遺産を享受すること――小説『エンジェル・ハウリング』

起 十戒ならぬ。 承 『エンジェル・ハウリング』は 2000 年から 2004 年にかけて刊行された小説。全 10 巻。 『エンジェル・ハウリング』の感想としては、「よい」「わるい」や「おもしろい」「つまらない」という評価よりも、「よくわからない」という訴えのほうが圧倒的に多い、独自調査によると。 転 作者は読者にとって意味のわからない作品を書いてもよい。 「言ってみろよ。なんの宣言だ？」 ヘルパートは、にや...

ユング『転移の心理学』

2021-10-8 C ・ G ・ ユング『転移の心理学』（林道義／磯上恵子訳、 1994 年、みすず書房）より。アニマとアニムス (p.76) 。 錬金術師―妹 ｜×｜ アニマ―アニムス 矢印の方向は男性的なものと女性的なものとの関係を、あるいはその逆の流れを示し、またある人物の無意識と他の人物の意識との関係（これは肯定的な転移関係と呼ぶことができる）を示している。したがってこれらの関係は次のように分類することができる...

秋田禎信『機械の仮病』

2021-10-2 秋田禎信『機械の仮病』（ 2010 年、文藝春秋）より。金を使う (pp.218-220) 。 「そのコーヒー、いくらだった」 「百円ですよ」 「ちゃんとしたコーヒーなのか」 「いえ、まあ、普通じゃないですか？」 惚けたことを言うので、俺の語気も荒くなった。 「コーヒーってのは、普通、五百円とか千円だ」 「そういう店もありますね」 「そうじゃない。コーヒーってのはもともと五百円出して飲むものだったんだ。...

秋田禎信『誰しもそうだけど、俺たちは就職しないとならない』

2021-10-1 秋田禎信『誰しもそうだけど、俺たちは就職しないとならない』（ 2008 年、 TO ブックス）より。地球温暖化 (pp.128-129) 。 「そもそも俺は、猫に危害を加える実験などには断固反対だ。許せん」 「確かに、それを看過できる人間などいないだろう」 「科学者は悪魔だ！」 「科学は魔女だ！」 「奴らだけは許せんと昔から思っていたのだ」 「奴らは本当にろくなことをしない」 「まったくだ。これまで奴らがな...