遺言

遺言

と或る人気を博した画家の遺書に曰く、 魂とは 幽玄にして無限である、 また絶え間もなく悪徳に頽廃美を夢み乍ら、 その本性は性懲りもなく無垢である‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ また公に 遺 ( い ) う、 創作を止めるな、生きるなら 死んで堕ちてゆこうとも何の係わりも無し 現世に留まりつづける彩飾へ謙譲を捧げよ 君が嘔き捨てる血糊はいま赤黒くとも 軈ては〈永久なるもの〉へと変化する ─黒が白く光へ溶けてゆく日まで 拝礼.