ことばの数だけこころがあり、 ことばの数だけ人生がある。 ここからも、そこからも、ことばの窓から世界が観える。 ― エルの窓から…
2「あなたは悪い妖精かなにか?もう目を閉じるから帰りなさい!」冷静さをよそおいながらも、少し震える声で伽奈子は夢に命じた。しかし巧が消えることはなかった…
1瞳のヘーゼルの太陽を覗いていると、向こうの世界が見えるような気がする。横たわる萌黄色の地面から青緑の空が見える。かさかさと冬枯れから目覚めた新葉が風に…
5伽奈子が左目に名前をつけようと思ったのは夢のせいである。筋書きのない、場所もわからぬところに伽奈子はぽつんと一人でいる。大勢の人間?が辺りにたむろして…
4 ヒルダ夫人こと緒方佐知枝さんは、伽奈子がイメージしている占い師とは似つかわしくない容姿で降りて来た。まず丸い眼鏡をかけている。まあそんな占い師もいる…
3 初夏もいよいよ色を濃くしていったある日。伽奈子が学校帰りの坂の途中で立ち止まり、ふかぶかと深呼吸をはじめかけた時のこと。ほら見える…と左目に語り始め…
2伽奈子が居心地の悪さを感じるようになったのは、左目の疼きを覚えてからのことである。これまでと変わらぬものが見えながら、しかし、フレームが一枚追加された…
1 わたしは自分の左目が好き!伽奈子は鏡を覗くたびにそう言う。しかし…幼い頃だと少し違う。鏡を覗くたびに目をそらした。周りの子供たちからはストレートな…
日をたがえ 寝ても覚めても 夢うつつ はや葉桜に なり果てぬ…羊文学で「くだらない」を
あの頃の私の願いは一つだった。鏡みたいね。そう言われる度に、私は私以上に二人分の嬉しさを覚えた。母がいなくなった悲しさよりも、もっと深く、もっと痛く、もっと…
「きみは、羽衣石樹くん」学校帰り、原陽川に差し掛かったところで羽衣石は声をかけられた。見るとワンピース姿の女性が一人立っている。こちらを見て頭を小さく下げてい…
今日、春の「火」が訪れ屋根の上をすばやく走っていたときに止まり、ときに屋根から転げ落ち地面の上を無数の足跡になって踏みしめるのではなく地に溺れた冬の子等をあた…
「この山には研究施設があったんだ」亮の部屋に入るとさっそく陸真は窓を開けた。「ほら、あの山の麓だ。そんな跡はどこにも見つからない。その施設は忽然と消えた。記…
階層窓辺はいったい地上に属すのか。あるいは空に属すのか。地上からの高さだけでいえば、それはまだ地上なのだけれど、そこに座したときに起きる不思議な感慨は高層ビル…
春の日暮れはおしろいの白きかすみに紅をひく日暮れの青さ 気持ちの赤さわたしの火はまだ燃えているでしょうかあなたは紅をまだひくのでしょうか春だもの夏ではないもの…
春の日暮れはおしろいの白きかすみに紅をひく日暮れの青さ 気持ちの赤さわたしの火はまだ燃えているでしょうかあなたは紅をまだひくのでしょうか春だもの春なのに夏では…
籬(ませ)に咲く花に睦れて飛ぶ蝶のうらやましくもはかなかりけり 西行 栄華のときは短いものである。春風に花が散るように、花は内に散華を…
「カオスの成分は 分類はここに余すところなく試みられている」 ハーマン・メルヴィル グウウウーン…zzz…山から聴こえてくる音は単純に増幅しただけでは…
今は遠いブルゴーニュの空は絵の中に血糊に似た粘液質な雲が動きもせず浮かんでいて、頽廃した一日の無念の死から流れた血であろうかなどと考えていると、いつしか夢歩は…
雪に沈んだ廃墟の宇宙は窒息しています足元の石も、凝固土も、秋の骸骨もとにかく 春の夜空には光がありません私は骸骨を掘り出します石をロゼット状に配置し衝動にまか…
町はカーボン紙で仕切られた二次元重層宇宙グローバリズムは個々人の頭の中にあって広大だった地球もいびつな頭に鎮座しているそれぞれの地球は価値観に分断され人種に、…
北には青みがかった泥流の雲が渡って行く南には湖沼のように青空があったごく近くの枝に雀が降り立った私に気づかなかったのかそこに落ちた陽だまりに春を浴びたかった…
フロントガラスを通して、春のチリに乱反射した陽の光が目を貫く、痛さの中に水色の空が広がり、地はその吐息にゆらめく蜃気楼を醸し出していた。いたる所から地に眠る…
生が離れてあるものなら私たちは骨をおってそれを得るだろうしかし 得ることができるようなものは再び 奪い去られるだろう 平和が達すべきものであれば私たちは大変な…
「浮空という名はじいちゃんのためのもの、その名前でウチだと認めてくれる」顔には切り傷が浮かび、いくつもの青痣のついた腕が痛々しそうだった。浮空はそんな腕をさ…
「何をぐずぐずしとる。逃げるんだ浮空(ふわ)!」「わかってる!ジイちゃんも手をかして!」左腕だけでなく、右腕もがっしりと支えられた。背後に火の粉が見える。火…
『大きな渦は その勢いに力を得て ぐるぐるまわる小さな渦を含み その小さな渦の中には これまた ひとまわり小さい渦がある こうしてこ…
『こんな線の繰り返しは黄金を作り出すだが地上にこの円を形づくればつむじ風が巻きおこり雷や稲妻を巻き起こそうというものだ』 …マーロウ 「ここ…
『だがそれでもなお「関係」というものは現れるのだ。はじめは小さく、しかし砂の上に伸びる雲の影がまた丘の斜面の形のようにみるみる拡がってゆく関係が…』 …ウ…
比古村亮(ひこむらまこと)は夕夏にとって少し煙たい存在だ。どこか物事に覚めていて、見方もひねくれているように感じ時がある。それでもお互いの性格や興味のこと以…
母の実家で海鳴き地蔵の話を聞いたことがある。地蔵が鳴くと海から津波が来る、という言い伝えがあった。地蔵は小さな社に囲われ、小学校の近くに見守り地蔵としてあっ…
泉西高の生徒暮林夏穂はこれといって秀でるところのないごく普通の生徒だった。しかし他の二人の友人と比べクラスの中でも身長だけは高かった。すらっとした長身で17…
この町のお稲荷様は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)を祀ったものなのだろうか?それとも…鬼夜叉のような吒枳尼天(だきにてん)を祀ったものなのだろうか?誰が最…
遠野陸真は気象庁の温暖化対策気候変動解析チームに配属されている。海に囲まれた小さな島国にとっては温暖化、そして気候変動は国家予算にすら暗い影を及ぼしかねない…
「…確かに、今朝会った人…きみにそっくりだった…あれは、きみの姉さん…だとして…いま死んでるって、聞き間違い。そんなことありえない。確かにそこいて、ぼくは…
亮の現実はどこかでバージョンアップされていたに違いない。。何か得体の知れないものがどこかで亮を捉えたのだ。亮の内側でも自分の存在と係るようなミステリアスなス…
少女は生きた人間なのか、それとも人形なのか…白昼夢に襲われた気分になりながら亮は最初に見た時出窓は開いていなかったことに気づいた。とすれば、少女が開けたの…
「あなたたちは何者?こんなところで何を探しているの?」蟻の巣の一画で沙胤と功露武は通路の前後を十数人の人影に囲まれた。闇に薄ぼんやりと浮かぶ白い肌が飛び込ん…
高校二年生の比古村亮(ひこむらまこと)はあの大雨が降った日のことをよく覚えてる。とはいえ正確に覚えているというわけではない。六年ほど昔のことだったし、まだ小…
この年は日本各地に線状降水帯という耳慣れぬ言葉が定着した年で、西日本、東日本に限らずその地域に集中的に大雨を降らせた。梅雨を空の消防車の放水と呼ぶ地方もあるが…
津々海市は太平洋に面した美しい港町である。町のほぼ中央を御名代川が流れ、上流では大きく三つの支流が注ぎ込んでいる。この川を境にして右と左に分かれる。右の北側…
少女の黒い瞳の中でジャカラは全身を針で覆われた竜になっていた。これが私の本当の姿なのか?ジャカラは自分を振り返り、翼と足を、隆々とした胸と長く伸びた尾を見た…
三日月仰いで散歩に出る。風は甘くスィートで、夜にはミントのバブルが浮かんでいる。スーッと一台の車。見るとレトロなアメ車である。中には粋な山高帽の紳士が一人。な…
社会の中では人は生まれながらに商品なのか?と疑問に思う時がある。人は商品として生まれ落ちるのか?商品として育つのか?商品として競争し、闘い、老いによって廃品と…
…凍土に封印されていたそのウイルスは最も弱く、最も変異に富んだレトロウイルスだった。環境の変化と気候変動がパンドラを開き彼らを目覚めさせることになった。ウイ…
タシャカスデイが聖なる香りを追いかけていたとき、ジャカラグラバンディは川を流れる腐乱した死体を見ていた。死体は男女四体あった。哀れな死体は穢れとなって誰から…
夜には過去が詰まっている。焚火の、ランプの、そしてガス燈の、ぼんぼりの、真空管の、裸電球の、儚さと熱と取り囲む闇が一体となった記録。かつて人類が意識を持った日…
しっかりと、しっかりと、足の下に地面を感じること、ひんやりとした目の粘膜に光を感じること、むき出しの腕に風を感じること、歩く足に自分の体重を感じること、湧き起…
新緑のカーテンの向こうの湯の町に、白き蒸気昇りて晴天の抜けた空に吸い込まれる夕の頃桜の影背中に下りる吐息の刻は風立ちて、頭上で騒ぐ電波の震え世界は小さいバーチ…
コークランドが部屋の前まで行くとダルコーネの叱責する声が聞こえてきた。「逃がしただと!三人もいるのにどうした。ヤツを操れなかったのか?」「能力のすべてを解放…
「あの子は今日も眠れない…」「わかっている。ミームの力が働き始めたようだ。あと二・三世代先のことと思っていたんだが…」「この子の中に砂漠が入り込んだのよ。『…
隔壁で厳重に守られたソルフォスの塔は終わりの日を生き延び、恐竜が骨を残すように横たわった都市はレヴァナ島という巨大な残骸を地上に残した。滅んだ都市の名はヴァ…
ぼくの胸には穴がある笑いも、悲しみも、楽しみも、涙も、その穴からこぼれ落ちるいつからかどんどんこぼれ落ちていく何かを達成しても何かに傷ついてもぼくのもとから去…
わたしはもう…そういって消えたきみのことをぼくはずっと考えていたカーテンに届いた光は今日の町を照らしているにちがいない出勤の人たちが一番電車に急ぎ道へと踏み出…
やさしくひかりはふる部屋を満たしてだんらんと記憶を灯してよりそうようにいのちからこぼれ落ちたひかりのシャボンがうかんでる時には宙ではじけとび時には儚い夢をとじ…
レイシー!お前の青い瞳は海のようだね。深くてとてもきれいだよ。いいかい。よくお聞き!お前の中には遺伝子の時計がある。その時計はある日目覚める始めるのよ。あた…
レヴァナ都市歴レムス24期太陽暦112日の朝こと。琉奈主の教主ラヴィウス・ビンデスのもと、先史代の火器、その巨大な鉄の塊が三つの角を掲げ地の底からゆっくりと…
「きみは何を…」そう言いながら副長官が立ち上がったが、騒ぎ始めた者たちで会議は紛糾し始めた。質問が飛び交い、ダルコーネへの非難が相次ぐ。長官が裁判官のように、…
都市の中枢では激しい議論が交わされていた。集まったのは二十四名の節騎員。節騎員とは階層の節目で選任された長である。彼等にシティの未来が託されていた。「いよい…
「あいつら(痲流人)を信じるのか?」李夏流の真意を推し量るかのように琉伎が聞いた。今二人は斥候として都市の近く、ごつごつとした岩場の陰にいる。いよいよ明後日に…
俺が住むここは砂漠に浮かぶ高地。この星に見放された不毛な島だ。都市の奴らは知らんが、ここ馬駆嵐ではそうだ。島の名をレヴァナ島という。この星は生きている。それ…
神は時として砂漠の丘を越えてやってくる。予言は高地レヴァナの南の地に降りた。神の丘が太陽に向かってせりあがり、白い衣の集団が丘を目指した。丘は南に開け放たれ…
「イヴァン!よく寝るな。『声』にやられたんじゃないだろうな?」そう訊いて来たのは中隊長ダルクである。「いやぁ、夢ですよ。」そう答えた。「夢だと。お前夢を見る…
「ジャカラ。お前は血を砂に、砂を花に変えるロザの記憶を宿した者だ。」ロザの記憶を宿した者は、古来から預言者と信じられてきた。薔薇の人として。「私がそうである…
夢には一人の人間も、一匹の動物すら出てきたことはなかった。夢は緑に広がる岩山から始まった。岩山といっても覆っているのは灌木や草なのだろうが、それほどの植物が…
エンデュミオンの夜明け 第一部 レヴァナ島 一、ドリームタイム(夢の時代)
『私はあの闇の世界に何万の何千倍もの年の間住んだ。そして私がそこにいることを誰も知らなかった。来る年も来る年も、来る世代も来る世代も私はそこにいた。そして彼ら…
ピンと張りつめた空気に神主の祝詞が響く。さながら潮騒のごとく、波のごとく、強く弱く、高くもあり低くもある声は波に揺られ岩に砕けて小さく小さく消えていった。す…
ジャカラは母の胎内で蘇生した。黒い悪魔の日のことである。悪魔の使いは砂塵の嵐だけではなかった。無数に飛び交う飛蝗が累々と屍を積み上げていくその下からジャカ…
秋が深まるにつれ、公彦は神楽に没頭していった。なぜこんなにも熱中できるのか。理由は霊にあった。いつまでいるのか。ねにをしたいのか。公彦にもそんなことはわかり…
「それで…」「今じゃもう信じてくれないだろうけど、里々衣が生まれたときほんとうに嬉しかった。隣におまえがいて、いつか彼が帰ってくる。三人で家族になる…そう思…
『 萌え出ずるも枯るるも同じ野辺の草 いずれか秋にあわで果つべき 』百合の母親は白拍子が好きだった……栄華と衰退を辿った平家の物語はいつの世も人のありよ…
少年が目を覚ますまで十日を要した。傷口から菌が入り、不衛生な環境が破傷風を引き起こしたと見られていたが、果たしてそれだけであったろうか。菌は砂であったかもし…
赤裸な太陽は惜しげもなく巡礼者を焼き、数分後にはかげろうの燃えカスを砂漠の肌に印した。炎王が焼いたのは巡礼者だけではない。商人、羊飼い、家畜、奴隷、遊牧民、…
これはターコイズ?里々衣は日名東公園(ひめいのひがしこうえん)のベンチに腰を下ろして、少年の手から落ちた青い石をじっと見つめた。少年の手から落ちた?…物は言…
少女は生まれた時とても愛くるしい娘だった。育つにつれ少女の笑みは母親の悲しみや苦悩を癒すようになっていた。少女はまさに太陽だった。その笑みは母親を癒すばかり…
腹への一発で体中の筋肉が中心に集まり、公彦の体はがっくりと折れた。太腿への一撃が続き、両膝をついた腹部へさらに一発。胃液が逆流する。怪我した右腕を庇いながら…
「ふ~ん。会って話してみないとわからないけど、事故のせいだろうね。たとえば…」友里絵は朝一番に従兄である国見雅人に相談した。「…植物なんかはね、生命の危険を感…
白く美しい子ウサギが野原をかけていました。ぴょんぴょんぴょん。と。母ウサギに追いつこうと懸命にかけていたのです。すると先を行く母ウサギがとつぜん立ち止まりま…
「公彦のやつどうしちまったんだ。今日顔出したかと思うと部活をやめるっていってたぞ」バスケ部の成沢亮太と楠木大志が友里絵の前に来てそう詰め寄った。まさに寝耳に…
『かれが、ぼくたちの所へ来たのは、一八九・年のある日曜日だった。…』一行目を読み始めただけなのに公彦の胸はドキドキと高鳴った。それは心の奥深くから来る音信のよ…
自分の部屋に入った時不思議な感じがあった。記憶の痕跡を追いながら部屋を見回した。机も、机の上の小物も、壁のバスケット選手のポスター、誰だろう?、にも目を止め…
ぼくの中には雲の赤ちゃんがいる。こう書くと不思議といい得ている気持ちになる。雲にこれといった形もないし、その成長と消滅の早さには理由を問う暇すら与えない。だ…
季節の空が変わろうとしていた。青い切れ端を残して雲に覆われる日が多くなる。同時にルシアンは滅入る日々に心を悩ませていた。ビザの期限が切れているのである。一度…
コクリコの咲く道を ぼくは歩いた コクリコの咲く道で きみと出会った ああ、町には腰を下ろす家もなく 渡り鳥のように季節に渡る コクリ…
高校二年の初夏、藤井百合は母を事故で亡くした。かろうじて父は命を取り留めたが、半年もしないその年の十一月に母の後を追うようにして逝った。百合は母方の祖父母の…
鉛色の空と、沈んだコバルト色の海を雪交じりの風が走り、馬蹄状に湾曲した港町は灰色に閉ざされ人の姿はほとんどなかった。ある日のこと。一面の雲の下、時刻を告げる…
新年の眼下に開けた街明かりを決して忘れないだろう。道々に灯る明かりがちょうど舟の輪郭をなぞっていて今にも暗い海へと漕ぎ出すように見える。優しい明かりだ。逃げ…
その日一人の女が運河に浮かんだ。鼻骨を折られ、目を潰されるほど殴られ、身体には多くの痣と内出血、運河の水に洗われた剥き出しの裂傷に指の骨折。最初は名もわから…
町は表の顔と裏の顔を持っている。ここ花の都巴里にも表と裏の顔がある。東から差し込む太陽が照らす表の顔と、夕暮れの伸びた影が夜を招く裏の顔の二つ。夕暮れの影は…
焚火を囲んだ野宿の生活は、そこはかとない悲しみを湛えていたが、それがまた幸せな時間でもあった。この時間を僕は失いたくなかった。母に「今は幸せ」と聞くと「もち…
花の都に通じる道は揺れる小麦の穂の中をモクセイ香る橋のもと口を開けた此岸と彼岸に泥深い道が待っていた さよなら 小さな赤い靴 黒く汚れた赤い靴 …
ご無沙汰しております。わたくしごとですが、ここ数カ月の間に、イロイロなことが自分の身体におきました。副作用も相まって長いこと時間がかかってしまいました。国際的…
そのとき。年配の男性が境内から出ていくのと交互して二人の男女が入って来るのがわかった。その姿を見もした。プネーが取り憑いた男子大学生と女性である。女性の歳の…
ニニギの金色の眼で見つめられると身がすくむ。ましてこれまで体験したことのないことを要求されている。現実を疑うゆとりもない。ニニギが私に要求しているものは、私…
「ヤツを良く見ていろ!」火の男の近くにも常世海月が近づいている。男はぶるっと肩を震わしたように見えた。黒い靄、あれは…何?背中から手が出てきた。手はするすると…
まるで雪…海中のプランクトンのようだわ。眼鏡をかけ直した奈都季が美しい幻想に浸っていると、どこからか声がした。「血を浴びたな」確かにそう聞こえた。奈都季はき…
ああ、本当に、彼のようだわ。久良舞奈都季が空を見上げてため息をついたのは、まだ早春も若い頃で、空が南北に分かれた日のことだった。冬の太陽「論考」もいよいよ遠ざ…
地球を取り巻く重々しいノイズの雲に、放射された太陽光が雲を突き抜けいよいよ地上に降り立ち、その光の数分が地上の私と立っていた。まるで幽鬼のごとく。光の柱のご…
モスクとシナゴーグの境界線に私は立っていた。そこは戦いの始まりといわれた広場で、嘲笑と差別、侮蔑と憎しみ、蔑みと優越の飛礫が飛び交っていた。飛礫の飛来を浴び…
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