もう10ヶ月も投稿をサボってましたが、スローペースになりながらも本は読んでます・・・...
鉄道趣味人である著者が、「乗り鉄」「撮り鉄」の記録や時事問題から映画のレビューまで雑多なテーマで徒然なるままに書くblogです。
もう10ヶ月も投稿をサボってましたが、スローペースになりながらも本は読んでます・・・...
管理人の反省と言うか、子育てだなんだと言い訳をしながらブックレビューをサボってしまった。現在、読了したのにレビューしていない本を備忘録としてメモにしておこうと思う(読み終わったら追加、レビューしたら削除していく)。↓...
ブックレビューは書籍を一つ一つ取り上げてきたが、書く時間が限られるようになってきたので、テーマで一括りにして複数紹介するスタイルも併用しておこうと思う(誤魔化し・・・)さて、2023年を振り返ると、中東情勢もきな臭くなっているのだが、忘れてはならないのはロシアによるウクライナ侵略(第二次ロシア・ウクライナ戦争)である。常に周回遅れの自衛隊でさえ、これからは宇宙・サイバー・電磁波だと言っていたのに、ウク...
名古屋に置かれていた第3師団の中国戦線での記録を基に、どのような戦闘経過であったのかを記した本。確かに日中戦争のディティールは余り見かけないのではあるが、ミクロなので戦争というより戦場の記録で、日中戦争(これをどこからどこまでとするかで意見は割れるが)を捉えるにはマニアック過ぎる文献ではないだろうか。...
山本五十六、恐らく日本で一番有名な海軍軍人と言っても過言ではないと思う。もしくは、陸軍の東條英機と対比されて、海軍善玉論の支柱として「日米開戦反対論者」と評する人もいるのではないだろうか。その山本五十六の生い立ちから、彼がどのような人物であったのかを再検証するのが本書となる。特に、彼がロンドン軍縮会議で米英が提示する戦力比への妥協を拒否したように、必ずしも英米協調派ではないという点を取り上げて分析...
武装勢力ハマスがイスラエル側を奇襲攻撃し、パレスチナ情勢が騒がしくなっている。中東は複雑怪奇ではあるのだが、正確な知識を持っていないと読み間違える可能性があると思う。そういった点でこの「エリア・スタディーズ」シリーズは各地域の専門家が執筆しているうえ、短い章立てで歴史・政治・文化といった広範囲をカバーしており、基礎知識を得るのにちょうど良い。本書でも指摘されているが、日本は石油調達を念頭にアラブ諸...
防衛大学校と聞いて、土日になると横浜界隈に制服姿で外出する学生を連想する神奈川県民は多いだろうが、その内情を知る人は少ないのではないだろうか。将来の自衛隊幹部、すなわち諸外国で言う将校を教育する、いわゆる士官学校に相当する。諸外国では陸海空に分かれているが、日本の場合は陸海軍の確執を教訓として、吉田茂の強い意向によって統合された。その吉田茂の考えに基づき、戦前の士官学校とは教育内容が異なっている。...
陸軍士官学校事件、と聞いてピンと来るのは昭和や日本陸軍に関する歴史を掘り下げてみたことのある人だろう。だが、後の二・二六事件にも繋がったと言われる士官学校の学生らによるクーデター未遂事件は、日本陸軍内部の問題を表しているものとも言える。昭和陸軍については川田稔『昭和陸軍の軌跡』と『昭和陸軍全史』『昭和陸軍全史2』『昭和陸軍全史3』の3部作、大江志乃夫『日本の参謀本部』、戸部良一『逆説の軍隊』、岩井秀...
8月に入ると戦争関連の報道が増える。そこで、今回は先の戦争に関する一冊。日本で勝算の無い無茶苦茶な話の代名詞とも言えるのが「インパール作戦」であり、こういった要求をする無能な人物を「牟田口中将」と呼ぶ人はままいるのではないか(自分の周りだけ?)では果たしてインパール作戦は陸軍にとっても突拍子もない作戦であり、これに執着した牟田口は無能であったのか、という点について再考できるのが本書だ。そもそもビル...
椎名誠の作品を何冊かレビューしているが、自伝小説としては木村晋介、沢野ひとしらとの共同生活をしていた青年期の『哀愁の町に霧が降るのだ』、会社勤めを始めた 『新橋烏森口青春篇』『銀座のカラス』あたりから、作家として独立していく『本の雑誌血風録』『新宿熱風どかどか団』 という流れに位置付けられる一冊と言えようか。今回の主人公は太田トクヤではないか。彼が新宿界隈で居酒屋を展開していく様子を時間軸としながら...
ブックレビュー(438)ー『極秘特殊部隊シール・チーム・シックス』
またしても順番が前後するのだが、最近読み終わった本から。米海軍特殊部隊SEALsに在籍していたハワード・E・ワーズディンの回想録。タイトルにビンラディンの名前が入っており、冒頭にその「ネプチューン・スピアーズ作戦」の話が出てくるのだが、著者は関与しておらず、こちらは一般的な情報として触れられている。著者はシングルマザーに育てられ、継父から虐待を受けて成長する。この虐待に耐える精神力が、SEALsの訓練(BUD/S...
明石書店のエリアスタディーズシリーズに、NATOが登場。法学や政治学の出版物で知られる出版社であるから、執筆者は信頼のおける研究者たちであるのが大きい。対象地域で何か基礎的な情報を調べる際の辞書代わりとも言える。本書は、ウクライナ侵略とフィンランド・スウェーデンの中立政策の転換と加盟申請が行われたタイミングで書かれているため、激変した欧州の安全保障環境を知るうえで大変有意義な一冊になった。3年前に書か...
国鉄の三大ミステリー事件と言えば、いずれも戦後の混乱期である1949年に発生した「三鷹事件」「松川事件」、そして本書が扱うであり、広く戦後三大事件という括りでも「帝銀事件」「松川事件」と並ぶ大きな謎である。戦後、大量の復員者を受け入れた国鉄はGHQから人員整理を迫られる。当然ながら国鉄と労働組合は激しく対立、期限が迫る中で国鉄トップの下山総裁が、常磐線北千住〜綾瀬の線路上で轢断死体として発見されたという...
ブックレビュー(435)ー『40歳からの会社に頼らない働き方』
著者である柳川範之氏について調べることになり、どのようなものの考え方なのかと、2013年の本ではあるが手に取った。経済学者であるのだが、書かれていることは本屋のビジネスコーナーに平積みされているような自己啓発本の延長上で、会社一本足打法だと行き詰まってしまうから、副業まではいかなくても、別に興味関心あることを手がける「バーチャルカンパニー」というものを持ちなさい・・・という話。勿論、10年前の本だから言...
ロシアについて学ぶ機会が増えたのが、その中で目を引いたのがこの本。装丁からサブカルチャー系かと思いきや、真面目にソ連指導者や市民の生活について書かれている。それにしても、ロシア人の逞しさは、小泉悠『ロシア点描』でも指摘されているのだが、本当にすごい。ソ連・ロシアに根付いたDIY文化、自給自足文化は継戦能力を支えているのだなぁ・・・と実感。...
陸軍の青年将校を中心としたクーデター事件である、2・26事件では主に陸軍内部の統制派・皇道派の対立や日本政治への影響という観点で論じられることが多いのだが、本書は要人警護を担当していた、警視庁警衛課の警察官を軸として事件を描いた記録小説となる。
またレビューをサボってしまった。最近読み終えた本から順番に片付けていこうと思う。こちらはタイトルのとおり、戦後の歴代沖縄県知事の生い立ち、政治スタンス、在任中の取り組みについてまとめ、沖縄を取り巻く問題を描き出す。当然、その中心は日米安保体制とそれに伴う米軍基地に関する問題であり、リンクして出てくる沖縄振興策となる。「イデオロギーよりもアイデンティティ」という言葉に示されるとおり、「保守(自民党系...
外交官として北朝鮮との窓口を務めた著者が、会談に至る経緯やその模様などを記した貴重な著書。勿論、守秘義務もあり全てが正確に書かれている訳ではないだろうが、本書を通じて中々実態の見えない彼の国の顔が、少し像を結んだように思えた。 1990年9月の金丸訪朝団から始まる。北朝鮮側はソ連との緊張関係を受けてか、「西欧人は文化、風習が違うからやりにくい。やっぱり東洋人がいい」と漏らす。発言の自由があるとも思えない...
このところレビューで頻出しているが、ユーリ・イズムィコこと小泉悠氏によるロシアの外交政策を規定する地政学的発想についての解説書。著者の北方領土訪問などの体験も交えて書かれており、学術書のような堅苦しさは無い。分かりやすく物事を伝える術に優れていることを改めて感じさせる。 著者はロシアの周辺地域に対する認識を、明確に内と外が分離される「フラスコ」と、徐々に内と外が混じり合いグラデーションを形成する「...
メディアで見掛けない日は無い、ユーリ・イズムィコこと小泉悠氏の著書(2022年に果たして何冊の本を出したのだろうか・・・)。著者がロシア滞在中に見聞きしたものを通じて、ロシア社会とはどのようなものかを分かりやすく伝えてくれる。観光ガイドブックでは見られない、ロシアの日常を感じる事ができる。 著者曰く、ロシア人は他者に対する不信と信頼が同居しているという。すなわち、身内にはとことん親切であり、それは身内...
本書は、大学の講義で「ファシズムの体験学習」を行っている著者が、ファシズムとはどういったもので人に対してどのような影響を与えるのかを考察したもの。講義自体が刺激的であり批判も受けているものではあるが、知らずにファシズムへ陥ることのないようこうして「免疫」を付ける事も必要と感じさせられた。 ファシズムの一つ、「ナチズム」と聞くと我々は遠くドイツで発生した狂気と捉え、自分とは関係ないと思いがちだ。しか...
第二次ロシア・ウクライナ戦争が始まって1年、鮮やかな水色と黄色の旗を見れば、誰しもウクライナの国旗であると気付くようになった。また、三叉の鉾の紋章を見れば、ウクライナの国章だと答えられる人も珍しくはないだろう。だが、戦争が始まる前の日本人にとってのウクライナのイメージはどのようなものだったろうか、と考える。自分自身も、「旧ソ連の兵器工場」「クリミア半島=ロシアの南下政策の拠点」この程度の知識であり...
中国人民解放軍の将校らが書いた、これからの戦争の在り方に関する本。原本は湾岸戦争直後に書かれており、日本語版は2001年同時多発テロの後に出版されたものだ。古い本を一蹴するのは簡単であるが、同時多発テロのような非国家主体による攻撃、ロシア・ウクライナ戦争でも行われたサイバー戦を予見するような記述があり、現代的な意義は大きいと思うので紹介しておきたい。なお、米国は本書も参考として「国防見直しQDR2010」に...
ブックレビュー(425)ー『ベリングキャット―デジタルハンター、国家の嘘を暴く』
第二次ロシア・ウクライナ戦争が始まり、一年となる。両国からのプロパガンダが行われているが、民間の衛星写真など誰でも閲覧できる情報(オープンソース)から被害状況などを特定している「ベリングキャット」と呼ばれる団体の活動が注目されており、NHKでも特集番組が流された。OSINTと呼ばれる情報活動の一種であるが、この手法を確立したベリングキャットの創設者が書いた一冊。この団体は既に、アサドの化学兵器使用、マレー...
日経新聞だったかの書評で紹介されており、書名にひかれて読んだ。政治学者として民主主義を研究している著者の子が小学校に入り、周囲から推されてPTA会長となって改革を断行していく様子が面白おかしく描かれている。それは民主主義というより、組織運営のあり方に問題を認識しながらもこれまで誰も変えられなかった組織の問題点を解きほぐしていく、マネジメントの物語に読めた。例えば、真面目で有能とされた隣の小学校のPTA会...
連載中のエッセイをまとめた本で、以前1作目もレビューしている。椎名作品だけに安定の軽さ、読みやすさで、疲れた時に食事を軸としたエッセイがとても心地よい。と言っても、冷やし中華や素麺など麺類やキャンプ飯(と言っても昨今のメスティンを使った上品なものではない)の描写に偏っているから、美味い店の参考にしようと思ってもそうはいかない(かつての勤務先があった銀座界隈の店の話はある)。孫の誕生パーティーとして...
少しサボってしまったが、今年もブックレビューを中心に投稿をしていきたい(実質、自分の備忘録)。珍しく、読み終わったばかりの一冊。辻政信といえば、独断専行の代名詞のような人物であり、歴史家の半藤一利氏が「絶対悪」という評価をしたことでも知られている。ノモンハン作戦、ガダルカナル島といった日本軍が悲劇的な結果に直面した戦闘に関与しており、そういった点でも特に評価の低い日本陸軍軍人ではないだろうか。ただ...
アダムとイブが禁断の果実を手にした事から始まり、カルタゴのハンニバルのアルプス越え、救命ボートを用意しなかったタイタニック号など、様々な人類史における失敗事例を並べてその原因と結果を図表で解説するナショナルジオグラフィックらしい本。当然、欧米目線であることから、日本人としては馴染みづらいエピソードであり、また英文らしい皮肉めいた表現が多いので、読むのに疲れるかもしれない。例えば・・・「あきれたこと...
経済誌の書評欄に出ていたので図書館で借りたが、期待を裏切る退屈な本だった。「味に点をつけるな」「こういった客は迷惑」「啜る行為を外国人は嫌う」といった小煩い自分自身の価値観を押し付けられており、これを”教養”と語るのはピントがずれていないだろうか。つまらない本を紹介するのも、また一つの記録。...
書名にある所謂「零戦」は、恐らく戦艦大和や三八式歩兵銃と並び、日本軍の代表的兵器として知らない人はいないだろう。日本軍の航空機を見れば、多くの人は「ゼロ戦だ」と言うに違いない。よく言われるのは、零戦は防弾装備や火災対策などの防御面を考慮せず、運動性能など攻撃面を強化した「攻撃精神」の権化であり、戦中も大きな改良はされず、やがて米国の技術力に押されて劣勢になっていくというイメージがある。こうしたステ...
現代史家として、軍人を軸に戦史を紐解く大家が、第二次世界大戦における指揮官たちの「横顔にカメラを向ける作業」をまとめた書籍となる。とかく作戦の一部や伝記のような虚実の交わるものを通して知る機会が多いのだが、人柄が透けて見えるエピソードをとおして、指揮官の真の姿を描き出そうというものになる。 取り上げられた指揮官の一部を挙げると、真珠湾での第二撃をせず批判される南雲忠一大将、ドイツ海軍の潜水艦部隊を...
海上自衛隊で自衛艦隊司令(戦前なら連合艦隊司令長官か)を務めた著者が、集団的自衛権行使の必要性について説いた本。書名は出版社が決めたのだろうが、「入門」というからには法理論から入り、事例を踏まえて日本国における是非を説くべきだと思うのだが、「行使したい」側の話なので端折った書き方であり、反対派を説得する学術的なものではないように感じた(私自身は国連憲章で定められた権利であり、行使するかどうかは政治...
ブックレビュー(416)ー『プーチンの世界 皇帝になった工作員』
今年もあと2ヶ月を切った。一年を振り返るような季節となったが、今年の重大(十代)ニュースの1位は間違いなく、ロシアによるウクライナ侵略だろう。2014年から始まったウクライナの主権を侵害する侵略行為は、ついに政権転覆をもくろむに至った。多くの人が「なぜこのようなことを」と感じただろう。私自身、東部ドンバス地方の
ブックレビューが追いついていないので、ほとんど読書記録的な意味合いだけになるが紹介しておく。日本人には馴染みが薄いかもしれないが、従来の地理的な固定された国境に対して、温暖化などの環境変化で生じる国境の問題、民間利用も進む宇宙、サイバー空間のような
先日、上巻をレビューしたのものの続き。太平洋戦争(日米戦争)は、日本が初期の優勢を失い部隊をすり潰し、敗北への転換点となる「ミッドウェー海戦」へ向かっていく。内容は史実であるので、面白かった点を挙げておく。まずは、米軍が空母「レキシントン」、日本軍が空母「鳳翔」を失った「珊瑚海海戦」の評価。一般的に、米軍は太平洋にある空母4隻のうち1隻を失ったため、日本の戦術的勝利/連合軍の戦略的勝利と言われるが、...
第二次安倍政権を「番頭」として支えてきたのは、間違いなく菅義偉官房長官だ。その菅氏の実像を、直接電話でやり取りでき、頻繁に会食する距離に居た
日本におけるインテリジェンス研究の第一人者による、戦後日本のインテリジェンスコミュニティを巡る動きを概説した本。戦後まもなく、吉田茂による中央情報機構設置に向けた試みは挫折し、長く国内では警察が情報活動の中核を担う体制が築かれた。著者が指摘するように、冷戦期の日本は日米安全保障体制の庇護の下、外交・安全保障政策の独自性は乏しく、情報活動は共産党をはじめとした左翼や外国情報員の活動の監視といった、防...
ブックレビュー(411)ー『日本の地形・地質−見てみたい大地の風景116』
地形・地質は生活にも密着しているし、“観光名所”にもなる。本書は全国116ヵ所の変わった光景を網羅した、一種のガイドブックになっている。観光名所のような場所もあれば、山の手崖線地形のように、王子から上野あたりに至る山手線などのルートを決めたような身近な地形も記載されている。地形と鉄道の関係は奥が深い、一つに岐阜県の赤坂金生山があった。石灰石が採掘される山であり、これを運搬するための貨物鉄道として西濃鉄...
海軍史家イアン・トールのシリーズの一つで、副題のとおり真珠湾攻撃からミッドウェイまでが、記録小説のように書かれているものの上巻。ガダルカナルからサイパン陥落、レイテから終戦とそれぞれ上下巻になっており、6冊に及ぶ。歴史書ではあるが学術書と違って読みやすく、全体像を理解するのにとても良い本だと感じたが、翻訳が悪いのか日本語としては読みづらくなっているのが残念だ。米国視点に偏っておらず、例えばフィリピ...
前回のレビューから2ヶ月近くも経ったが、この間に6冊読了しているので読むペースとしてはまずまず。一方で、レビューを書く時間が取れずに来てしまった(言い訳)。本書は一世を風靡したアニメ、『新世紀エヴァンゲリオン』の世界(絵)に組み込まれた膨大な背景を紐解きながら、シリーズを解説していくような流れで構成された本。読み通すと、庵野秀明監督が思い描いた世界に触れることができるように思うのだが、ディティールを...
前回レビューした『マングローブ』の続編的な存在で、引き続きJR総連の異常性についての取材をまとめた渾身の一冊。辞書かと言わんばかりの厚みであるが、前半はJR東日本の第一組合であった東日本旅客鉄道労働組合(東労組)を扱っており、『マングローブ』の内容と重複する部分が多い。残りがJR北海道の第一組合である同じくJR総連系の北労組の話。北海道でもどれくらいニュースになったのか知らないが、現職の社長が自殺、3年後...
出版当時、書店か図書館の立ち読みでパラパラと読んだきりの本であったが、JR東海・葛西敬之名誉会長の死去で国鉄改革を思い出し、その中でも未完とされた労使関係についてもう一度振り返ろうと思い手に取った(図書館で借りただけだが)。2007年、JR東日本の第1組合である東日本旅客鉄道労働組合(東労組)の指導者であった松崎明を題材とし、彼の思想的背景(革マルとの繋がり)と組合費の私的流用、これらを容認していたとされ...
ロシア軍が話題に上ることも増えた。ソ連崩壊後に軍も崩壊状態となり、特に日本と対峙していた太平洋艦隊は惨憺たるもので、ウラジオストクで朽ち果てている潜水艦を見ると、ある種の悲しさを覚えたのを記憶している。だが、プーチン大統領が軍を再建し、チェチェンやシリア、更には2014年からウクライナで軍事作戦を展開するようになった。そのロシア軍の主体は陸上国家である故に、陸軍(陸上兵力)となる。日本のような海洋国家...
本書は、2012年に発見されたという陸軍中野学校に関する資料を基にして書かれたもの。中野学校と言えば、フィリピン・ルバング島で約30年に渡って残留、抗戦していた小野田寛郎少尉を思い浮かべるかもしれない。敗戦を信じず、山中で潜伏して、米軍基地襲撃や放火などを繰り返して地元住民も殺傷していたとされる「軍国主義の亡霊」を生み出したという印象をもつ向きも多いだろう。設立当初から秘匿され、敗戦時にも書類が焼却され...
意図した訳ではないのだが、書名と本記事のタイトルが4並びになった。レビュー(403)とは異なり、こちらは全ての人に推薦できる良書だ。本書は、戦略学や軍事史の大家であるエドワード・ルトワックのインタビューを、日本における地政学の第一人者である奥山真司氏がまとめた、日本の国家戦略への提言とも言える一冊である。2018年に発刊されているのだが、ロシアのウクライナ侵攻後の今になって読むと、より価値を理解できる至言...
ノンフィクション作家が警察庁長官経験者のインタビューを基にして書いた本。サブタイトルにあるような、「知られざる警察トップの仕事と素顔」を拾っていく事を意図したものだろうが、企画倒れのような本だった。インタビューのきっかけも、歴代の経験者をたどって警察行政を年表的に振り返る訳ではなく、16代長官の國松氏から紹介された、24代米田氏、21代吉村氏、18代田中氏と偏りがある事は否定できないだろう。警察行政の仕組...
今夜は映画評論(124)ー『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』
6代目ジェームス・ボンドを演ずるダニエル・クレイグの作品は、2006年『カジノ・ロワイヤル』(レビュー)、2008年『慰めの報酬』、2012年『スカイフォール』(レビュー)、2015年『スペクター』(レビュー)、そして2021年の本作で完結する事になった。ダニエル・ボンドの締めくくりとして、かなり期待していたのだが、新型コロナの影響で公開が遅れ、そうするうちに子供が産まれた直後の公開となって時間を上手く割けず、結局はA...
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本ではもう一つの隣国である中国の脅威について、より多く指摘されるようになった。そこでは、「拡張主義」「中華思想」といった膨張していく性質や人権抑圧など非民主制国家の負の側面が強調される。そういった側面もあるが、余りそれに囚われすぎても、本質を見失い、対処方法を誤るのではないかと漠然と感じていた。本書は、九州に生まれて海外にルーツのある人との交流の多かった中国研究...
自民党本部の勉強会での講義をまとめた本で、新書としてはかなり細かい序章+13章をそれぞれハイレベルな研究者たちが担当している。一応、日本近現代史とあるが、山内昌之「令和から見た日本近現代史」はガチガチの歴史学のあり方の話であり、小谷賢「戦間期の軍縮会議と危機の外交①」は欧州における軍縮とドイツの台頭、第二次世界大戦への入り口を扱っており、日本の話ではなかったりと一貫していない部分もある。それはさてお...
連休で時間ができたため、Amazonプライムでブックマークしたままにしていた映画を見る事に。作業をしながらだったので洋画(字幕)という訳にはいかず、珍しく邦画に手を出した。【粗筋】ザ・ファブルと呼ばれる都市伝説とも言われる殺し屋(岡田准一)は、育ての親であり雇い主でもある社長(佐藤浩一)から、1年間は人を殺さずに普通の生活を送る事を命じられ、それを破った場合には殺すと告げられる。仕事仲間(木村文乃)を妹...
英王室の研究で高名な著者が、英国をはじめとして北欧、ベネルクス三国、アジアの君主制を振り返りながら、最後に皇室の今後についての考えをまとめている(2021年に開かれた、皇位継承に関する有識者会議の前、2018年に書かれている)。君主制の「絶対君主制」「立憲君主制」「議会主義的君主制」の3分類を提示し、英国の歴史をまとめている。欧州で歴史的に根付いていた絶対君主制であるが、英国はフランスとの戦争に負けて大陸...
ブックレビュー(399)ー『サクッとわかるビジネス教養 地政学』
ビジネス教養書としてシリーズになっているようだが、昨今話題の「地政学」についてイラストで分かりやすくまとめた本。ただし、著者は日本における地政学研究の第一人者であるから、基本的な事項をしっかりまとめてある印象。会社の同期から「地政学について学べる本はないか?」と聞かれたので、過去に読んだこちらを推薦した。こういった「解説書」的なものは余りブックレビューをしていないのだが、ロシアへのウクライナ侵攻の...
3月になると、東日本大震災と福島第一原発事故を思い出す。特に今年は、ロシア軍によるウクライナ侵攻の過程で原発の占拠が発生し、原発のセキュリティについて議論が出た。以前、同じ著者が書いた『カウントダウン・メルトダウン』を読んだ。原発を任せるには余りのも頼りない東京電力、責任回避を図る霞ヶ関とその周辺、そして迷走する菅直人率いる政権に慄然とした。本書は事故調査を踏まえ、日本だけではなく米国内の動きも交...
最近は鉄道会社のファンサービスも増え、車両基地の一般公開もその一つだろう。だが、一般公開されている時に見られる部分は、安全面もあってごくわずか。特に日頃の作業についてはほとんど見ることができない。だから、鉄道員たちが安全安定輸送とサービスを守るために、地道な作業をしていることは中々理解できない。本書は、鉄道会社での勤務経験もある筆者が、各社の車両基地を取材して見てきたものを紹介したもの。新書という...
日本人には馴染みの薄い存在が、本書の主人公である「帰還兵」。ハリウッド映画であれば、『ランボー』、『ディア・ハンター』、『タクシードライバー』、『7月4日に生まれて』、最近であれば『アメリカン・スナイパー』あたりを思い浮かべるのだろうか。著者トム・ヴォスは、高校を卒業後に米陸軍に入隊、歩兵としてイラク北部モスルへ1年間派遣されて名誉除隊している。帰国後は判事を目指して大学へ通うとするが、派遣中の出来...
会社の業務で税金や社会保険の業務を行う度に、煩雑な制度や書類に苦悶していたのだが、子供が産まれ、様々な公的助成制度を利用する場面でも、同じような思いを持っている。無論、自らの利益になる制度ではあるのだが、果たしてその手間に見合うだけの利益なのか、考えてしまう事もある。 こうした行政システムの複雑怪奇さを何とかしなければいけない、というのは洋の東西を問わず共通の悩みであるらしい。本書はオバマ政権(1期...
コロナ禍で経済活動が縮小しているが、より長期的見て日本経済に大きな影響を及ぼすのは、人口減少だろう。高齢化社会という言い方だと、生産年齢人口が減少していく事が感覚的に理解できるものの、その先にある人口減少まで見えづらいように思う。だが、生産年齢人口の縮小の中には、子供を産む世代の減少が含まれており、長寿命化の更なる進行や出生率の爆発的増加でも無い限り、人口は減少する一方で、減少率も徐々に上がってい...
昨年の大河ドラマの主人公は渋沢栄一であった。彼は農民出身であったが、一橋家家臣として武士に取り立てられ、明治期には実業家として数々の事業を起こしたのは改めて書くまでもないだろう。武士が政権を担ってきた時代が長く続いたが、大政奉還を中核とする明治維新においては、下級武士や民間人が多く活躍した。急激な社会構造の転換であったはずだが、何故そのような一大プロジェクトを実施できたのか。 著者は、明治維新を民...
気付けば2月、本は何冊か片付けているのだが、ようやく今年最初のブックレビューになる。国道16号線とは、横浜市の高島町交差点を起点として、町田市、相模原市、八王子市、川越市、さいたま市、柏市、千葉市、木更津市を経由し、海上を経て高島町交差点を終点とする、総延長300キロを超える環状道路を指している。意識はしないだろうが、関東に住んでいる限り、1回は通過しているのではないかと思えるほど、東京近郊の主要地域を...
連続で赤羽ネタ。こちらは赤羽界隈で圧倒的な評価を誇る店。駅前のロータリーすぐのはず・・・と思って住所の地点に行くが入り口が見当たらない。周囲を見回して路地を覗き込むと、発見。お世辞にも綺麗とは言えない建物へ、路地からアプローチ。開けるとカウンターの端に券売機があり、ここで良いのかと安心する。早速、ノーマルな「肉そば・中盛り」(900円)を頼む。登場したのは、澄んだ煮干しの香るスープに浮かぶ細麺、そし...
新年早々、昨年から持ち越したラーメン屋巡りの話題。仕事で赤羽へ行った際、駅近くで評価の高いこちらの店へ。開店直後ということもあってか、並びはなく直ぐに着席できた。中太麺を選んで出てきたのは、見た目麗しい中華そば。あっさりしたスープを絡め取る麺、そしてローストビーフと言った方が適切と思われる肉の旨みが素晴らしい。するすると入ってしまい、食べ終わるのが勿体なく感じた。感じの良い店員、Twitterに投稿した...
本年最後のブックレビュー。別稿でも書いたが、軍隊というのは命令だけではなくカネが無ければ動かす事はできない。戦後の反戦・反軍教育のせいなのか、日本軍は現地で徴発をしたり軍票を発行していたから、カネは不要などと思い込む人が多いかもしれないが、日本軍と言えども財政面でのルールは戦時中も的確に実行されていた。官僚機構、日本軍の面目躍如と言えようか。 その日本軍には「経理学校」があり、大卒から採用した主計...
ニンニク入れますか?(125)ー『立川マシマシ 立川総本店』
一年近く、ラーメン屋巡りのレビューを書いていなかったので、しばらくは撮りためたラーメンで飯テロ記事の連発になるかもしれない。1軒目は、仕事で立川へ行った際によった、「立川マシマシ」の総本店。ビジネスホテルの1階にラーメン屋が集まっている不思議な空間にある。割とすぐに出てきた「中ラーメン」(850円)は、二郎インスパイア系のお手本のような外観。天地返しをしながら食べると、ホギホギとした麺が出てくる。「二...
佳子内親王殿下が27歳になったとの報道を見て改めて思うのは、先日「安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議」が岸田総理に手交した報告書の一件だ。
Amazonプライムを見ていたら、最近公開された『キャッシュトラック』が無料になっていた。映画館へ行くほどでもないから丁度良いと思い、見ることに。ジェイソン・ステサムというだけで、暴れまくってくれそうだ。【粗筋】ロサンゼルスにある現金輸送を行う警備会社フォルティコ・セキュリティでは、最近銀行強盗によって輸送車が襲われ、警備員2名が射殺、民間人1名が巻き添えとなった。FBIが捜査をするも、手掛かりは無かった。...
以前レビューした、元警視庁捜査一課管理官の書いた『宿命』と(結果的に)ほとんど同じ内容で、マスコミ(テレビ朝日)が捜査情報を集めて米国まで取材して調べ、民間人として書かれたもの。そのため、こちらを『宿命』の後で読むと新鮮味が無いのが残念。本書の最後では、狙撃事件の実行犯と見られ、別件で服役中の「中村泰」を支援した米国在住の人物にもたどり着いている(狙撃事件の5か月後に死亡)。いずれにしても、公安部...
秋篠宮家の眞子内親王殿下が降嫁された。結婚相手については色々あったが、それとは別に皇位継承や成年皇族の減少について、課題が生じている。現代の皇室制度は明治維新になって設計されたもので、それまで不文律で運用され、時代によってかなりアバウトであった「皇族」というものが、明文化された。明治政府における財政問題があり、皇族を一定範囲に絞る必要があったためで、これが今の課題を生じさせたきっかけと言えるだろう...
海上自衛隊と海上保安庁、よく間違えられるそうだ。海上自衛隊は諸外国の海軍(軍隊=対外的な組織)で、海上保安庁は諸外国の沿岸警備隊(警察・消防=対内的な組織)に相当する。四方を海に囲まれた日本は、排他的経済水域EEZが広大であり、活動範囲も広い。昨今は尖閣諸島周辺での中国海警局と対峙している事で、領域警備の最前線を担う機関として、知名度は上がっている。一方で年間予算は増えたとは言え2200億円程度、海上自...
12/8のNHK「おはよう日本」の中で、陸軍省経理局に設置された「戦争経済研究班」、通称“秋丸機関”が取り上げられていた。この組織は、1939年9月に陸軍省軍事課長の岩畔豪雄大佐が秋丸次朗主計中佐に命じ、治安維持法で逮捕された経済学者や満鉄調査部出身者など、危険分子と見られた学者まで集められてた、異色の調査機関だった。この組織は1941年7月、日米の経済力の格差やドイツの戦争能力など対英米戦争に関する悲観的な見通し...
性懲りも無く椎名誠作品の話。表題は、著者自身の原点になった中学時代の友人との地元(千葉)の海岸での幕営などのテント暮らしに関する章から付いているが、一番最初に収録されている「マゼラン海峡航海記」が圧巻だ。チリ海軍の艦艇に便乗させて貰い、南極の目と鼻の先にある航海の難所マゼラン海峡に行った話は、他の著作でも触れられる事が多いのだが、その旅を書いた著作に出会った事が無かった。本書では、地元民の厚意で海...
椎名誠の著作が続いて恐縮だが、こちらは雑誌「女性のひろば」で連載されていた食にまつわるエッセイ。秘境への探検で食べたサルやワニの食レポ(?)も書かれており、椎名作品を読み慣れた者としてはどこかで読んだ気がする話であるが、読者層にどう受け止められたのか、興味深い。一番強調しておきたいのは、冒頭にあるタマネギ万能論。この話は著者もあちこちで書いている。煮てよし、焼いてよし、炒めてよし。保存もできて値段...
先日レビューした椎名誠『漂流者は何を食べていたか』の冒頭で紹介されており、絶版になったものが椎名誠の働きかけで再版されたと聞いて、図書館でリクエストをした。明治31年、本土と占守島の連絡船であった帆船「龍睡丸」を指揮する中川船長は、仕事が無くなる冬場に南太平洋へ調査に出掛けようと考え、精鋭16名で旅立った。ハワイ・ホノルルまで到達し、調査をしながら日本へ戻ろうと西へ進んでミッドウェイ島を目指していた途...
子供の頃、『十五少年漂流記』などの漂流記あるいは冒険小説を読んだ人は多いのではないか。その中で、漂流した人たちの食事に注目した変わり種が本書。確かにサバイバル術も大事ではあるが、実際に何を食べて生き残れたのかは気になるところだ。アウトドア派作家らしい、適確な視点がとても面白い。魚は代表格だろうが、素手で捕まえるのは難しい・・・と思いきや、シイラやトビウオを手掴みにするケースも出てくる。解体して日干...
芥川賞候補になった元自衛官の著者が書く、戦争小説。ここに至るまでの背景などの記述は一切なく、ロシア軍の地上侵攻に伴い、釧路近郊で住民避難を行う自衛官たちの描写から始まる。主人公は一般大学から幹部候補生として入隊した、所謂U幹の安達三等陸尉。彼は小隊長になったばかりの新米指揮官。東京に残した彼女が仕事を理解してくれないとボヤき、作戦行動中も幹部室の机に仕舞ったiPhoneを思い出す、現代の青年の代表だ。国...
来年には40歳になる男が言う話ではないかもしれないが、子供の頃から大切にしているぬいぐるみがいる。今は実家で静かに余生を過ごしているのだが、乳幼児くらいの大きさがあるシロクマのぬいぐるみで、名前は
ブックレビュー(380)ー『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』
今年2月、みずほ銀行のATMでキャッシュカードが飲み込まれる事態が発生した。これで終わりかと思いきや、その後もトラブルが多発、既に8回を数えている。金融庁が入ってシステム改修計画などの管理をしているようだが、果たしてどうなるのか。みずほ銀行は、2019年に預金、融資、振込という銀行の主要業務を行う、勘定系システムを更新した。最終的に35万人月、約4500億円にもなる巨大システムは、2011年6月に検討を開始、当初の使...
最近は「終活」なる言葉が作られ、ある程度の年齢を重ねた人が、元気なうちに遺影を準備したり葬儀の方法を指定したりするのが、一種のビジネスになっている。それでも、まだ死とは無縁そうな年齢で自らの死について話をしようとすると、「思い悩んでいるのか」「自殺志願者なのか」といった怪訝そうな顔をされるのが一般的なのではないだろうか。「良い人生を生きるために死を考える」という死の準備教育を高校時代に学んだ自分で...
読書は基本的に興味のあるものを読んでいるのだが、たまに仕事で読まないといけないものもある。とは言え、義務的な分野も概ね自分の興味のある範囲という幸せな状況であるから、案外楽しいもの。ただし、その中でも圧倒的にハズレくじがこの本。前国家安全保障局(NSS)局長の北村滋氏の著作で、今話題の経済安全保障の第一線で活躍し、NSSに経済班を設置した当事者ということでとても期待していた。分厚い本をめくると、1章とイ...
災害大国の日本で見られる、緑色の作業服を着た自衛官たち。ノーベル賞作家に「同世代の恥辱」と言われた日陰者たちであったが、昨今は信頼できる組織としてもてはやされ、防衛省・自衛隊もYoutubeなど広報を巧みに行なっている。だが、1970年代の自衛隊はそうではなかった。借金から逃れたり、的屋上がりであったと、どちらかと言えば社会的に問題のあるとされる人々が入隊し、やっとこさ運営されていた。著者の体験を基に、陸上...
2021年、コロナ禍で延期された「東京2020大会」が開催された。開催地の選定、スタジアム建設などでのゴタゴタ、マラソン会場の変更、開会式演出に関するスキャンダル、組織委員会での失言騒動、コロナ対策、有観客・無観客の判断と様々な場面で、IOC、JOC、東京都、政府が登場した。スポーツの大会でありながら、政治をも巻き込む大きなイベントがオリンピックなのだろう。本書では、その近代オリンピックと政治について、スポーツ...
大学時代、朝鮮半島政治を研究するゼミに在籍していた。自分は日本の安全保障を中心に置いていたが、V・チャが言う
ブックレビュー(374)ー『宮脇俊三対話集 ダイヤ改正の話』
地元の図書館で偶然発見した。1988年3月の、国鉄分割民営化後に初めて行われたダイヤ改正をテーマにし、旅客6社と貨物会社のダイヤ担当者をインタビューした対談をまとめた一冊。民営化直後の、JR各社による「こうしたことをやっていきたい」という意欲を聞き取り、各社のカラーも透けて見えるのが面白い。会社別で面白かったのは、JR東日本で言えば、京浜東北線のラッシュ時に快速運転をやりたいという話。田端〜田町で3分縮まる...
警察と消防は身近な公的機関であると思うが、その組織規模は大きく異なり、警察は都道府県単位であるが、消防は市町村を基本単位としている。そのせいもあって消防局は地元採用が多く、土着性の強い組織と言える。東日本大震災の捜索救難で自衛隊・警察・消防が奮闘したのは勿論であるが、消防の活動を記録した本は少ないのではないだろうか。本書は、福島第一原発が所在する大熊町・双葉町、拠点となったJビジレッジのある広野町...
人口問題を勉強しており、タイトルに惹かれて図書館で借りたのだが、若干「書名に偽りあり」だろうか。確かに、高齢者、外国人(移民)や女性を活用するという論もあるのだが、人口増というよりは人口減少社会でも生き延びるためにどうするのかという話であり、少子・超高齢社会への対処法という観点ではなかった。全体的に反対するものではないのだが、移民(留学生含む)の拡大は果たして受け入れらるのだろうか。また、女性活躍...
地図研究家として知られる著者による、「地図」から見えてくるものの解説本だ。自分も地図が好きで、今でも『高等地図帳』(二宮書店)を本棚に置いてある。だが、地図の等高線や目標物の名称の書く位置、海図との違いなどについて知る機会はなく、大変興味深かった。何気なく見ている地図ではあるが、やはり実際の地形との差はあり、スペースの都合でそうなっているものや、コピー防止でわざとそうしているケースなど、地形という...
ブックレビュー(370)ー『「2020」後 新しい日本の話をしよう』
仕事の関係で人口問題について勉強をしている。高齢化社会、高齢社会、超高齢社会と、残念ながら少子高齢化に歯止めがかからない日本ではあるが、「非婚化」「晩婚化」「晩産化」によって生じる課題を対談形式でイラストを交え、分かりやすく解いてくれる。DXで省力化はできても、例えば冷蔵庫をトラックから下ろして設置し、古い冷蔵庫を持ち帰るのは人でなければできない。だから、ある程度の人手は必要であり、その担い手が減れ...
ブックレビュー(369)ー『リチウムイオン電池が未来を拓く』
仕事の関係でリチウムイオン電池と開発者で2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんについて調べている。本書は2004年に書かれたものを2016年に再版しているため、ノーベル賞受賞に至る経緯は書かれておらず、純粋にリチウムイオン電池開発秘話といった軽い感じで書かれている。ただ、電池の基本理論を知らないと、何を言っているのかわからないだろう(実際、一から電池について勉強をし直す羽目に・・・)。それはそれとして...
8月に入り、戦争を振り返る言説が増えるが、しばしばヒトラーやムッソリーニと並ぶ独裁者と位置付けられる東條英機は、本当に独裁者であったのかを問うている。結論から言えば、彼は独裁者とは言えない。本書では1878年に「軍政」(陸相)と「軍令」(参謀総長)に分離した「明治のシステム」によって統一的な戦争指導が難しくなったため、首相・陸相だけではなく、参謀総長も兼任する事になった点を指摘している。独裁者ではない...
自分は宇宙開発の話が好きで、これまでもジム・ラベル『アポロ13』、立花隆『宇宙からの帰還』、アンドリュー・スミス『月の記憶』、ブライアン・バロウ『ドラゴンフライ』といった、宇宙飛行に関するノンフィクションを読んできた。本書は『ドラゴンフライ』の題材であった宇宙ステーション「ミール」に対抗、ある意味で後継として建設された国際宇宙ステーションが舞台となっている。椎名誠がエッセイで絶賛していたので、手にと...
ブックレビュー(366)ー『宿命 警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年』
自分は中学校進学を控えた1995年3月20日、「地下鉄サリン事件」が発生した。日本の中枢である霞ヶ関を通る地下鉄の、朝ラッシュ時間帯にサリンが散布されて14名が亡くなった。世界的に衝撃を与えた化学兵器テロの犯人は、オウム真理教であった。2日後、警察は上九一色村にあった教団施設へ強制捜査を行う。世の中が騒然としていた3月30日、今後は日本の警察トップである、國松孝次警察庁長官が狙撃されるという事件が発生した。誰...
発売されて間もない本であるが、故あって職場に届いたので一読。米国の州制度などに関する概説本であり、連邦と州の関係について理解するのに役立つかもしれない。著者の一人である久保文明教授の「現代アメリカ政治」の授業を受けており、州の独立性など米国政治の基礎的な部分は理解をしているつもりであった。そのうえで特に驚いたのは、州司法長官の政治的地位の高さであった。クリントン大統領はアーカンソー州知事の前に同州...
【粗筋】ワイオミング州ウインド・リバーにあるネイティブ・アメリカンの居留地で、白人ハンターのコリー・ランバート(ジェレミー・レナー)は、ネイティブ・アメリカンの少女ナタリーの死体を発見した。しかも季節は真冬にも関わらず裸足であり、足跡から逃げるように走っている途中に死んだと推定された。インディアン部族警察署長ベン・ショーヨがFBIに捜査を依頼すると、若いジェーン・バナー捜査官(エリザベス・オルセン)1...
対談形式の旧軍人の評伝シリーズの最後。海軍研究の戸高一成氏と陸軍研究の大木毅氏が、陸海軍内部の対立などを軸に証言をベースに語り合う。オーラルヒストリーに触れた著者たちだけに、生々しい話になっている。陸海軍に共通するのは、歴史の改竄だろう。自分や部下の戦功を良くしたい。また、誤った判断は隠したい。そういった感情が織り込まれ、証言がある。時に戦闘詳報のような記録も都合よく改変してしまう。一方で、澤地久...
半藤一利氏、保阪正康氏という昭和史研究の第一人者が、「名将編」「愚将編」に分けて陸海軍の軍人を対談形式で表する一冊。どちらも”高名”な軍人ばかりである。名将であれば、栗林忠道、石原莞爾と永田鉄山、米内光政と山口多聞、山下奉文と武藤章、伊藤整一と小沢治三郎、宮崎繁三郎と小野寺信、今村均と山本五十六。愚将は服部卓四郎と辻政信、牟田口廉也と瀬島龍三、石川信吾と岡敬純、大西瀧治郎・冨永恭次・菅原道大。いずれ...
歴史探偵として有名な半藤一利氏をはじめとした歴史家たちが、77名の海軍大将を1人ずつ論じていく重厚な一冊。勝海舟、西郷従道という海軍創設の立役者から、最後の海軍大将井上成美まで、有名無名の77名。どういった観点で読むかは読者によるのだろうが、個人的には「艦隊派」「条約派」の対立の頃に注目している。海軍は陸軍と比べて「少数」であり、また食堂も士官と兵で分かれる厳然たる「階級社会」、操艦・砲術など「理科系...
昨今、秋篠宮家の眞子内親王とその婚約者がメディアで取り上げられる。婚約者は米国のロースクールを修了、7月にニューヨーク州の司法試験を受ける予定とのことだ。彼と母親について、芳しくない話もあって、国民の関心は高い。勿論、我々の血税が皇室を維持するために使われ、予定されている結婚にあたっては、皇室経済法に基づいて1.5億円が支出される決まりになっている。だが、彼は皇族にはなれないし、眞子内親王も皇室典範の...
新型コロナウイルスに関する様々なデータが出回っている。新規感染確認数、重症患者数、病床使用率・・・しかし、直感的にしっくりこない数字ばかりではないか。感染確認数は検査数に依存する。無論、かなりの確度で疑いのある人を検査すれば絶対数はそれなりに出るだろう。だから、陽性率も見る必要がある。陽性率が高いのは、積極的疫学検査で追跡した結果、かなり的を絞っているということに違いない。数値を示されると、人はそ...
古川隆久教授の『昭和天皇』を読んだこともあり、その際には同じタイトルであるこちらも読みたかったのだが、何故か気乗りせずにそのままとなっていた。最近、皇室について調べる機会があったので、改めてこちらの本を手に取ってみた。内容は天皇による「宮中祭祀」を軸として、明治天皇、大正天皇そして昭和天皇の取り組み方と、昭和天皇に影響を与えた生物学と貞明皇太后について書かれている。現代の宮中祭祀は、明治期に決めら...
法律の解説書に対して感想というのも変な話かもしれないが、本書は極めて珍しい皇室典範に関する概説書になる。著者は2005年に小泉内閣が設置した「皇室典範に関する有識者会議」の座長代理も務めた、元最高裁判事。象徴天皇制の位置付け、皇族の範囲、皇位継承についてが主題となっている。皇位継承に関する問題が取り沙汰されるが、日本国憲法から連なる法体系に基づく理解を得るのにはよいと思う。ただ、仕事の関係で読むことに...
著者のティム・ワイナーの『CIA秘録』を読んだ事がある。膨大な資料リストが巻末にあるのは、ニューヨークタイムズの元記者として緻密な取材を重ねた証拠でもあるのだろう。前著のCIAとは違い、FBIはドラマ『X-FILES』のモルダー特別捜査官のような刑事(警察)のイメージが強いかもしれない。しかしそれは一側面であり、元々は司法省職員であったジョン・エドガー・フーバーによる共産主義者を監視するための情報機関であった。世...
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もう10ヶ月も投稿をサボってましたが、スローペースになりながらも本は読んでます・・・...
管理人の反省と言うか、子育てだなんだと言い訳をしながらブックレビューをサボってしまった。現在、読了したのにレビューしていない本を備忘録としてメモにしておこうと思う(読み終わったら追加、レビューしたら削除していく)。↓...
ブックレビューは書籍を一つ一つ取り上げてきたが、書く時間が限られるようになってきたので、テーマで一括りにして複数紹介するスタイルも併用しておこうと思う(誤魔化し・・・)さて、2023年を振り返ると、中東情勢もきな臭くなっているのだが、忘れてはならないのはロシアによるウクライナ侵略(第二次ロシア・ウクライナ戦争)である。常に周回遅れの自衛隊でさえ、これからは宇宙・サイバー・電磁波だと言っていたのに、ウク...
名古屋に置かれていた第3師団の中国戦線での記録を基に、どのような戦闘経過であったのかを記した本。確かに日中戦争のディティールは余り見かけないのではあるが、ミクロなので戦争というより戦場の記録で、日中戦争(これをどこからどこまでとするかで意見は割れるが)を捉えるにはマニアック過ぎる文献ではないだろうか。...
山本五十六、恐らく日本で一番有名な海軍軍人と言っても過言ではないと思う。もしくは、陸軍の東條英機と対比されて、海軍善玉論の支柱として「日米開戦反対論者」と評する人もいるのではないだろうか。その山本五十六の生い立ちから、彼がどのような人物であったのかを再検証するのが本書となる。特に、彼がロンドン軍縮会議で米英が提示する戦力比への妥協を拒否したように、必ずしも英米協調派ではないという点を取り上げて分析...
武装勢力ハマスがイスラエル側を奇襲攻撃し、パレスチナ情勢が騒がしくなっている。中東は複雑怪奇ではあるのだが、正確な知識を持っていないと読み間違える可能性があると思う。そういった点でこの「エリア・スタディーズ」シリーズは各地域の専門家が執筆しているうえ、短い章立てで歴史・政治・文化といった広範囲をカバーしており、基礎知識を得るのにちょうど良い。本書でも指摘されているが、日本は石油調達を念頭にアラブ諸...
防衛大学校と聞いて、土日になると横浜界隈に制服姿で外出する学生を連想する神奈川県民は多いだろうが、その内情を知る人は少ないのではないだろうか。将来の自衛隊幹部、すなわち諸外国で言う将校を教育する、いわゆる士官学校に相当する。諸外国では陸海空に分かれているが、日本の場合は陸海軍の確執を教訓として、吉田茂の強い意向によって統合された。その吉田茂の考えに基づき、戦前の士官学校とは教育内容が異なっている。...
陸軍士官学校事件、と聞いてピンと来るのは昭和や日本陸軍に関する歴史を掘り下げてみたことのある人だろう。だが、後の二・二六事件にも繋がったと言われる士官学校の学生らによるクーデター未遂事件は、日本陸軍内部の問題を表しているものとも言える。昭和陸軍については川田稔『昭和陸軍の軌跡』と『昭和陸軍全史』『昭和陸軍全史2』『昭和陸軍全史3』の3部作、大江志乃夫『日本の参謀本部』、戸部良一『逆説の軍隊』、岩井秀...
8月に入ると戦争関連の報道が増える。そこで、今回は先の戦争に関する一冊。日本で勝算の無い無茶苦茶な話の代名詞とも言えるのが「インパール作戦」であり、こういった要求をする無能な人物を「牟田口中将」と呼ぶ人はままいるのではないか(自分の周りだけ?)では果たしてインパール作戦は陸軍にとっても突拍子もない作戦であり、これに執着した牟田口は無能であったのか、という点について再考できるのが本書だ。そもそもビル...
椎名誠の作品を何冊かレビューしているが、自伝小説としては木村晋介、沢野ひとしらとの共同生活をしていた青年期の『哀愁の町に霧が降るのだ』、会社勤めを始めた 『新橋烏森口青春篇』『銀座のカラス』あたりから、作家として独立していく『本の雑誌血風録』『新宿熱風どかどか団』 という流れに位置付けられる一冊と言えようか。今回の主人公は太田トクヤではないか。彼が新宿界隈で居酒屋を展開していく様子を時間軸としながら...
またしても順番が前後するのだが、最近読み終わった本から。米海軍特殊部隊SEALsに在籍していたハワード・E・ワーズディンの回想録。タイトルにビンラディンの名前が入っており、冒頭にその「ネプチューン・スピアーズ作戦」の話が出てくるのだが、著者は関与しておらず、こちらは一般的な情報として触れられている。著者はシングルマザーに育てられ、継父から虐待を受けて成長する。この虐待に耐える精神力が、SEALsの訓練(BUD/S...
明石書店のエリアスタディーズシリーズに、NATOが登場。法学や政治学の出版物で知られる出版社であるから、執筆者は信頼のおける研究者たちであるのが大きい。対象地域で何か基礎的な情報を調べる際の辞書代わりとも言える。本書は、ウクライナ侵略とフィンランド・スウェーデンの中立政策の転換と加盟申請が行われたタイミングで書かれているため、激変した欧州の安全保障環境を知るうえで大変有意義な一冊になった。3年前に書か...
国鉄の三大ミステリー事件と言えば、いずれも戦後の混乱期である1949年に発生した「三鷹事件」「松川事件」、そして本書が扱うであり、広く戦後三大事件という括りでも「帝銀事件」「松川事件」と並ぶ大きな謎である。戦後、大量の復員者を受け入れた国鉄はGHQから人員整理を迫られる。当然ながら国鉄と労働組合は激しく対立、期限が迫る中で国鉄トップの下山総裁が、常磐線北千住〜綾瀬の線路上で轢断死体として発見されたという...
著者である柳川範之氏について調べることになり、どのようなものの考え方なのかと、2013年の本ではあるが手に取った。経済学者であるのだが、書かれていることは本屋のビジネスコーナーに平積みされているような自己啓発本の延長上で、会社一本足打法だと行き詰まってしまうから、副業まではいかなくても、別に興味関心あることを手がける「バーチャルカンパニー」というものを持ちなさい・・・という話。勿論、10年前の本だから言...
ロシアについて学ぶ機会が増えたのが、その中で目を引いたのがこの本。装丁からサブカルチャー系かと思いきや、真面目にソ連指導者や市民の生活について書かれている。それにしても、ロシア人の逞しさは、小泉悠『ロシア点描』でも指摘されているのだが、本当にすごい。ソ連・ロシアに根付いたDIY文化、自給自足文化は継戦能力を支えているのだなぁ・・・と実感。...
陸軍の青年将校を中心としたクーデター事件である、2・26事件では主に陸軍内部の統制派・皇道派の対立や日本政治への影響という観点で論じられることが多いのだが、本書は要人警護を担当していた、警視庁警衛課の警察官を軸として事件を描いた記録小説となる。
またレビューをサボってしまった。最近読み終えた本から順番に片付けていこうと思う。こちらはタイトルのとおり、戦後の歴代沖縄県知事の生い立ち、政治スタンス、在任中の取り組みについてまとめ、沖縄を取り巻く問題を描き出す。当然、その中心は日米安保体制とそれに伴う米軍基地に関する問題であり、リンクして出てくる沖縄振興策となる。「イデオロギーよりもアイデンティティ」という言葉に示されるとおり、「保守(自民党系...
外交官として北朝鮮との窓口を務めた著者が、会談に至る経緯やその模様などを記した貴重な著書。勿論、守秘義務もあり全てが正確に書かれている訳ではないだろうが、本書を通じて中々実態の見えない彼の国の顔が、少し像を結んだように思えた。 1990年9月の金丸訪朝団から始まる。北朝鮮側はソ連との緊張関係を受けてか、「西欧人は文化、風習が違うからやりにくい。やっぱり東洋人がいい」と漏らす。発言の自由があるとも思えない...
このところレビューで頻出しているが、ユーリ・イズムィコこと小泉悠氏によるロシアの外交政策を規定する地政学的発想についての解説書。著者の北方領土訪問などの体験も交えて書かれており、学術書のような堅苦しさは無い。分かりやすく物事を伝える術に優れていることを改めて感じさせる。 著者はロシアの周辺地域に対する認識を、明確に内と外が分離される「フラスコ」と、徐々に内と外が混じり合いグラデーションを形成する「...
メディアで見掛けない日は無い、ユーリ・イズムィコこと小泉悠氏の著書(2022年に果たして何冊の本を出したのだろうか・・・)。著者がロシア滞在中に見聞きしたものを通じて、ロシア社会とはどのようなものかを分かりやすく伝えてくれる。観光ガイドブックでは見られない、ロシアの日常を感じる事ができる。 著者曰く、ロシア人は他者に対する不信と信頼が同居しているという。すなわち、身内にはとことん親切であり、それは身内...
名古屋に置かれていた第3師団の中国戦線での記録を基に、どのような戦闘経過であったのかを記した本。確かに日中戦争のディティールは余り見かけないのではあるが、ミクロなので戦争というより戦場の記録で、日中戦争(これをどこからどこまでとするかで意見は割れるが)を捉えるにはマニアック過ぎる文献ではないだろうか。...
山本五十六、恐らく日本で一番有名な海軍軍人と言っても過言ではないと思う。もしくは、陸軍の東條英機と対比されて、海軍善玉論の支柱として「日米開戦反対論者」と評する人もいるのではないだろうか。その山本五十六の生い立ちから、彼がどのような人物であったのかを再検証するのが本書となる。特に、彼がロンドン軍縮会議で米英が提示する戦力比への妥協を拒否したように、必ずしも英米協調派ではないという点を取り上げて分析...
武装勢力ハマスがイスラエル側を奇襲攻撃し、パレスチナ情勢が騒がしくなっている。中東は複雑怪奇ではあるのだが、正確な知識を持っていないと読み間違える可能性があると思う。そういった点でこの「エリア・スタディーズ」シリーズは各地域の専門家が執筆しているうえ、短い章立てで歴史・政治・文化といった広範囲をカバーしており、基礎知識を得るのにちょうど良い。本書でも指摘されているが、日本は石油調達を念頭にアラブ諸...
防衛大学校と聞いて、土日になると横浜界隈に制服姿で外出する学生を連想する神奈川県民は多いだろうが、その内情を知る人は少ないのではないだろうか。将来の自衛隊幹部、すなわち諸外国で言う将校を教育する、いわゆる士官学校に相当する。諸外国では陸海空に分かれているが、日本の場合は陸海軍の確執を教訓として、吉田茂の強い意向によって統合された。その吉田茂の考えに基づき、戦前の士官学校とは教育内容が異なっている。...
陸軍士官学校事件、と聞いてピンと来るのは昭和や日本陸軍に関する歴史を掘り下げてみたことのある人だろう。だが、後の二・二六事件にも繋がったと言われる士官学校の学生らによるクーデター未遂事件は、日本陸軍内部の問題を表しているものとも言える。昭和陸軍については川田稔『昭和陸軍の軌跡』と『昭和陸軍全史』『昭和陸軍全史2』『昭和陸軍全史3』の3部作、大江志乃夫『日本の参謀本部』、戸部良一『逆説の軍隊』、岩井秀...
8月に入ると戦争関連の報道が増える。そこで、今回は先の戦争に関する一冊。日本で勝算の無い無茶苦茶な話の代名詞とも言えるのが「インパール作戦」であり、こういった要求をする無能な人物を「牟田口中将」と呼ぶ人はままいるのではないか(自分の周りだけ?)では果たしてインパール作戦は陸軍にとっても突拍子もない作戦であり、これに執着した牟田口は無能であったのか、という点について再考できるのが本書だ。そもそもビル...
椎名誠の作品を何冊かレビューしているが、自伝小説としては木村晋介、沢野ひとしらとの共同生活をしていた青年期の『哀愁の町に霧が降るのだ』、会社勤めを始めた 『新橋烏森口青春篇』『銀座のカラス』あたりから、作家として独立していく『本の雑誌血風録』『新宿熱風どかどか団』 という流れに位置付けられる一冊と言えようか。今回の主人公は太田トクヤではないか。彼が新宿界隈で居酒屋を展開していく様子を時間軸としながら...
またしても順番が前後するのだが、最近読み終わった本から。米海軍特殊部隊SEALsに在籍していたハワード・E・ワーズディンの回想録。タイトルにビンラディンの名前が入っており、冒頭にその「ネプチューン・スピアーズ作戦」の話が出てくるのだが、著者は関与しておらず、こちらは一般的な情報として触れられている。著者はシングルマザーに育てられ、継父から虐待を受けて成長する。この虐待に耐える精神力が、SEALsの訓練(BUD/S...
明石書店のエリアスタディーズシリーズに、NATOが登場。法学や政治学の出版物で知られる出版社であるから、執筆者は信頼のおける研究者たちであるのが大きい。対象地域で何か基礎的な情報を調べる際の辞書代わりとも言える。本書は、ウクライナ侵略とフィンランド・スウェーデンの中立政策の転換と加盟申請が行われたタイミングで書かれているため、激変した欧州の安全保障環境を知るうえで大変有意義な一冊になった。3年前に書か...
国鉄の三大ミステリー事件と言えば、いずれも戦後の混乱期である1949年に発生した「三鷹事件」「松川事件」、そして本書が扱うであり、広く戦後三大事件という括りでも「帝銀事件」「松川事件」と並ぶ大きな謎である。戦後、大量の復員者を受け入れた国鉄はGHQから人員整理を迫られる。当然ながら国鉄と労働組合は激しく対立、期限が迫る中で国鉄トップの下山総裁が、常磐線北千住〜綾瀬の線路上で轢断死体として発見されたという...