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商店街のパン屋
訪れたのは春まだ浅い3月 アーケードのある商店街に昔からあるパン屋さんです。 この場所に老舗のパン屋さんがあることは 知っていましたが、通りがかりに薄暗い店内に陳列してあるパンを のぞき窓からチラチラ眺める程度でした。 硬いパンが評判と聞きました 硬いパンとは珍しい いつか...
2024/06/12 20:00
ある侍女の告白 其の弐 彦星
織姫の父である天帝さまから呼び出しがあり、 ぎゅっと心臓を掴まれたような心持ちになった。 身に覚えがある…ありすぎる うまくやってきたつもりだが、天帝さまの目は誤魔化せなかったか? 仕方ない…重い足取りで呼び出しに応じた。 ある侍女の告白 - この町内の片隅から 『ま...
2024/06/08 19:35
呪縛
その名を聞くと誰もが 『ほぉー!』 と感嘆の声を上げる、県内トップクラスの進学校に通う息子さんのことで 年下の友人から連絡がありました。 登校しようとすると身体に不調が現れるらしいです。 学校に行けないケースは一括りにできません。 似たように見えても、それぞれ事情が違います...
2024/06/06 20:05
ある侍女の告白
『もう決めたの。7月7日が過ぎたらお父さまに頼んでみるわ。 …あぁでも7月7日まで1ヶ月もある。 うんざりだわ。明日にでもお願いしてみようかしら』 わたしが、彦星さまと引き裂かれた織姫さまのお世話をするようになって 何年経ったでしょう。 泣き暮らしていた織姫さまが徐々にお元...
2024/06/02 19:20
黒猫
スーパーの裏口で真っ黒い塊を見つけハッとしました。 (驚くことはない、ただの猫の塊だ) なんだ、猫だったのか そろそろと近づきましたが、逃げるでもなくジッとしています。 (それは何というものだ?その小さい四角いもの。 四角いものに目をやりながら歩くヒトをよく見かける) スマ...
2024/05/29 20:01
チーズケーキ
うろうろしているうちに、自分が何処から来たか分からなくなりました。 焦って闇雲に進んでみても、地下鉄の駅に辿り着けません。 寂れかけた商店街の中程に、こぢんまりとしたパン屋さんを見つけたので 道を尋ねようと中に入りました。 4、5人も入ればぎゅうぎゅう詰めになりそうな小さな...
2024/05/25 19:50
グレーテルの野望
たった今、パンの焼き具合を確かめる魔女を蹴り上げ、 真っ赤に燃え盛るカマドにぶち込んでやった 渾身の力で扉を閉める。 『ギャーーー!』 この世のものとは思えぬ恐ろしい叫び声 仕方ない ヤらねばヤられていた タラリと伝う汗を乱暴に拭って息をついた 〜〜〜※〜〜〜※〜〜〜※〜〜...
2024/05/19 21:35
扉
最後の講座が終わったあと、 ひとりひとりに『無料占い券』が配られました。 いつだったか、手相占いの講座に通ったときのことです。 講座は終了したものの、核心に触れる内容に達したとは言えず、 特に得たものも無く (これで終わりなのか?)肩透かしを食らったような最後に配られた 『...
2024/05/17 20:01
ハハの日という日
『はい、これ』 頼んだ買い物の中から、息子がごそごそ取り出したのは 『カーネーションと淡い色合いのタオルというか?手拭いのセット』でした。 5〜6年前の母の日のことです。 何でも揃う遠くのスーパーまで、車で買い物を頼みました。 『なにこれ?頼んでない』 『きょう、母の日らし...
2024/05/13 19:48
連休
『来る?』 連休前に息子Aに聞いてみました。 しびれを切らしたころ、やっと届いた返事は 『忙しいでムリ』 ふうふうと途中まで膨らみかけた風船が、ポロッと口から落ちて シュルシュルと萎んでいくのを感じました。 小さくペチャンコになった風船をポイっとゴミ箱に捨て、 (がっかりな...
2024/05/10 20:00
若葉のころ
若葉のころでした。 何通かのダイレクトメールと一緒に一通のハガキが届いたのは… クルッとひっくり返すと真っ白いハガキいっぱいに大きく、 『ヒダリ』 誰が送ってきたか分かりません。 何のことだろう? 何処から届いたのだろう? 気になりましたが、日常に紛れ、妙なハガキのことは忘...
2024/04/27 19:30
小説8050
緊張が走って、ハッとして 脳裏が真っ赤になるくらいの悔しさが伝わってきて、 耳をつんざく音がした。 すこし安堵したり、またハラハラしたり。 息を止めて思わず目を瞑った。 息を整えてからまたページをめくり、ホッとした。 そうきたか! そうして少しだけニヤリと笑えた 泣きそうに...
2024/04/25 20:49
ビフォーアフター
2月上旬の画像 濃い桃色を思い浮かべながら撮りました 最近の画像 時季を逃してしまったので、緑の葉っぱ混じりになってしまいました この駐車場の片隅を濃い桃色に染める『花桃』です。 名所でも何でもありません。人通りも少ないこの場所に咲く花を 気に留める人も居ないと思いますが、...
2024/04/22 19:55
花火
『こちらです。どうぞ』 枯葉色のドアを開け、中に入る不動産屋さんに続き、 半畳ほどの狭い三和土に立ちました。 1Kの部屋全体に立ち込めるムッと異様な匂いに、 暫し言葉を失くしました。 20代前半の頃、実家を出てひとり暮らしをするため、 駅近の手頃な部屋を探していた時のことで...
2024/04/19 19:56
フェンス越しの線路
誰かに言いたくて仕方なかったのかもしれません。 『浮気』 『不倫』 『相手はシングルマザー』 『探偵事務所』 『弁護士』 『慰謝料』 … 一旦口火を切ったら、歯止めが効かなくなったのでしょう。 怒涛のように聞きなれない言葉が次から次へと 耳に流れ込んできました。 時には静か...
2024/04/15 19:58
ジュリアーナ
『ふふふっ』 天から声が降りてきた? それとも幻覚なのか? ダイジョブ?…自分 薄手のカーテンでシャッと仕切られただけの四角い箱、 靴を脱いで上がったここは大きなショッピングモールの片隅にある試着室です。 試着室に引っ掛かっているS字フックに、細い足をぶらぶらさせて座ってい...
2024/04/13 19:59
壱億円
『財布の中にある一番高額な紙幣を取り出してください』 (え!何が入ってたっけ?) ごそごそ探ると、奇跡的に紙のお金が数枚入っていました。 千円札を大事に取り出して目の前に置きました。 『では、紙幣の真ん中からやや左を左の親指と人差し指で挟み、右側は右手の親指と 人差し指で同...
2024/04/08 19:21
車内にて
電車の扉がプシューと開きました。 ホームには2人の駅員さんに付き添われた車椅子の男性。 大柄でガッチリした体格の方です。 車椅子ごと乗車するのだろうか?やや緊張しながら待ち構えていましたら、 乗車口の手前でよろよろと車椅子から降り、おぼつかない足取りながらも1人で乗車 され...
2024/04/04 19:35
乗車前
駅の券売機でTOICAにチャージしようとしました。 2台ある券売機の前には、どちらも数人が並んでいます。 片方に並びました。 春休み中の中高生くらいの女の子3人が券売機の前で固まっていました。 様子を窺うと、直ぐに切符を買うでもなく、何となく行き先を決めかねて 顔を寄せ合い...
2024/04/02 19:36
海
あんな些細なことで怒るなんて思わなかった。 考えなしに言葉を発した自分がわるかったのだろうか? 喉元まで込み上げる塊をグッと飲み込んだわたしは、 上下の取り合わせも何もなく、手近にあった服にサッと着替え、 財布とケータイだけリュックに押し込んで、黙って外にでました。 行くあ...
2024/03/26 19:40
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