自作小説(BL中心、一般ファンタジーなど)を連載しています。 kindle作家天瀬由美子の個人ブログになります。 june世代の作風で、長編が得意です。 よろしくお願いします。
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翌朝。アルシュは頭を抱えていた。(どうしよう) 昨夜の自分とウーディの痴態を思い出して、恥ずかしくなる。 エラルドの王子であり、鎮守神ドラゴンの加護のある〈聖母アルシュ〉であるかれが、あろうことか真っ裸に近い姿で新婚の夫に抱えられ、浴場から部屋へ戻ったのである。彼らが浴場で何をしていたかはその姿を見れば一目瞭然だった。 現場を目撃した術者たちから、そのことは既に里全体に広められてるはずである。(...
アルシュは急いで裸になり、薄暗い岩風呂に身を投げだした。 肩まで湯につかり、体の芯から温められる感覚に満足したように息を吐きだした。「うーん。気持ちいい。最高だ」 口元が緩んでくる。 かれは目を閉じて開いて、また吐息をついた。 丸太を組んで作った屋根と囲いはあったが、基本的にそこは野外であり、森の一部分だった。星空が見え、真っ黒な森のシルエットが夜闇の向こうに感じられる。冬にさしかかろうとする季...
「わあ」 アルシュは口をぽかんと開けた。 はぐれ者たちの里。あるいは魔法使いたちの里と呼ばれるそこは、確かに住む者が自慢してもおかしくないほど美しかった。 少し前まで殺風景な岩山でしかなかった場所に深い森と清涼な泉がある。 そして森の緑に溶けこむようにしてある古い石造りの家々。あたりは静謐に包まれていて、ほんの小さな音でも遠くまで響いてしまいそうな雰囲気だ。エラルドの雑多な、大勢の人間が活動する騒...
秋から冬にさしかかろうとする晴れた日だった。 エラルドから“はぐれ者たちの里”へ向けて、使節団が出発した。エラルドの人族から十一名、ムフーの獣人から五名、案内役の魔法使いが二名、そして〈聖母〉アルシュと獣人族の若長ウーディの総勢二十名の一団だった。 使節団の目的は魔法使いたちとの友誼を深め、彼らの提供してくれる魔法の視察と今後の援助について話し合うことである。けれどもアルシュはすました顔で馬に乗り...
「どうだ。“はぐれ者たちの里”の魔法使いどもと上手くやれそうか? エラルドは連中と協定を結ぶことにしたんだろう?」 ひと月後、ウーディは温めなおしたシチューをうまそうに食べながら言った。アルシュはウーディの食べっぷりが面白くて、椀が空になるとすぐシチューをつぎ足す。山のようにあったパンも見る間に減ってゆく。一日中、山を歩き回っていたウーディは余程、腹が減っていたようだった。「まあね。多少もめてるけど...
アルシュはレザックをおんぶしながら、ポポの祭壇に向かっていた。 そこは“天上に連なる山々”にあり、人々が鎮守神ドラゴンのポポに供え物をしたり、重要な取り決めの報告をしたり、日々の暮らしの平穏を祈ったり、感謝するための場所であった。 エラルドの王族は慣例として、大きな儀式の際、ポポの祭壇に足を運ぶ。 今年の早春、アルシュも十六歳の成人の儀を迎えたので、生贄の女鹿を捧げに行った。またその少し後には、ポ...
「呼び出してすまなかったな」 兄ワルムが王宮に現れたアルシュを迎えながら言った。集落の家にいたアルシュは早馬の報せを聞いて、レザックをまわりの者に預け、取るものも取り敢えずエラルドにやって来たのだが、まだ状況をのみこめてなかった。「いったい兄上、何が。魔法使いたちが来たって本当ですか」 かれは王宮内の人々がざわめいている雰囲気を感じとって、緊張した面持ちで聞いた。ワルムが渋い顔で答える。「今朝、現...
エラルドの人族には昔から、生まれながらに魔力を持つ者がたまにいて、その者たちが人々の暮らしを助けてくれていた。 魔法とは便利なものだ。 人々が魔法と聞いて、一番先に思い浮かべるのは癒し人だったが、彼らはあらゆる病気や怪我を治療する。もっと弱い魔力しか持たない者は薬師となって薬草から薬を作ったり、“スネークオイル”と呼ばれる万能薬を作ったりする。 その他にも出来ることはたくさんある。 斧やナイフにま...
「真実の――」 korokoro ◇ 少年時代のアスランにとってパトリック・ザラという人間は少し怖い、どちらかといえば、近寄りがたい存在だった。 パトリックは母レノアが愛した男であり、アスランの父親である。 だが、アスランにはパトリックに愛された記憶があまりない。 プラント創設期にかかわり、最高評議会議員として若い頃から立ち働いていたパトリックは忙しく、普段...
テオスは部屋を出て、王宮内の奥庭にある東屋にアルシュを誘った。 壁と屋根で遮られた室内は昼間でもどうしても暗い。テオスの身分ならろうそくの灯りを好きな時につけることが出来たが、原料となる蜜蝋や獣脂は貴重品であったので、エラルドでは灯りは夜間の数時間しか使わないのが普通である。だから天気が良い日はよほど部屋にこもらなければできない仕事でもしてない限り、人々は外に出る。「アルシュ様、お久しぶりです」...
「あらあらあら。あなた、陛下、アルシュがレザックを連れて来てくれましたよ」 エラルド王妃サーニャが弾んだ声をあげた。彼女は侍女に案内されて王と王妃の居室に入ってきたアルシュと大きな荷物を持った従者のカズトを見るなり、スカートをたくしあげていそいそと寄って来た。「どうしたの? 急に。顔を見せてくれるのは嬉しいけど。レザックはご機嫌よさそうね。こんにちは。小さな王子様。今日も可愛いわね」 サーニャがア...
不安というものは常に人の心につきまとう。 アルシュはレザックを抱いて、自宅の裏庭のベンチで日向ぼっこをしながら、そんなことを考えていた。 今のかれは幸福だ。毎日も充実している。レザックを妊娠していた頃の、そのまま臨月を迎えてしまえば出産によって命を失ってしまうかもしれないという恐怖と緊張に比べれば、夢のように平穏な暮らしである。 とは言え、その代わりのように、忙しい。 これまで前例のなかった色々...
困惑した息遣いが、淫らな喘ぎになるまで時間はかからなかった。 アルシュはウーディを体の奥深くに受け入れて、その場所から広がる容赦ない快感にわなないた。「あ……あぁ――ん……ふっ――」 甘い痺れに包まれる。かれのそこは増々、熱を持ち、さらなる刺激を求めるように悶えはじめる。勿論、ペニスもとっくに勃起していた。 ウーディはアルシュの姿を愛おしげに見つめ、後ろから突きあげた。「俺の可愛い、アルシュ。お前は俺の...
エラルドの王子アルシュは途方にくれていた。 生まれて三か月になる息子レザックが、アルシュのはだけた胸をまさぐっているからだった。乳児に授乳する母親(男)。その光景自体は本来、微笑ましいものだ。けれども妊娠時代からの影響なのか、レザックのちいさな手でその部分を執拗に触られると、アルシュの下半身に甘い痺れが走ってしまう。 レザックは母親の当惑など気にせず、赤ん坊の特権と言わないばかりに顔を寄せ、乳首...
闇があった。 そこはどこまでも広がりが続く、空と地面の境すらない世界だった。いや、はるか遠くの、永遠の時空をこえた先の空のほうだけがうっすら青白い。また歩くと、足の動きにあわせて波紋のような円が広がってゆく。 男はそこにいた。 深淵の底と呼ばれるその場所を住処にしてから、地上ではどれくらいの年月が流れただろう。男の肉体はとっくに滅びて、精神だけが微睡みの中にいたが、少し前からかれは目覚めていた。...
~作成中~...
遠くで自分を呼ぶ声が聞こえた気がして、アオイは目を開けた。 朝だった。 時計を見ると、目覚めなければならない時間より少し早い。だが、既にカーテンの下からは陽光が漏れていた。(あ……俺は――俺たちは――) スイートの寝室の天井が見える。あれだけひしめいていたゴーストたちの姿は消えていて、リコやトゥーリオの気配も感じられない。あたりはしんとしていて、部屋にはアオイとセラしかいないようだった。「セラ。無事か...
それは淫らで不可思議な一夜だった。 セラとアオイはベッドの上でもつれあっていた。もしその様子を見る者がいれば、彼らは日常のセックスを楽しんでいるようにしか見えなかっただろう。だが、そうでありながら、けしてそうではなかった。彼らの肉体には異質なものが入り込み、部屋には彼らのセックスを見守る大勢の幽霊たちがいる。「あぁっん! あ……う――ひッ……あぁ……」 アオイはセラに貫かれて体を揺らしながら、まわりのゴ...