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名探偵は要らなかった?『パノラマ島奇談』
本作『パノラマ島綺譚』は、江戸川乱歩としては長目の中編、奇想天外のある方法で無人島に自身の芸術の粋を集めた「パノラマ島」を築いた狂気を描いたものだ。ミステリーとしてはその「方法」...
2023/04/30 14:06
人間の物語か荒野の物語か『荒野の呼び声』
本作、ジャック・ロンドンの『荒野の呼び声』は、何度か映画化されているし、確かアニメにもなっていたはずである。それなりに有名であることは知っていたし、原作があることも知っていた。た...
2023/03/18 16:23
『政治学入門』という名の現代の『君主論』
本書『政治学入門』は、わずか100頁ほどの小著であるが中身は濃い。「政治学」とあるが政治そのものについての本であり、「入門」とあるが教科書的な入門書ではなく著者の信念がこもってい...
2023/02/18 18:48
モノの消滅、人の消滅『密やかな結晶』
本作『密やかな結晶』は、当代一流のストーリー・テラーである作者の比較的初期の作品である。少し前にブッカー国際賞の候補になったのは、作者の作品としては珍しく社会目線が強い作品である...
2023/01/21 18:38
ビッグ・データは信用できない?『ダークデータ』
統計処理や計量経済学のようなデータ分析を扱った本は数多あるが、ありそうでなかったのが本書『ダークデータ』のような、処理や分析の対象となるデータそのものを扱った本だ。ダークデータと...
2022/12/17 20:27
動物の性と人間の性『失われた名前』
本書『失われた名前』は、幼くして南米コロンビアのジャングルに置き去りにされ、「サルとともに生きた」女性の自伝である。「サルとともに生きた」とは副題の言葉であるが、実際、半ばサルの...
2022/12/03 17:10
「本の都」と浮世の間『シルヴェストル・ボナールの罪』
本作『シルヴェストル・ボナールの罪』は、作者アナトール・フランスの出世作ということである。主人公のボナール先生は中世修道院の歴史を研究する老学士院会員、そして本に囲まれ古書の目録...
2022/11/05 17:03
本当に自由な生き方とは『村に火をつけ、白痴になれ』
本書『村に火をつけ、白痴になれ』は、無政府主義研究者である著者による伊藤野枝の(きわめて軽い文体による)評伝である。野枝については大杉と共に『科学の不思議』で触れたことがあるが、...
2022/10/15 21:27
犯罪心理と裁き手の心『殺された天一坊』
本作『殺された天一坊』は、探偵小説の古い小品。作者の浜尾四郎は検事から弁護士に転じた身で、かつては犯罪心理を研究していたという。現在でも専門家がその筋の作品を書くということはある...
2022/09/24 20:45
スポーツと社会の裏表『スポーツルールの社会学』
本書『スポーツルールの社会学』は題名どおり、スポーツの歴史や社会との関わりを主にルールの側面から俯瞰した小著である。近年のスポーツの変質を嘆くあまり、妙なところに力こぶが入ってい...
2022/09/03 20:50
日本的精神が生む受動的全体主義の悲劇『特攻』
本書『特攻』は題名の通りあの特攻、すなわち死を前提に敵艦に突っ込んだ「特別攻撃隊」について書かれたものだ。特攻に関する文献は本書でもいろいろ引かれているように多数ある。その中で、...
2022/08/14 01:18
「クオリティ」の哲学『禅とオートバイ修理技術』
奇書好きの管理人にとって外せないのが、本書『禅とオートバイ修理技術』だ。題名からして奇異であるが、何やら哲学やテクノロジー論と関係したものらしい。そもそも管理人が本書の存在を知っ...
2022/07/30 20:51
地球温暖化でイーハトーヴを救え!『グスコーブドリの伝記』
本作『グスコーブドリの伝記』は、宮沢賢治の童話。内容をつづめれば、主人公のブドリが、貧しい少年時代からの苦学の末、クーボー大博士に見込まれて火山局の技師となり、ついには科学技術の...
2022/07/16 20:10
隠れた哲学パラメータをえぐり出す『100の思考実験』
本格的な哲学や倫理学は取っつきにくい。一般向けの本を書いてもあまり売れないだろう。そもそも書くのが厄介だ。しかし、思考実験を持ってくると、話は変わってくる。本書『100の思考実験...
2022/07/02 22:00
小津映画ばりの超絶モノクローム小説『桑の実』
管理人はそれほど起伏のない小説も好んで読むのだが、本作『桑の実』には驚かされた。本当に何も起こらない。起こらないどころか、何か起こりそうなところをあえて抑え込んでしまうような徹底...
2022/06/18 17:13
全体主義から共産主義を経て権威主義へ『隷従への道』
本書『隷従への道』は、著者ハイエクの主著の一つ。自由主義や民主主義が全体主義へと「隷従」していきかねない思想と社会の動きに警鐘を鳴らしたものだ。本書の出版は1944年、第二次世界...
2022/06/04 18:36
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