豊かなクラシック・ギターの伝統があり、それがブラジル、アルゼンチン、キューバ、メキシコ、ベネズエラなど、それぞれの国でも多彩な展開があった。これをろくに知らなかったのはうかつだった(メキシコのM・ポンセやブラジルのヴィラ・ロボスなどはちょっと知っていたが)。 アメリカ大陸のそれらの国々…

  • マヌエル・ポンセの「エストレリータ」

    〔ギターノート 3〕 ラテンの人たちがアメリカ大陸にやってきて何世紀かが過ぎた。「いく時代かがありまして、茶色い戦争もありました。」(中原中也)何世代もの開拓のあと、高原や山あいに平和で静かな町ができた。長い夏の一日が終わり、農夫たちは家路につく。森と山の黒いシルエットを背景に夕暮れの濃紺の空が広がり、小さな星が二つ、三つ、またたいている。麓の家々に小さな灯りがともり、妻が夕餉の準備をしている。テラスには酒もある。疲れた男たちの足も速くなる。若者たちの姿がない。まだ片付けがあるなどと言って残り、丘の木陰に恋人同士で肩を寄せ合って座り、この星を眺めているのだ。 マヌエル・ポンセの名曲「エストレリ…

  • セリエ・アメリカーナ

    〔ギター・ノート 11〕 ヘクトル・アジャーラ「セリエ・アメリカーナ」 この曲を知ったのは、福田進一さんの名盤:JONGO(1996年)である。中南米の佳曲を集めたこのCDの中で、ピアソラやポンセの間に埋もれた地味な曲と思っていたが、そのいくつかのメロディー、特に『プレリュード』が頭から離れなくなり、またその構成やアイデアが面白いので少し調べてみた。 この曲は演奏会のレパートリーとして取り上げられることもあるようだが、楽譜が絶版のままということもあり(幸いネットで入手できるが)、やはり地味な扱いのようである。でも私にはなかなかの名曲・名作に思える。実際に譜読みをしながら弾いてみてそう思ったのだ…

  • トロイロとアリアスの「スール(南)」 ― ノスタルジーとユートピア

    〔ポンページャ〕 〔ギタノート 10〕 プロローグ/ アルゼンチンタンゴの名曲:『スール(南)』(ギターアレンジ版)について。 これもビラダンゴスの名盤『タンゴ・アルゼンティーノ』で知った。だがこの曲については作曲者がアニバル・トロイロという人であること以外、何も知らなかった。美しい抒情的なメロディとビラダンゴスの名演奏、そして「南」という素晴らしいタイトルで、“まだ見ぬ南国の理想郷への憧れ“、”かつて暮らした南の故郷へのノスタルジー”のようなものを自由に想像しながら聞き、それで十分だった。 このギター譜を偶然ネットで見つけた。アレンジャーのアニバル・アリアスが楽譜を公開してくれていたのだ。少…

  • 想いの届く日 ― K・ガルデル

    〔ギタノート 9〕 ピアソラとともに、アルゼンチンタンゴのギター曲で重要な人がカルロス・ガルデル(1890-1935)だ。 二度の世界大戦にはさまれ、平和な期間は短かったが、現代文化が狂ったように花開いた時代。その申し子のように華やかで短い人生を駆け抜けた。F・カナロとともに世界各地を演奏しながら、タンゴに「歌」というジャンルを確立し、アルゼンチンタンゴを世界に広めるのに貢献した。 アルゼンチンタンゴは、地方都市の港町の酒場から都市の劇場へ、国境を越えてヨーロッパの社交界へ、そして新しく登場した映画のスクリーンへと、大きく世界に羽ばたいていた。その活動の絶頂期、作詞家レ・ペラとともに飛行機事故…

  • ピアソラ賛歌(続) ―『 最後のグレラ』

    〔ギタノート 8〕 ピアソラの『La Ultima Grela(最後のグレラ)』のギターアレンジ版を練習。この曲は、たまたま買った Victor Villadangos というひとの ‘Tango Argentino’ というCD(✻1)で聞いて、すっかり好きになっていた曲だ。最近この楽譜をようやく入手した。アレンジは Pepe Ferrer という人。とてもいいアレンジで、私でもなんとか弾けそうなのがうれしい。 この曲名は英語で ’the Last Woman‘ で、さっぱり意味が分からなかったが、ネットでこの曲についてのいい解説を見つけた。「グレラとは夜の街で働く水商売の女たちを表すアルゼ…

  • ピアソラ賛歌

    〔ボカの石畳〕 〔ギタノート 7〕 西欧によるアメリカ大陸への進出は、北米と中南米でかなり異なる歴史をたどった。その違いは、時代や風土もあるが、民族の違いが大きかった。特に音楽は民族性が反映される。北米はアングロサクソン系が中心となり、これにアフリカ系が加わってジャズなどを生んだ。中南米はラテン系が中心で、それにインディオやアフリカ系の血が混交し、複雑な地形と風土を背景に多様な流れになった。キューバではレゲエやサルサ、ブラジルではサンバやボサノバ、アルゼンチンではタンゴといった民族音楽が生まれた。 南北アメリカは、北はガーシュイン、南はピアソラという、巨大なヨーロッパの音楽に負けない「新世界」…

  • アナ・ヴィドヴィチさんのコンサートの想い出

    〔ギターノート 6〕 前の記事で、近年は女性ギタリストが活躍していると書いたが、趣味のギターを再開したころ、何十年ぶりかに行ったのが、アナ・ヴィドヴィチさんのコンサートだった。 クラシック・ギターのコンサートはもともとあまり多くないが、私が住んでいる九州では日本の演奏家のものも少ない。そこにこんな国際的演奏家が来ていただけるというので、すぐにチケットをゲットした。 私がこの美しきギタリストを知ったのはユーチューブでだった。そのころはアントニオ・ラウロの曲などを華麗に弾く映像がアップされていた。イシンバエワに似たきりっとした美貌と端正でなめらかな演奏で、すっかりファンになっていた。ラウロという魅…

  • 「枯葉 」~ Yenne Lee

    〔ギターノート 5〕 前回の記事『カーニバルの朝』は Han Eun(ハン・ウン)さんの演奏がきっかけだが、今回は Yenne Lee(イェン・リー)さんのユーチューブ演奏『枯葉』から。 韓国の女性ギタリストは、このような憂いあるメロディーを歌うように弾くのが上手だ。イェンさんは自らアレンジもしている。 この名曲には多くのギター・アレンジがある。もう半世紀も前、私が学生時代に愛用していた本橋正人さんのアレンジはとてもおしゃれで、いまでも第1級だと思う。(『ギター・スクリーンアルバム』水星社)。 今回聞いたイェンさんのアレンジは、それいらい出会った中でもとびぬけていて、極めつけという感じ。前半、…

  • バーデン・パウエルの「カーニバルの朝」

    〔ギターノート 4〕 ユーチューブで、Han Eun(ハン・ウン)さんという韓国の女性ギタリストが演奏した「カーニバルの朝(Manha de Carneval)」を聴いた。素敵な演奏だ。 この曲は、映画『黒いオルフェ』のメインテーマ曲で、映画も歴史に残る名作だが、音楽を担当したルイス・ボンファとアントニオ・カルロス・ジョビンの素晴らしい曲が随所で流れる。Han Eunさんが弾いているのは、バーデン・パウエルのアレンジによるものだ。 B. パウエルは、60~70年代のボサノバ・ギターを代表する一人で、日本でも人気が高かった。彼はこの曲がお気に入りだったようで、いくつものアレンジで弾いていた。Ha…

  • ギター再開 ― 小林隆平さんのこと

    〔エクアドルの町〕 〔ギターノート 1〕 はじめに クラシックギターが趣味で、ただ弾いて楽しんでいる。教室にも行かず、好きな時に好きな曲を弾いて、飽きたら次の曲にを繰り返し、ぐるぐる回っている。自由気ままが好きで、人前で演奏するのも苦手だ。(だからほとんど進歩しない。) もう少し外に出て、人とも接触したいなあと思い始めたころ、新型コロナで世界が一変してしまった。コンサートや旅行に行けなくなったのは残念だが、閉じこもりの生活はあまり苦ではない。この機会に、ただ弾くだけだったギターについて、エッセイも書いていくことにした。 音楽は、歌い、弾き、聴くことで完結し、それが終われば消えてしまう。音が鳴っ…

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